お客様第一、儲けは二の次! という電器店を営む父と、そんな生き方を理解できずに反発する娘。ガンコ親父と3人姉妹の家族愛を明るく優しく描いた映画『幸福(しあわせ)のスイッチ』のDVDが4月4日に発売される。和歌山県田辺市を舞台に、沢田研二演じる父と、上野樹里、本上まなみ、中村静香が扮する三姉妹はどんな人間模様を繰り広げるのか――作品の見どころと共に、OL時代から作品を撮り続けたエピソードなどを、安田真奈監督に聞いた。

OLから映画監督への転身

『幸福のスイッチ』の三姉妹。左から本上まなみ、上野樹里、中村静香

――約10年、電機メーカーに勤めながら自主映画を作り、脚本も書かれていたそうですが、OLから映像業界に転進して、目線が変わったことはありますか?
「それまで、仕事と映画、両方を考えなければならなかったのが、映画に集中できるようになり、精神的に楽になりました」

――何故、電機メーカーに就職を?
「映画がとても好きで、学生の時から作ってたんです。でも、8ミリフィルムで遊び感覚でした。芸大じゃなく普通の大学の映画サークルだったから、特に専門の勉強はしてないんです。だから、映像業界にはまず入れないだろうなあと。それに、個人的で身近なドラマを作るのが好きだったから、無理に映像業界に入らなくても、普通の生活を大事にすることが自分の作風には良いだろうと、電機メーカーに就職しました」

――『個人の大事件』を撮る目線は、学生時代から変わらないのですか?
「そうですね。誘拐・殺人のような『社会の大事件』は、ドラマチックな映画になりやすい。だけど、ささやかでも『個人の大事件』を丁寧に描いて、観客に共感してもらいたいという気持ちは、学生時代から変わらないです」

関西弁でシャキシャキ話す安田監督