この半導体ニュースのまとめ

・GFとQualinxがドレスデン工場でEU域内完結型の半導体製造フローを初めて実証
・Qualinxの航空宇宙・防衛向けGNSS SoCが最初の製品として製造され、設計データや材料が域外に出ない体制を確認
・GFは2026年末までに完全自動化を目指し、2027年から航空宇宙・防衛顧客向けに通常のファウンドリサービスとして提供する計画

GlobalFoundries(GF)とオランダのQualinxは6月10日(欧州時間)、GFの独ドレスデン工場においてFDX(FD-SOI)技術を用いた欧州(EU)域内完結型のエンドツーエンド半導体製造フローを初めて実証したと発表した。設計データの受け入れからマスクサービス、ウェハ製造に至るまで、全工程をEU域内で完結させることで、航空宇宙、防衛、重要インフラ向けに求められる厳格なセキュリティ要件に対応する。欧州CHIPS法の共同出資を受けて整備が進められているもので、設計データや物理的な材料がいずれも欧州域外に出ない体制を実現した。

  • GFの独ドレスデン工場外観

    GFの独ドレスデン工場外観 (出所:GlobalFoundries)

Qualinxの航空宇宙・防衛向けGNSS SoCが最初の製品に

今回の実証では、Qualinxがローンチカスタマーとして参画し、安全な測位・航法・計時(PNT)アプリケーション向けのGNSS SoC「QLX3xx」を設計・製造した。同製品は、航空宇宙・防衛・重要インフラ向けの主権的なGNSSベースの測位・航法・時刻同期(PNT)ソリューションをターゲットとしており、レジリエントなタイミング・同期ネットワークや、コネクテッドエッジ向けの超低消費電力GNSSレシーバなどへの適用を見据えている。

Qualinxは独自のDigital RF技術をGFのFDXプロセス上で最適化し、セキュアなエンドツーエンドフローで超低消費電力のリコンフィギュラブルGNSS SoCおよびアナログフロントエンドの製品化にこぎつけた。同社のTom Trill CEOは、マスクサービスからウェハ製造までを欧州域内で完結する製造パスが現実のものとなったことを強調し、IP、データ、サプライチェーンの完全な域内管理を実現したとしている。

欧州CHIPS法の共同出資でドレスデン工場に主権的製造フローを整備

GFのドレスデン工場における欧州主権的製造フローは、欧州CHIPS法の共同出資を受けて整備が進められている。設計データの受け入れ、マスクサービス、ウェハ製造といった製造プロセスの全ステップをEU域内に集約し、機密性の高い設計データや物理的な材料が欧州域外に出ないことを担保する仕組みとなっている。

GFのManfred Horstmann SVP兼ゼネラルマネージャーは、今回のQualinxとの協業が最初の運用上のマイルストーンであり、航空宇宙・防衛・重要インフラ向けの複雑なセキュリティ関連ASIC設計を、完全に欧州域内の信頼された製造パスで工業化できることを示したと説明している。

Deutsche Telekomとの連携でデータ管理の欧州完結も推進

GFは製造フローのセキュリティ強化に向けて、ドイツテレコムとも並行して取り組みを進めている。設計、テープアウト、製造、品質管理に至るまでの製造関連データを、欧州のネットワーク、クラウドインフラ、データセンター上で処理・転送・保存できる体制の構築を目指すもので、ここで得られた知見は主権的製造モデルの拡大に直接反映させる計画だという。

半導体の安全保障をめぐっては、設計データや製造工程の地理的管理が重要な要件となりつつあり、特に航空宇宙・防衛分野では調達先の地理的要件が事実上の参入条件となるケースが増えている。GFのドレスデン拠点を軸とした今回の取り組みは、こうした要件に対し、欧州域内で完結するファウンドリサービスという形で応えるものとなる。

2027年から通常のファウンドリサービスとして提供へ

GFは今回のQualinxとの実証を最初のマイルストーンと位置付けており、2026年末までにドレスデン工場での完全自動化された信頼性の高い欧州フローの確立を目指す。2027年からは航空宇宙・防衛・重要インフラの顧客向けに、通常のファウンドリサービスとして提供を開始する予定としている。

すでに複数の欧州のシステムメーカーやモジュールメーカーが、次世代製品の製造をこの新たなフローに乗せることを検討しているという。欧州域内で半導体の設計から製造までを完結させる取り組みは、経済安全保障の観点からも注目度が高く、GFの主権的製造フローが今後どの程度のスケールで展開されるかが焦点となりそうだ。