「宇宙望遠鏡」は地球周回軌道の宇宙にある天体望遠鏡のことです。有名なのはハッブル宇宙望遠鏡で、この8月30日にはナンシー・グレース・ローマン宇宙望遠鏡が打ち上げられました。ほかにもジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡などもありますな。ところで、宇宙望遠鏡っていつごろから始まったの? 今回は、その辺を書いてみましたよ。
宇宙望遠鏡は空気がない宇宙空間に置かれた望遠鏡
宇宙望遠鏡は、英語だと「space telescope」となります。宇宙空間(space)に置かれた望遠鏡(telescope)ということでございます。置き場所…軌道を周回しているので置くというのかどうか…が問題なのでございますな。
なんで宇宙空間に置くかというと、望遠鏡にとって「空気がない」というメリットがあるからです。空気は光を吸収し、また曲げる役割を果たします。かすかな天体の光が弱まり、さらにぐにゃぐにゃと光が曲がることで、像が広がってしまい、モヤがかかったようなピンボケになってしまうのでございます。
また、光というか光を含む電波や赤外線、紫外線、電波、X線などの電磁波のほとんどは、空気で完全に吸収されてしまいます。光やわずかな赤外線と紫外線、電波の一部だけが地上でキャッチできます。まあ、ガンマ線などは露骨に放射線ですし、X線も人体に有害なのはご承知の通り、ということで、これらが吸収されてしまう点でも、私たちが暮らしていくにはありがたーい空気なのですが、天体観測には空気がじゃまなんですな。
ということで、「空気がじゃまなら、空気がないところに望遠鏡をおけばいいじゃない」というシンプルな理由が宇宙望遠鏡を打ち上げる理由になっているのでございます。
宇宙空間のデメリットはたくさん
一方で、宇宙に置くデメリットもたくさんあります。
まず、地上におく望遠鏡に比べ費用がかかります。運搬手段がロケットになりますからね。たとえば、ハッブル宇宙望遠鏡は製作から打ち上げまでざっと3000億円がかかっている(1990年打ち上げ当時)といわれました。一方で、ハッブル望遠鏡より10倍も巨大な、日本の超大型望遠鏡、すばる望遠鏡は建設費が400億円です。宇宙望遠鏡は高価なのです。
また高いのはおいておいても、単純に人がのぞくことができません。というか、メンテナンスをどうするのよというお話です。実は、ハッブル宇宙望遠鏡は、打ち上げたらなんとピントが合わない! という致命的な欠陥が見つかりました。地上にあるなら光学系の一部を作り直せばいいのですが、宇宙空間にあるのでそう簡単ではありません。しかし、なんとスペースシャトルで補正用のいうならばコンタクトレンズを運び、宇宙遊泳をしながら宇宙飛行士が修理するということを行ったのです。ついでにカメラのバージョンアップも行っていますが、かかった費用は4~500億円程度だったとのことです。
さらに、こうしたバージョンアップはその後も4回、計16億ドルが使われました。当時や円ドル為替が1ドル=100円くらいですから1600億円ですね。ただ、これを行ったことで、機器が新しくなり35年間以上の現在まで長きに渡って使用できるということにもなりました。例えば、同じスマホやPCを35年つかうなんて考えられないですが、5回打ち上げ直すよりはだいぶリーズナブルだったと言えますな。
宇宙望遠鏡はまず、紫外線や赤外線、X線で天体観測するために
さて、しかしリーズナブルといいながら、やはり高価な宇宙望遠鏡。地上の天文台にお金を回した方がいいんじゃない? 同じことがやれるなら。という話がございます。ただ、空気のせいでどだい無理な分野は早々に宇宙に観測装置を運ぶことになりました。X線や紫外線での観測でございます。
宇宙、天体からX線が来ているというのは1948年にわかります。ドイツのV-2ロケットを接収したアメリカがX線センサー(ガイガーカウンター)を付けて打ち上げ、高度100kmで太陽方向からのX線をキャッチしたんですな。ちなみに太陽からの高エネルギー紫外線もキャッチしています。
その後の1962年にはやはりロケットで、さそり座のX-1というX線を強く出す天体が発見されます。こちらもガイガーカウンターを使っています。箱の中にいれて、窓から入るX線だけを検知することで、どっちかを「おおざっぱに」測定するものでした。
まあ、これはしかし「望遠鏡」とはいえませんね。
スターゲイザー 最初の宇宙望遠鏡
スターゲイザーはNASAが1968年に打ち上げた紫外線宇宙望遠鏡です。4基の望遠鏡が束ねられていてOAO-2という名前でもあり、これは「Orbital Astronomical Observatory」、すなわち軌道天文台という意味です。
