セブン‐イレブン・ジャパン、電通、サイバーエージェントの3社は6月11日、リテールメディア事業の成長と発展に向け、共同出資による合弁会社「株式会社セブン‐イレブン・アドコネクト」を設立することで合意したことを発表した。事業開始は2026年9月1日を予定している。
記者発表会には、セブン‐イレブン・ジャパン 代表取締役社長の阿久津知洋氏、電通 代表取締役 社長執行役員の松本千里氏、サイバーエージェント 代表取締役社長の山内隆裕氏が登壇。その後、セブン‐イレブン・ジャパン 新規事業推進室 総括マネージャーの杉浦克樹氏が、新会社設立の背景や事業内容を説明した。
新会社のミッションは「広告をワクワクする情報へ」
新会社の主軸となる「リテールメディア」とは、小売企業が持つ店舗、アプリ、購買データなどを活用し、広告配信や販売促進につなげる仕組みを指す。
セブン‐イレブン・アドコネクトは、店舗に設置するデジタルサイネージやセブン‐イレブンアプリを中心に、広告配信から購買、効果検証までを一体で設計する。
同社が掲げるミッションは、「広告をワクワクする情報へ進化させ、買い物体験を豊かにし、商品との出会いをつくる」ことだ。
阿久津氏は、リテールメディアが目指す姿について、広告主、顧客、加盟店、出資会社のすべてに価値をもたらす「四方よし」のメディアだと説明した。
「お客さまに役立つ情報を、店舗のデジタルサイネージを中心に提供する。そして、そこで得た情報の商品が、すぐに店頭に並んでいる。得た情報がそのままリアルな購入体験につながることが、リテールメディアの利点です」(阿久津氏)
こうした構想の背景には、セブン‐イレブンが持つ店舗網や顧客接点を、これまで以上に活用したいという狙いがある。
セブン‐イレブンは「視聴率15%の大きなメディア」? リテールメディア参入の理由
セブン‐イレブンがリテールメディア事業に本格的に取り組む背景には、広告市場の変化がある。
テレビ視聴離れが進む一方、インターネット広告はスマートフォンの普及とともに拡大してきた。しかし近年は、サードパーティCookie規制などによって従来型の広告手法にも変化が求められている。
そうした中で、購買の場に近い情報提供ができるリテールメディアの重要性が高まっているという。
もう1つの理由が、セブン‐イレブンが持つ店舗網と顧客接点の大きさだ。
国内に約2万2000店舗を展開する同社には、1日あたり約2000万人が来店し、約6000万個の商品が販売されている。
発表会に登壇したセブン‐イレブン・ジャパン 新規事業推進室 総括マネージャーの杉浦克樹氏は、こうした規模をメディアとして活用できる可能性に着目したという。
「1日約2000万人のお客さまに来店いただいている店舗をメディアとして捉えれば、視聴率15%ほどの大きなメディアになるのではないかと考えました」(杉浦氏)
また阿久津氏は、こうした店舗網や顧客接点について「まだ半分しか使えていない」と語り、リテールメディアを新たな成長ドライバーに位置付けた。
セブン‐イレブンは2022年からリテールメディア事業を開始。当初はアプリ内のバナー広告からスタートし、その後、レジ画面や店舗内デジタルサイネージへと展開を広げてきた。
現在は首都圏と四国エリアを中心にサイネージを設置しているが、2026年9月からは関西、東海エリアにも拡大し、約8500店舗への設置を予定している。
「認知」から「購買」「リピート」まで一気通貫で支援
セブン‐イレブン・アドコネクトが提供するサービスは、大きく「統合プランニング」と「配信・運用プラットフォーム」の2つに分かれる。
統合プランニングでは、テレビやデジタル広告、店頭サイネージなどを連動させ、認知から興味関心、購買、リピートまでを一気通貫で支援する。
杉浦氏は「広告主にとっては断絶された出稿ではなく、効果測定まで含めた運用が可能になる。生活者にとっては売り場で最後の一押しとなる情報が届く」と説明した。
また、配信・運用プラットフォームでは、時間帯や天候、在庫状況など店舗ごとのリアルタイム情報を活用した広告配信を目指す。
例えば、雨の日や暑い日、朝昼夜の時間帯、店舗立地や客層などに応じて、配信する広告やクリエイティブを変えることを想定しているという。
セブン‐イレブンは、こうした取り組みを通じて、2030年までにリテールメディア事業で広告売上200億円を目指している。
こうした構想を実現するため、同社は広告とテクノロジーのパートナーとして電通とサイバーエージェントを迎えた。
電通は統合プランニング、サイバーエージェントはAI広告技術を担う
電通は、統合プランニングや購買データ分析、PDCA設計などの面から新会社を支援する。
電通 代表取締役 社長執行役員の松本千里氏は、「今回の取り組みでは、リテールメディアを単なる広告枠として捉えないことを重視する」と語る。
「本質は生活者にとっての買い物体験にあります。より良い買い物体験を提供することで、広告主の商品が売れる。そのためには、セブン‐イレブンが持つアプリ、サイネージ、店頭などの顧客接点を、既存メディアと効果的に組み合わせる統合プランニングが重要になります」(松本氏)
一方、サイバーエージェントはAIを活用した広告配信技術や広告クリエイティブ制作技術、広告販売力を提供する。
サイバーエージェント 代表取締役社長の山内隆裕氏は、同社が2017年からリテールメディア領域に注力してきたことに触れたうえで、「セブン‐イレブン・ジャパンが保有するデータと全国2万店舗を超える店舗網を活用した国内最大級のリテールメディア事業を推進する体制ができた」と期待を示した。
広告を“ワクワクする情報"に変えられるか
リテールメディア市場は、小売業が持つ購買接点やデータを活用できることから、今後の成長が期待される領域である。一方で、単なる広告枠として運用すれば、生活者にとっては店頭で広告が増えるだけにもなりかねない。
セブン‐イレブン・アドコネクトが目指すのは、広告を広告のまま終わらせず、生活者にとって役立つ商品情報へと変えることだ。
そのためには、店舗網、アプリ、購買データを持つセブン‐イレブン、統合プランニングと市場創造の知見を持つ電通、AIと広告運用技術を持つサイバーエージェントの連携が欠かせない。
杉浦氏は、新会社名に込めた思いについて、広告を意味する「アド」と、つなげるという意味の「コネクト」を組み合わせたものだと説明。広告主、顧客、加盟店、出資会社をつなぐことに加え、マスメディア、インターネットメディア、リテールメディアをつなげる意味も込めているという。
「会社を作ることが目的ではなく、これがスタートです。広告がワクワクする情報に進化し、商品を買うための大きなバックアップにつながる事業を展開していきたいと考えています」(杉浦氏)
日々の買い物の中で、必要なタイミングに必要な情報が届き、そのまま商品との出会いや購買につながる。セブン‐イレブン・アドコネクトの挑戦は、広告と小売の関係を変える新たな一歩となりそうだ。






