この半導体ニュースのまとめ
・CEA-LetiとGFが欧州Chips JU出資のFAMESパイロットラインでFD-SOI次世代技術開発を推進
・GFの22FDXは14/16nm FinFET相当の性能を低消費電力で実現し、車載・宇宙・エッジAIなどに展開
・Soitecとの歪みシリコン基板開発も進め、FD-SOIの性能・効率をさらに拡張する計画
仏CEA-Letiは6月11日(欧州時間)、GlobalFoundries(GF)との長年にわたるFD-SOI(完全空乏型シリコン・オン・インシュレータ)技術に関する協業を改めて確認し、欧州の次世代FD-SOIパイロットラインプロジェクト「FAMES」にGFがエンドユーザーとして参画し、次世代FD-SOI技術の研究開発を推進していることを発表した。FAMESは欧州委員会および参加加盟国がChips Joint Undertaking(Chips JU:半導体共同事業)の枠組みで出資するパイロットラインで、エネルギー効率、持続可能性、欧州の技術的レジリエンスに重点を置いた先端半導体技術の早期研究を加速する目的で設けられている。
20年超の協業がGFのFDXプラットフォームに結実
CEA-LetiとGFは、PD-SOIおよびFD-SOI技術について複数の技術世代にわたり20年以上にわたって協力関係を築いてきた。この長期的な協業は、性能、電力効率、コストのバランスが求められる用途に向けた差別化技術として、FD-SOIの成熟に貢献してきたとしている。
その成果の1つが、GFが2018年に導入し、独ドレスデン工場で展開しているFDXプラットフォームである。FD-SOI技術をベースとするGFの22FDX(22nm FD-SOIプロセス)は、多くのワークロードにおいて14/16nm FinFETに匹敵する性能を実現しつつ、低消費電力と固有の耐放射線性を備える。モバイル・民生機器、車載マイコン、衛星通信、エッジAI、新興コンピューティングアーキテクチャなど幅広い用途に適するほか、宇宙をはじめとする高信頼性が求められる環境でも採用が進んでいる。
FAMESでデバイス改良と次世代基板技術を探索
GFのFAMESパイロットラインへの参画は、エンドユーザーの立場から早期研究の成果をFD-SOI技術の高度化につなげることに主眼を置いている。具体的には、デバイス特性の改良に向けた探索的な取り組みに加え、FAMESおよびSoitecとの関連プログラムで開発が進む歪みシリコン基板などの次世代基板技術に関する協業も含まれる。
これらの取り組みは、将来のアプリケーション要件に対応するためにFD-SOIの性能とエネルギー効率をさらに拡張することを目的としている。FAMESが対象とする技術領域には、マイクロコントローラ、5G/6Gチップ、スマートセンサ、エッジAIチップ、量子・極低温CMOS、チップレットを用いた先端パッケージなどが含まれており、FD-SOIの適用範囲は今後さらに広がる見通しだ。
欧州の半導体研究・イノベーション強化の基盤に
CEA-LetiのSebastien Dauve CEOは、FAMESパイロットラインを「欧州が半導体の研究とイノベーションを強化するための戦略の要」と位置付けている。産業界の参画が実際のアプリケーションニーズを研究活動に反映させるうえで重要な役割を果たしており、GFのような量産ファウンドリがエンドユーザーとして加わることで、研究成果の実用化までの距離を縮める効果が期待される。
欧州では、経済安全保障と技術主権の確保を背景に、域内での半導体研究・製造基盤の強化が進んでいる。FD-SOIは、先端FinFETやGAA構造とは異なるアプローチで低消費電力と高信頼性を実現する技術として位置付けられており、FAMESを通じた次世代FD-SOI開発は、欧州独自の半導体技術ポートフォリオを強化する取り組みの一翼を担うものと言えそうだ。
なお、欧州では現在、Chips JUが推進する形で、FAMESのほか、先端ロジック向けパイロットラインプロジェクト「NanoIC」、先端パッケージングパイロットライン「APECS」、ワイドバンドギャップ半導体材料の研究開発を推進する「WBG」、光信号を用いてデータ通信を行う光ICのパイロットライン「PIXEurope」の合計5つのパイロットラインを総額37億ユーロの投資で推進しようとしている。