事実上最初の宇宙望遠鏡です。高温の星が予想よりも強い紫外線を出していることなど、様々な発見をしています。
コペルニクス
コペルニクスはNASAにより1970年に打ち上げられた紫外線宇宙望遠鏡です。OAO-3です。こちらも多くの成果をあげています。
OAO-1は、ちなみに失敗しています。
大成功した宇宙望遠鏡「IUE(International Ultraviolet Explorer:国際紫外線天文衛星)」
続いて「IUE(国際紫外線天文衛星)」はNASAが1978年1月26日に打ち上げました。アメリカとヨーロッパの共同プロジェクトです。
IUEは姿勢制御にロケットではなくフライホイールを使う(燃料不要で、電気があれば無限に使える)ことで1996年まで20年近くの非常に長く使われました。
IUEは業界では大活躍し、多数の科学的成果をあげました。なにしろ地上では全然歯が立たない紫外線の観測をするのですからね。ただ、スペクトル観測を撮像用の真空管で行うというもので、写真がバンバン出てくるものではなかったので、あまり知られていません。天文ファンでもあまり知っている人はいないんじゃないかなと思います。
彗星発見で有名になった、赤外線宇宙望遠鏡「IRAS」
一方、天文ファンの間で話題になったのは、1983年に打ち上げられた、赤外線宇宙望遠鏡(といってイイと思います)「IRAS(アイラス)」です。こちらもアメリカ、オランダ、イギリスが共同で行ったプロジェクトでした。運用は10カ月でしたが、これは赤外線センサーを冷やすための冷却材の700リットルもの液体ヘリウムが尽きるまででございます。
さて、このIRASですが、地上では観測不能な低温の天体を観測しまくりました。まさにブルーオーシャン、取り放題、発見し放題なのでございました。
IRASは宇宙全体の長波長の赤外線の放射分布をはじめて地図にしました。人類がはじめて見る風景です。もちろん、同じ天体が赤外線と光と電波などを出したりしますが、赤外線は光よりも透過力が強く、いままでの望遠鏡では暗黒星雲の影で見えなかった様子なども明らかになったのでございます。
その結果、全天で約350,000個の赤外線源を検出し、星を激しく生み出すスターバースト銀河を約75,000個発見したほか、天の川銀河の中心部の初めての画像を撮影しました。
また、織姫(ベガ)の周りにチリの円盤が広がっていることを発見し、惑星ができていく過程のヒントとなる発見でした。
また、天文ファンに有名になったのは、彗星の発見です。6つの彗星を発見しましたが、そのうちの1つ「IRAS・荒木・オルコック彗星」は、珍しい肉眼で見える明るい彗星となり、天文ファンにIRASって何? と話題になったのです。
また、ふたご座流星群の母天体とされるファエトンという小惑星を発見しています。
たった10カ月の観測で、まさしく一網打尽の成果。すさまじいとしか言いようがないです。
なお、IRASのセンサーは62個×4つの波長のものですが、これはイメージセンサーではなく、点で赤外線強度を測るものです。これをスキャンしていくのですが、バンバン写真が撮れるというものではなかったので、くだんの彗星が発見されなかったらそれほど話題にはならなかったでしょうね。そう、画像、みんなが知るには重要なのでございます。
1980年代までの宇宙望遠鏡
1983年の「ASTRON」はフランスの紫外線宇宙望遠鏡です。IUEの45cmより大型の口径80cmの望遠鏡を搭載していました。
また、同じ1983年に欧州宇宙機構(ESA)が、「EXOSAT」というX線望遠鏡を打ち上げます。こちらは鏡で反射させるのが困難なX線を、水を切るようなギリギリの浅い角度で曲げることでよりはっきりと見せるというものでした。
また、「SMM」は1980年に打ち上げられたNASAの太陽望遠鏡です。太陽を軌道上から観測することで、成果をあげました。
また、マイクロ波宇宙望遠鏡「COBE」は、宇宙全体の背景放射の分布をしらべ、ビッグバン宇宙論の精密化に寄与しています。1989年打ち上げでした。
そしてハッブル宇宙望遠鏡へ
ハッブル宇宙望遠鏡は、これら紫外線や赤外線、X線宇宙望遠鏡を横目でみながら、計画された、普通の光で宇宙をとらえる望遠鏡です。1990年に打ち上げられ、ピントがぼけてたという課題もありつつ、画期的な成果、なによりCCDイメージセンサーによる鮮明な写真をどんどん見せることで、人々の宇宙観を変えました。
その後、多数の宇宙望遠鏡が続くことになります。それらの活躍は現役のものも多く。今後のどこでもサイエンスで語ってまいりますねー。
ではでは




