全国で時間貸駐車場「タイムズ」を運営するパーク24。1日には駐車管理台数が業界で最多の20万台を突破するなど時間貸駐車場最大手でかつ、駐車場業界のパイオニア的存在だ。同社はETC車載器や電子マネーを利用した決済の導入やカーナビと携帯電話を使った満車・空車情報の配信などに取り組み、"どこで停めても同じ駐車場"から一歩進んだ"利用者に選んでもらえる駐車場"を目指してきた。そこで、同社のパーキング総合研究所、青木新二郎所長に、同社が展開するサービスの概要や将来的な駐車場のあり方などについて話を聞いた。
――パーク24では、2007年6月1日より「タイムズETCサービス」を開始されました。同サービスについて教えてください。
「事前にETCの利用者番号とクレジット番号を専用ウェブサイト等から登録することで、駐車料金をキャッシュレスで精算できるというものです。合わせて、利用時に精算料金などの明細をメールで通知するサービス等を行っています。事前に行った決済実験を踏まえ、より利便性の高いサービス提供を実現しました。現在、大阪市の長堀駐車場にて実施しております」
――2003年に神奈川県の川崎駅前にある『タイムズステーション川崎』で行われたのが、日本で初めてETC車載器を利用した時間貸駐車料金の決済実験だと聞きました。
「その通りです。決済の手順は、まずETCの利用者番号をアンテナで読み取り、管理サーバでID番号の有無を確認します。その後、確認が取れたら駐車場ゲートが開き、入・出庫の管理を行った上で、利用料金が指定のクレジットカードから引き落とされるという仕組みになっています。同サービスを導入することで、料金の支払いが簡便化され、出庫に要する時間が大幅に削減できるほか、精算機への幅寄せや身を乗り出しての精算操作がなくなり、スムーズな入・出庫が可能になります」
――決済実験ではアンケート調査も行ったそうですね。何か課題はありましたか?
「実験を開始した当初は、国の方針によりETCの利用者番号を利用できませんでした。ですからユーザの特定ができず、裾野を広げることが難しかった。しかし、国土交通省がETC車載器の利用者番号を2006年3月から民間に開放し、民間企業が使用者の番号を決済などに利用できるようになったことで、その問題が解消され、1年数カ月の準備期間を経てサービス開始に至りました。また、実験当初はETC車載器を使って入庫すると駐車券が発券されないので、駐車場の提携店による割引サービスを受けることができませんでした。この課題を踏まえ、長堀駐車場では入庫時に駐車券を発券し、割引サービスが受けられるようになっております。また、ETCを高速道路で使うと時間帯や利用金額の合計に応じた割引が受けられるので、たとえば高速道路を利用してから「タイムズ」駐車場を利用すると、駐車料金が割引になるサービスなど積極的に検討していきたいですね」
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――パーク24では、電子マネーとの連携も多いと聞きました。
「現在、タイムズでは電子マネー『Edy(エディ)』『OSAKA PiTaPa(ピタパ)』『Suica(スイカ)』『PASMO(パスモ)』が利用できます。また、6月1日からは『Suica』ポイントサービスのポイントも一部の「タイムズ」駐車場で加算されるようになりました。さらに『OSAKA PiTaPa』に記録された乗車履歴に応じて駐車料金を割り引く実証実験を、大阪市の『タイムズ住之江公園駅前』で実施しております。しかし、このようなプリペイド (前払い)型の電子マネーのほかに『QUICPay(クイックペイ)』や『iD (アイディ)』など、ポストペイ(後払い)型の電子決済サービスもありますし、最近ではセブン&アイ・ホールディングスが発行する『nanaco(ナナコ)』やイオンの『WAON(ワオン)』など流通系の電子マネーの進出も目立ちます。タイムズでは、商業施設の大型駐車場を管理している場合も多いので、商業施設で利用できる電子マネーが駐車場でも使えるように配慮していけるように、整備を進めております。また、複数の電子マネーを決済できる共用端末の導入も考えていきたいです」
――最近、富士通テンと共同で、顧客向けの情報提供サービスも展開していますね。
「はい。富士通テンが販売するカーナビゲーションシステム『AVN』の利用者向け会員専用サイト『モクテキチネット』で顧客向けの情報提供サービスを配信しております。カーナビと携帯電話を連動させることで、ドライブ中はタイムズの位置や空車状況を確認できます。さらに、駐車した後は目的地までの行き先を検索することも可能です」
――同社のポイントカードサービス『タイムズクラブ』を導入されていますね。それによって様々な分析や新サービスの提供が行われていると聞きましたが?
「私が所属するパーキング総合研究所では、『タイムズクラブ』の利用状況から、その駐車場を使う人がどこに住んでいるのか、あるいは何時ごろが利用のピークなのかなどを分析しております。そうすることで商業施設に対して『どの地域に広告ちらしを配布すれば効果的か』『何時ごろにセールを設定すれば売り上げ増につながるか』といった情報を提供することも可能です。また、過去の稼動実績を分析することで、駐車場の空車や満車を予測すること もできます。たとえば、今後は花火大会などのイベント開催時期にあわせ、会場に近い駐車場の空車情報を提供したり、駐車場の予約サービスなどを展開することもできるでしょう」
――将来的なビジョンを教えてください。
「個人的には、環境問題に貢献するようなサービスを導入したいですね。たとえば、駐車場に使われているアスファルトに芝生を使ったり、電気自動車の燃料供給設備を駐車場内に設置したり。あるいは、打ち水のように駐車場にドライミストを散布することで、都心部のヒートアイランド現象防止に駐車場が何かしらの貢献ができればと考えております。最近では道路交通法が改正され、違法駐車の取締りも厳しくなっており、駐車場の持つ重要性も高まっております。ですが、今までの駐車場では『車を一定時間置くところ』でしかありません。我々が目指す駐車場は、単なる車の置き場ではなく、一歩先の"空間"になることです。先ほどお話したようなサービスの導入によって、駐車場へのイメージを一新し、駐車場の果たす可能性を広げていければ、と考えております」