実験装置というと、どんなものを思い浮かべますか? フラスコにビーカー、部屋いっぱいのコンピュータとナゾの放電装置、人より大きな望遠鏡、そんな感じでしょうか、いやいや、ワタクシも考えてみれば、関係が深い宇宙・天文関係以外の実験装置なんて、あんまり見たことはございません。そう、一般人にとって実験装置ってなかなか見るチャンスがないんですよねー。今回は、そんなものを見ちゃおうというお話でございます。

4月の18日をふくむ期間は、そうした実験装置が見られるチャンスです。この日が発明の日だということで、国が「科学技術週間」を開催。日本全国の研究機関がいっせいに一般公開するんですな。特に茨城県のつくば地区は、先日ご紹介した国土地理院のほか、多数の国の研究機関が集中していますので、科学技術週間の特設ページができています

また、113番元素の「ニホニウム」の発見をした、埼玉県和光市の理化学研究所も科学技術週間中に特別公開をします。この時期は研究者総出で、それぞれの研究施設の案内や見学をさせてもらえる大チャンスです。子供向けのスタンプラリーなどのイベントも行われます。2017年は4月22日に実施されるようですな

このほか、科学技術週間以外でもいろいろ公開があります。大きなものでは毎年7月の夏休みの最初のころにやる、神奈川県相模原市のJAXA宇宙科学研究所の特別公開ですね。話題になった、はやぶさ探査機が開発された場所で、はやぶさを打ち上げたM-Vロケット(打ち上げられなかった本物)が迎えてくれます。また、長野県の南牧村にある国立天文台野辺山宇宙電波観測所では、世界最大クラスの45mの巨大なパラボラアンテナがでーんと迎えてくれますな。こちらは、毎年8月の終わりごろに特別公開があります。こうした公開日は、またこのコーナーの名物!? 「宇宙どうでしょう?」でご紹介いたしますね。いや、結構キワになって、オープンになるんですよ。

あ、なお、JAXA宇宙科学研究所、野辺山宇宙電波観測所とも、わりといつでも自由に見学はできます。奥の方まではいけませんけど、見学コースやエリアがあるんですね。オープンな感じの研究施設いいですね。まあ、海外ではそれが普通で、観光コースになっていたりしますけどね。

さて、いろいろいいましたが、こういう施設「そもそもどこにあるかわからん」ですよねー。つくばだ、相模原だ、和光だといわれても、首都圏に住んでないと「どこそれ?」「はー、遠いわ」という感じになってしまいます。まあ、実際、日本の科学の中枢は東京近辺にあるので、そこから便利なところとなっちゃうのですな。国の研究機関も東京中心ですしねー。まあ、しかし、あちこちにあることはあるのです。一般公開はされないものも多いですが、見学日やイベントがあることもあります。予約すれば見学できるものもあります。とりあえず知っておいて、時々チェックしてみてはいかがでしょう?

  • 北海道 白老町 高速走行軌道実験設備
    室蘭工業大学の実験装置で、物体を超高速で地上を走らせる装置ですな。超高速飛行機などのデータをとるために行う装置なのだそうです。

  • 北海道 赤平町 50m落下実験施設
    北海道大学と植松電機が協力して設置、運営をしている装置です。ものを落とすと無重力になります。わずか3秒間程度ですが、その無重力状態を利用した実験を行うのですな。植松電機は「リアル下町ロケット」などと取りざたされる北海道の宇宙ベンチャーもやっている企業です(本業の建設機械でしっかり稼いでいるらしいです)。

  • 青森県 むつ市 JAMSTECむつセンター
    JAMSTEC(海洋開発研究機構)の支所ですな。海洋観測船みらいの基地なのですが、停泊しているときなど、申し込み制で見学ができますよ。研究所としては小規模ですが、船はいいぞー。

  • 岩手県 奥州市 国立天文台水沢キャンパス
    直径20mの巨大アンテナのほか、いくつかのパラボラがならび、古い資料館もあるという不思議な施設です。国土地理院の紹介でも登場した、VLBI、遠く離れた複数のアンテナで同時に天体を観測することで、非常に精密な位置測定をするための装置です。ほかに、小笠原、石垣島、あと入来(鹿児島県薩摩川内市)にアンテナがあります。全体として口径2300kmのアンテナと同じ性能があるそうです。巨大すぎてぴんときません。

