先日、鉄道で移動中に車窓から虹を見ました。

雨上がりにレインボウ、雨の弓(ボウ)でレインボウ、フランス語だとラルク・アン・シエル、空(シエル)のアーク(ラ・アルク)で、ラルク・アン・シエル。日本語では虹。なんで虫に工……えー中国では虫は蛇もふくみ、竜も含むのだそうで、工は貫くという意味で、空にあがる竜の姿=虹ということらしいです。初めて知りましたわ。

さて、そんな虹でございますが、科学の目が入っていくのは、アイザック・ニュートン(英国)の取り組みでございます。そう、あのリンゴが木から落ちたら、月が落ちず、万有引力のニュートンさんでございます。彼は1665年ごろのプリズムを使って太陽の光を虹色に分ける実験などから、虹は7色だと言ったんだそうですな

ちなみに、それまでは5色(赤、黄色、緑、青、紫)だとされることが多かったらしいのですが、これにオレンジを加え、紫を藍色とすみれ色にわけて、ニュートンが7色にしたのだそうです。理由は、7が神秘的にいいから。太陽系の太陽+月+惑星は7だし(地球は入れない。天王星の発見は1781年)、それに音階がドレミファソラシの7つだからなんだそうです。日本ではおおむね5色とされていたのが、西洋の教科書にあわせて7で教えるようになり、現在に至ります。よく、世界の虹色が何色とかいう話がありますが、ニュートンが決めたのにかなり引きずられているわけですな。

さて、ニュートンはプリズムで光を虹色にわけたわけですし、自然界でも水滴や天然のプリズムとも言える空中の氷の結晶があるわけですし、レンズでもプリズムと同じ効果がでるわけです。

1645年にはそれで像が色づくのを嫌って、オランダのホイヘンスが屈折角度をすごーく小さくした長―い望遠鏡で土星の環を発見したりしています。まあ、知られていたわけですが、ここでふと疑問&寄り道です。プリズムなんてものがなぜまた作られたのか。軽く調べてもでてこんのですなこれが。で、「A Companion to the History of Science」という本の38章にKlaus Hentschelという人がこう書いてます。「In the early modern period, clearer “crystallo” glass became available in central Europe. Della Porta (1593), Peacham (1612), Descartes (1637) and Marci (1648) were among the first to describe experiments with a “three square cristal prisme.” 」

つまりは、Della Porta(デラ・ポルタ) 、Peacham(ピーチャム)、Decartes (デカルト)、Marci(マルチ) という人たちが三角柱の水晶でプリズムについて言及しているんですな。デラ・ポルタは、カメラ・オブスクラを完成形にした人として知られています。デカルトは、有名な哲学者のデカルトで、座標を考案するなど科学的な業績でも巨人です。1637年といえば「我思う故に我あり」の方法論(方法序説)ですので、それかしら。マルチは知りませんでしたが、チェコの著名な医師で科学者だそうです。でも、言及しているというだけで、発明者はわかりませんねえ。宿題増えちゃったなー。

ま、ともかくニュートンは、虹を作り、実験しながら色々考えたわけです。太陽の光は色のついた光にわけられ、合成すると元の白色になる。ってなわけです。そして、この色を分けて思わぬ発見をする人が現れます。ドイツのフラウンホーファーですな。

彼は、太陽の光をわけた虹色に、黒い筋がまざるというのを1814年に発見しました。発見だけならイギリスのウォラストンの1802年が早かったのですが、フラウンホーファーは570本の黒い筋=暗線をチェックし、主なものの波長を測定して番号をつけました。いまでもD線などはよく使いますな。

  • 太陽光の虹色に入る暗線

    太陽光の虹色に入る暗線 (パブリックドメイン)

また、ナトリウムをふくむ炎をプリズムで分けると、シャープな二重の線がでることに気が付きました。暗線に対して、輝線です。

  • ナトリウム蒸気を熱して出てくる光をプリズムで分けたもの

    ナトリウム蒸気を熱して出てくる光をプリズムで分けたもの (パブリックドメイン)

そして、ドイツのキルヒホッフとブンゼンのチームが気が付くのですね。あれ、これ気体は放出した光と同じ波長の光を吸収するということなんでは? ということで、これにて、太陽の発光面上空にナトリウムがある(それだけでなく、水素とかいろんなものがある)ことがわかるようになったわけです。

ここに1859年、分光学(スペクトロスコピー)という物理学が爆誕しました。ちなみにブンゼンというと化学実験に使う「ブンゼンバーナー」の発明者ですが、このブンゼンバーナーは酸素の量を調整することで煤のないきれいな炎を作れるという特性を持っており、これが分光学の誕生に貢献したのでございます。

さらに1868年には、太陽の日食観測中に、どうしても実験と一致しない光がフランスの天文学者ピエール・ジャンサンによって発見されます。英国のノーマン・ロッキャーによって「太陽(ヘリオス神)の元素」を意味するヘリウムと名付けられましたが、10年ほどのちに地球にも存在することがわかりました。まあ宇宙の2割はヘリウムですが、反応しなくて軽く逃げやすいのでそれまでなかなかとらえられなかったのですな。

さて、分光の進撃はとまりません。数多くの新元素を発見しまくるだけでなく、磁気や濃さ、運動によってこれらの線が微妙に変化することが知られるようになると、遠方の磁場やガスの濃度、天体の運動まで測定できるようになるのです。暗線を細かく見るだけで。

有名な仕事では、アメリカの天文学者エドウィン・ハッブルが、遠方の天体ほど速く遠ざかるハッブル(・ルメートル)の法則を1929年に発見し、宇宙は広がっている。逆にいうと、宇宙はあるところからスタートしたということにつながることにもなります。

また、恒星の回転速度や、どれくらい膨れ上がっているのかというデータもとれるようになり、ベテルギウスがもうすぐ爆発するんじゃね? みたいな話にもつながります。

もちろん身近なところでは、様々な物質に毒がないかとか、どこから来た土なんだとか、そんなことにも使われています。

世界中で、虹色にわけた、様々な物質からの光が見つめられておるのでございます。

虹を見ると、そんなことをつい考える……人はまあちょっとうむ。でございますが。ご参考までに。