第一生命経済研究所は、電子マネーの普及によって年間約6.4億枚の貨幣が節約されるというレポートをまとめた。同研究所は、今後電子マネー同士のネットワーク間競争が進んでいけば、貨幣節約の傾向はますます強まると予測している。
今年に入って、関東の私鉄・地下鉄・バス共通乗車券「PASMO(パスモ)」と、JR東日本が発行する「Suica」の相互利用が可能になったほか、イオンやセブン&アイ・ホールディングスが独自の電子マネーを発行するなど、電子マネーの需要は一気に高まっている。こういった動向を受け、にわかに「貨幣(コイン・硬貨)がなくなる日が来る」という見方が広まっていることから、同レポートはその信憑性などについて検証したという。
レポートでは、貨幣残高を種類ごとに枚数に換算して合計した貨幣物量に注目。2006年度の月平均の貨幣流通枚数を919億枚(6種)のうちの6.4億枚が電子マネーによって節約されている枚数であると試算した。
貨幣物量の動きを種類別に見ると、1円・5円・10円・50円の4種類の少額貨幣が3月末は軒並みマイナスに転じているという。同研究所は「これはおつり需要が減退していることを暗示している」と指摘する。
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小額貨幣の伸び率。3月末には軒並みマイナスに転じていることが伺える |
また、貨幣物量の85%が1円・5円・10円・50円の小額貨幣によって占められていることから、このまま小口決済手段として電子マネーが普及していけば、物量全体を押し下げる可能性があると示唆。さらに、2004年後半から名目民間最終消費の伸び率に対して貨幣物量の伸び率が持続的に下押しされているが、これは電子マネーの機能が年々向上し、発行枚数が増え始めた時期と重なるという。定期的な貨幣物量の下押し圧力を試算すると、2005年9月から2007年3月までの平均で前年比▲0.7%ポイントの低下となる。このことから「貨幣流通枚数919億枚(6種)×▲0.7%=6.4億枚」、つまり電子マネーにより節約された貨幣枚数が6.4億枚に上るという結果が導き出されたとしている。