自社の商品やサービスを「その企業ならでは」と認識してもらう企業ブランディングへの注目が集まっている。国内外の競争激化や消費者の買い控えなどが背景にある。しかし、大企業と違い、中小企業がブランド戦略を打ち出すのは容易ではないとされる。こうした中で、インターネットを活用してコストを抑制しつつ、効果的なブランディングを実施する中小企業やB to B企業も出始めている。この連載では、ITを活用してブランディングを行っている事例を紹介する。

第6回は、カーエアコンのクリーニングやキッチンカーなどの事業を展開するクリーンデバイス・テクノロジー(東京・港区)を取り上げる。同社は著名タレントを起用したPR政策を推進するほか、キーワードを強調したブランディングで成功している。同社の大野里枝社長は「ブランディングを通じて自社の価値を認識してもらい、消費者の選択肢の1つに入ることが大事だ」と話す。聞き手は全研本社 本村丹努琉(もとむら・たつる)氏。

クリーンデバイス・テクノロジー 代表取締役 大野里枝(オオノ リエ)
1977年生まれ。昭和女子大学大学院 文学研究科 英米文学専攻 博士後期課程単位取得満期退学。

大学講師を務める傍ら国内外で様々な業種の経営を経て、2018年クリーンデバイス・テクノロジー株式会社を設立。カーエアコンクリーニング事業を全国展開する。特許取得の唯一無二の工法で車業界に新常識を打ち立てた。「津本式究極の血抜き」で処理した生臭さのない魚のフライを用いたフィッシュライスバーガーを扱うキッチンカーも全国展開中。

ポイント

①「究極の血抜き」などキーワードを活用したブランディングで効果
②お笑い芸人の小島よしおさんをイメージキャラクターに起用、信用力向上と顧客拡大を実現
③インターネットの普及で商品、サービスの派生情報を取得しやすくなり、目的意識のある顧客が増加
④ウェブマーケティングは、「規模のメリット」のない中小企業にとって重要な手法

本村:御社は主に2つの事業を展開されています。どちらの事業もコアコンピタンス(中心的な競争力の源泉)を意識して経営されているように思います。大野社長から見て、御社の事業の強みを何だと考えていますか。

大野:当社は2018年に設立し、カーエアコンのクリーニングやキッチンカーのフランチャイズ(FC)事業を展開しています。カーエアコンの臭いは従来、簡単に除去する技術がなく、芳香剤などを使って臭いをごまかすのが一般的でした。当社では、独自の工具を使って自動車の熱交換器を洗浄することで臭いの原因を取り除く技術を開発し、クリーニングしています。臭いを根本的に取り除ける上、作業時間も1時間半程度で済みます。2019年には特許を取得しました。大手の中古車販売会社と提携してサービスを提供しています。

  • カーエアコンをクリーニングしている様子

キッチンカー事業では、フィッシュライスバーガーを取り扱っています。宮崎県の仲卸「長谷川水産」の津本光弘さんが考案、実用化した「津本式 究極の血抜き」という魚の処理法を用いて、生臭さのない魚のフライを使っているのが特徴です。年内に50店の展開を目指しています。

本村: 御社は「空気の洗車屋さん」「銀座六丁目、フライの家」「究極の血抜き」などキーワードを有効活用し、ブランディングを実施しているように見えます。ブランディングが事業にどんな意味を持つと考えていますか。

大野:当社と他社との違いを際立たせ、認知してもらうものだと考えています。無名の新興企業がどんなに良いサービスや商品を出しても、潜在需要をゼロから掘り起こしていくことは難しい面があります。ブランディングを通じて自社の価値を認識してもらい、消費者の選択肢の1つに入ることが大事です。特に当社の場合は、既存マーケットに参入するのではなく、新しいマーケットを作っていくという事業ですので、ブランディングや認知度の向上は重要な意味を持っています。こうした中で、「究極の血抜き」などのキーワードを活用し、より効果的なブランディングを実施するよう努めています。

本村:世界中でインターネットが普及し、ウェブマーケティングやブランディングが不可欠になりつつあります。インターネットが企業のブランディングに果たす役割についてどう考えていますか。