  • 宮城県 角田市 JAXA角田宇宙センター
    ロケットエンジンの開発をするための施設ですな。たまにここで、ロケットをふかして、テストを行っています。スゴイ迫力らしいですよ(伝聞かい!)。見学日も設けられています。

  • 神奈川県 横須賀市 JAMSTEC
    深海潜水艇を運用し、海洋探査を行う組織ですな。横浜にて地球シミュレーターというスーパーコンピュータも運用しています。公開日はかなり楽しいですよー。

  • 長野県 木曽町 東京大学木曽観測所
    東京大学の天文台です。なんと、昼間は見学ができるほか、特別公開もやってますな。これまた、ここ単独ではどうかと思いますが、ドライブの途中にたちよるというのはいいかなと思います。天文台なので眺めはいいですしね。名古屋大学の太陽風観測施設もあります。これもちょっと未来的でイイです。

  • 岐阜県 飛騨市スーパーカミオカンデなどのツアー
    ノーベル賞を受賞した成果をあげた「スーパーカミオカンデ」は、一般公開されていませんけれど、年に1度地元も一緒になったツアーが行われますな。このそばには重力波望遠鏡の「KAGRA」もあり、解説を一部聞けるようでございます。スーパーカミオカンデ関係は道の駅にも展示があると前に書きましたが、最近、東名高速の富士川SAと一般道から入場できる富士川楽座にも展示館ができたようでございます。スーパーカミオカンデを推進した科学者ゆかりとかで。こちらは車ならアクセス抜群ですな。

  • 兵庫県 神戸市 京コンピュータセンター
    はい「2番じゃだめなんですか?」で有名になった、世界一をとったこともあるスーパーコンピュータでございますね。「2番(2位)発言の意味」については別途ググっていただくとして、年に1回の特別公開で、黙々と計算するスーパーコンピュータを拝めます。また、時々イベントが行われていますな。ただ、あまり見学施設って感じじゃないので、となりのどうぶつ王国で「たーのしー」をするついでくらいの位置づけがよろしいかと。

  • 兵庫県 佐用町 兵庫県立西はりま天文台公園
    兵庫県が、なぜか日本一大きな(2017年3月現在)望遠鏡を持っていて、大学の研究施設として使っています。そして、なんとここ、一般が泊まれる宿泊施設があり、しょっちゅうガイドツアーをしている教育施設でもあるんですな。まあ、なかなかない施設です。宇宙人捜しにも関わっていることでも有名です(10年前の紹介記事をごらんくださいませ、細かいところは変わっていますがいまでも続いています)。

  • 兵庫県 佐用町 理化学研究所Spring8
    なんと、こちらも佐用町です。いろいろありすぎだろ。理化学研究所が運営する、強烈な光を作り分析する巨大装置です。見学などかなり便宜をはかってくれますし、近隣の地域向けのセンターもあります。

  • 岡山県 浅口市国立天文台岡山天体物理観測所
    かつて日本一だった大型望遠鏡がある施設です。かんたんな見学コースと、隣接して市立の天文博物館、あと京都大学が作っている日本国内最大の望遠鏡ドームもありますな。近所に温泉があるので、天文台みて温泉つかって降りるでもいいかもしれません。

  • 鹿児島県 薩摩川内市 VERA入来観測局
    鹿児島大学と国立天文台が、鹿児島大学が持つ牧場のなかに設置している20mアンテナです。岩手県で紹介したVLBI用のアンテナの一基でございますな。

はっ、と気がつくと、宇宙・天文系がやたらおおくて、また、あそこないやん的な、バランス的にどうやろとは思いますが、この辺、おいおい他の分野も紹介してまいりますねー。

著者プロフィール

東明六郎(しののめろくろう)
科学系キュレーター。
あっちの話題と、こっちの情報をくっつけて、おもしろくする業界の人。天文、宇宙系を主なフィールドとする。天文ニュースがあると、突然忙しくなり、生き生きする。年齢不詳で、アイドルのコンサートにも行くミーハーだが、まさかのあんな科学者とも知り合い。安く買える新書を愛し、一度本や資料を読むと、どこに何が書いてあったか覚えるのが特技。だが、細かい内容はその場で忘れる。