宇宙航空研究開発機構(JAXA)の筑波宇宙センターにて10月15日、施設の一般公開イベントが開催された。このイベントは毎年、春と秋の2回行われているが、今年の春は東日本大震災のために中止、1年ぶりの開催となっていた。あいにくの天候だったが、午後は多少持ち直し、大勢の家族連れや宇宙ファンで賑わった。
この一般公開(JAXAでは「特別公開」と呼んでいる)では、様々な展示や催し物があるのだが、本レポートでは筆者が面白かったものをいくつかピックアップしてご紹介したい。毎回やっている定番イベントなどはスルーしているので、イベント全体の内容については、Webサイトも参照して欲しい。
「いぶき」による癒しビデオ?
温室効果ガス観測技術衛星「いぶき」(GOSAT)のコーナーでは、"準リアルタイム"という観測映像を紹介していた。ここで流していたのは、「いぶき」の観測センサで数時間前に撮影したばかりという、"撮りたてホヤホヤ"の地球の動画映像。自分が人工衛星になったような気分で、美しい雲や海の様子を見ることができた。
前回までだと、陸域観測技術衛星「だいち」(ALOS)によるリアルタイム映像が人気だったのだが、「だいち」は電源系のトラブルのため、今年5月に運用終了になってしまった。「いぶき」には「だいち」のようなカラー撮影ができる光学センサはないが、雲やエアロソルを観測するためのTANSO-CAIというセンサがあり、今回はこれを利用した。
TANSO-CAIでは紫外~近赤外の4バンドで撮影が可能。このうちの3バンドをそれぞれR/G/Bに割り当て、擬似的なカラー映像としたもので、実際の肉眼での見え方とは多少違うものの、海や雲などは綺麗に再現されていた。
「いぶき」のセンサは"撮りっぱなし"が基本で、このようなデータはすでに膨大な量が蓄積されている。見ているとリラックスできるので、"癒しビデオ"のような用途で商品化してくれないものかと思う。
「だいち」後継機の中身はこうなっている
陸域観測技術衛星「だいち」(ALOS)のコーナーでは、後継機「ALOS-2」のスケルトンモデルが公開されていた。一般には、衛星の"中身"がどうなっているのか、あまり知られていないと思うが、こういうものがあれば非常に分かりやすい。各機器が側面パネルに取り付けられている様子などが伺えるだろう。
これが「ALOS-2」のスケルトンモデル。打ち上げ前の衛星のスケルトンが展示されているのも珍しい気がする |
バス部(下半分の箱の部分)のアップ。三菱電機の衛星には、このように心柱がある「中央シリンダー」構造が多い |
リアクションホイールはバス部の上方に4つ搭載しているのが見える。直交ではなく斜めに配置されており、これは"フォー・スキュー"と呼ばれる |
「ALOS-2」を紹介するCGビデオも公開されていた。これは、これからSARアンテナを展開するところ。ビデオだと分かりやすい |
東日本大震災でも活躍した「だいち」が失われ、後継機を期待する声が高まっているが、もともと「だいち」の設計寿命は3年(目標5年)であり、今年1月ですでに5年が経過していた。本来ならば、この時点までに後継機を打ち上げておくべきであるが、それができないのが宇宙予算が少ない日本の悲しいところ。「ALOS-2」は2013年度の打ち上げ予定だ。
「だいち」は可視光による光学センサと、夜間でも悪天候でも地上が見えるレーダーセンサの両方を搭載した大型衛星であったが、「ALOS-2」はレーダーのみ搭載。光学センサについては「ALOS-3」(打ち上げ時期未定)が後継機となる計画だ。早急な観測態勢の整備を期待したいところだ。