大野:消費者が商品やサービスの派生情報を簡単に取得できることが、インターネットの利点の1つです。例えば、当社の潜在顧客が「フィッシュライスバーガー」「キッチンカー」というキーワードを検索してくれれば、言葉の意味を理解してもらえるほか、商品の口コミも読んでもらえます。

「究極の血抜き」という言葉を検索すれば、どのように血を抜いて臭みを取るのかを調べることもできます。消費者の方々が「なぜ臭みがない美味しいフィッシュライスバーガーを食べることができるようになったのか」を理解してくれれば、目的意識を持って当社の商品を購入してくれます。目的意識を持ったお客様は、リピーターにもなりやすいという特徴があります。

  • クリーンデバイステクノロジーが展開するキッチンカー

本村:御社が実施したブランディングの中で、具体的な成功例を教えてください。

大野:2021年からお笑い芸人の小島よしおさんを自社のイメージキャラクターに起用し、PR活動を実施したことです。企業として小島さんのような知名度があるタレントさんを起用できていることが、消費者やフランチャイズの方々に安心感や信頼感を与えていると考えています。

具体的には、小島さんにホームページやPR動画、PRイベントなどに出ていただいています。小島さんは子供向けのYouTubeなども配信しており、子供や親御さんに知名度が高いのが特徴です。「小島さんのことをネットで検索していたら、カーエアコンのクリーニングサービスが出てきて当社を知った」といった方もいらっしゃいます。

本村:小島さんを起用したことで、ファミリー層へのターゲティングもできるようになったということですね。一方、企業ブランディングで思うような結果を得られなかったこともあるかと思います。こうした失敗例も教えてください。

大野:ラジオ番組のスポンサーになって冠番組を持った時期がありましたが、これは失敗でした。自動車に乗る際にはラジオを聞いている人が多く、当社が提供している自動車関連サービスと親和性があるというイメージでしたが、残念ながら費用対効果が良くありませんでした。

ラジオ広告にしては中途半端な広告費用(1000万円程度)しか使えなかったのが原因の1つだと考えています。大企業であれば大きな金額を投資して多くのラジオ番組に広告を出すことが可能ですが、当社の規模では難しい。1000万円の広告費用であれば、むしろSNS関連の広告などに投入した方が効果は大きかったと反省しました。

本村:投入する費用の規模に応じた効果的な企業ブランディングのやり方があるということかもしれませんね。ウェブマーケティングの役割についてはいかがでしょうか。

大野:ウェブマーケティングは、「規模のメリット」のない中小企業にとっては、特に重要な手法だと考えています。テレビやラジオ、新聞に大規模な広告を出稿するのは多額の費用がかかります。中小企業は、既存メディアへの広告という分野では、資金力のある大企業には勝てません。

しかしウェブマーケティングは費用対効果が良い上、アイデアややり方によって、中小企業が大企業を上回るような効果を上げられます。適正にターゲットを絞り、顧客の購買意欲を直接かきたてることができるからです。

こうした意味では、全研本社と一緒に運営している専門サイト「無店舗FCセレクション」「キッチンカーフランチャイズの入門書-かめいろは-」は、他社と比較しながら当社の強みを打ち出せます。全研本社とのマーケティングを実施してから、明らかに潜在的なフランチャイジー(加盟店)候補からの問い合わせが増えました。当社のことを詳しく調べた上で問い合わせをしてくれるので、「一緒に価値を作り、広めていく」という理念を共有できる方々からのコンタクトが増えているように思います。


(編集協力 P&Rコンサルティング)

本村 丹努琉(もとむら・たつる)

全研本社株式会社 eマーケティング事業本部 バリューイノベーション事業部長 バリューイノベーション事業部

通信機器販売やエネルギーコンサルティングなどのベンチャー企業3社で営業責任者として組織構築に従事。1人のカリスマだけに頼らない組織営業スタイルを確立し、収益増に貢献した。2009年に全研本社株式会社に入社し、ウェブマーケティングを担当する「バリューイノベーション事業部」の立ち上げに参画。コンテンツマーケティング黎明期から、オウンドメディアを基軸としたWEBブランディングを提唱し、13年間で約7000社のインサイドセールスを構築した。