セールスフォース・ジャパンは、6月9日と10日の2日間、年次イベント「Agentforce World Tour Tokyo」をザ・プリンスパークタワー東京にて開催した。同イベントでは、人とAIが協働する「Agentic Enterprise(エージェンティック エンタープライズ)」をテーマに、AIエージェントが企業活動や顧客体験、働き方をどのように変革していくのかが紹介された。
本稿では、6月9日に実施された「【事例公開】ホンダが挑む、AIエージェントと描く『新しい顧客体験』」のセッションを紹介する。
セッションには、ホンダセールスオペレーションジャパン テクノロジー&イノベーション カンパニー LCB企画課 課長の武藤潤氏、同カンパニー デジタルマーケティング課 課長の森本圭一氏が登壇した。
ホンダが向き合う顧客体験の変化
ホンダセールスオペレーションジャパンは、ホンダのグループで車両のライフサイクルを通じたビジネスの創造・強化を事業領域としている企業。
事業領域としては、顧客のカーライフをより安心にもっと便利にするサービスを提供することを柱に、「メーカー・販売店の宣伝販促」「中古車領域に関する事業」「アフターサービス事業」「エネルギーマネジメント事業」「先進テクノロジーを駆使した顧客体験革新に関する事業」の5つが展開されている。
今回のセッションのテーマは「先進テクノロジーを駆使した顧客体験革新に関する事業」だ。
「近年、顧客の価値観が変化し、『情報取得行動の変化』『デジタル利用前提の購買行動に変化』『検討プロセスの変化(自分に合うものを効率よく知りたい)』などの新しい需要が生まれました」(武藤氏)
このような外部環境の変化に伴い、販売店では顧客との接点が減少し、来店前から多くの情報を持つ顧客に対して、よりきめ細かな対応が求められるようになったという。
こうした課題に対し同社は、Hondaが蓄積してきた顧客データや車両データとAI技術を組み合わせることで、一人ひとりに寄り添った顧客対応を実現し、より良いカーライフ体験の提供を目指している。
24時間365日利用できるポータルアプリ「My Honda」
そのための施策の一つが、車に乗る人から購入を検討している人まで幅広く利用できるHondaの公式ポータルアプリ「My Honda」だ。同社は同アプリを通じて、Hondaに関する情報やサービスへ簡単にアクセスできる環境の構築を進めてきた。
さらに、「My Honda」にSalesforceのAIエージェントプラットフォーム「Agentforce」を導入することで、顧客一人ひとりに寄り添ったカーライフ支援の実現を目指す。
具体的には、24時間365日の問い合わせ対応に加え、遠隔での故障診断や車両の利用状況に応じた乗り換え提案などを提供する。顧客は販売店の営業時間に左右されることなく必要なサポートを受けられるほか、自身の状況に応じた提案を受けられる環境の実現を目指すという。
また販売店側にとっても、定型的な問い合わせ対応の一部をAIエージェントが担うことで、スタッフは顧客との対話や提案といった付加価値の高い業務により集中できるようになることが期待されている。
同社はAIエージェントを、来店前の情報収集から購入後のカーライフ支援までをつなぐ新たな顧客接点として位置付けており、顧客一人ひとりに最適化した体験の提供を目指している。
「AIエージェントの導入によって、お客さまに対し、顧客情報に基づく最適提案を実現し、販売店スタッフには車両販売に集中できる環境を提供できるようになりました」(森本氏)
AIエージェントを短期間で立ち上げられた理由
武藤氏はAgentforceを選定した理由について、「インフラ設計や構築の手間が不要で、顧客に提供するサービスの価値設計にすぐ集中できる点」評価したと説明。
複雑な技術基盤の整備に工数をかけることなく、顧客価値の設計・提供という本質的な業務にリソースを集中できることが、Agentforce採用の決め手となった。
特に、プロジェクト立ち上げから3カ月足らずという短期間でPoC(概念実証)の開始を実現できた背景には、迅速な立ち上げを可能にする、既存の業務やデータとスムーズに連携できる仕組みを最大限に生かせたことがあるという。
さらに、導入・展開のプロセスにおいてSalesforceによるコンサルティング支援を受けたことで、確実かつスピード感のあるプロジェクト推進が可能になったことも説明した。
導入後も継続的に改善を重ねながら、変化の激しい市場環境にも柔軟に対応できる点も評価しているようだ。
AIエージェントとともに進化するカーライフ
同社は今後、販売店スタッフとAIエージェントの高度な協働により、エンドユーザーにとってより安心で便利なカーライフの実現を目指し、さらなるプロアクティブな提案の実現と顧客体験の高度化を段階的に推進していく方針とのこと。
最後に武藤氏は「先を見据え、課題解決に向けたソリューションとしてAIエージェントの効果を期待しています。また、今回のプロジェクトを通して、その有効性を実感しており、今後も継続して取り組んでいきます」と、今後の展望を述べた。
さらに森本氏も「今後の技術トレンドも踏まえると、AIエージェントは必須になってきます。お客さまへの価値提供をスピーディーに続けていきます」と続け、セッションを締めくくった。




