数学がニュースになると、何かと話題になる三角関数。えー、今回は、ふだんあまり三角関数を使わない(月に1度くらいは使うけど)ワタクシが、三角関数について、生半可なことを語る回でございます。

サイン・コサイン・タンジェント。いわゆる三角関数。高校一年の数学授業で登場し、なんでこんなのが必要なの? と思う人を大量生産して去っていくニクいやつ。微分積分とちがい、全員が履修するもんだから、多くの人には、数学のラスボスですなー。

そのせいか、学校で勉強することの代名詞として「サインコサインなんて」と言われることが目立つようでございますな。1899年に正岡子規が「ノートを広げてサイン、アルファ、タン、スィータスィータと読んで居るけれど少しも分らぬ。」と書いていたり。なにより1968年にフォークシンガーの高石ともやさんが歌った「受験生ブルース」(90万枚の大ヒット)に登場する「サインコサイン何になる」という一節も有名でございます。

ちなみに、サイン、コサインをあらわす、正弦、余弦という言葉は中国から輸入され江戸時代にはすでに使われています。起源は4000年前のエジプト・メソポタミアにさかのぼり、6世紀のインドで確立したらしいですね。とても古い数学なのでございます。

で、こうしたとても古い数学は、建物つくるとか、土地の測量とかの<人類がずっとやってきている実用>から出てきているので、サインコサインは、いろいろな場面でとても役に立つんですよね。でありますので「何の役に立つの?」とかいう発言には、その使い手(多い)から「あれの役に立つ」「これの役に立つ」という話が、十字砲火されることになっています

ただ、役に立つの? と発言したり、賛同するみなさまは「あー、うるさいうるさい、そういう人だけやってりゃいいの」「あんなの勉強するのは苦痛でしかなかった」「私には必要なかった」「私のあの貴重な時間を返せ―」とかいうことになってオシマイなのでございます。私も、ここでは「役に立つ話」は掘り下げません。どーしても気になる方は、こちらとかコチラをご覧くださいませー。

さて、三角関数ですが、図形を数式でいじくるという強力な魔法の1つです。sin2θ+cos2θ=1とか不思議ですよねー。なんでサインとコサインの2乗を足すと1になるんだー! ってなものです。

あと、サインの微分がコサインで、コサインの微分がマイナスのサインというのも摩訶不思議です。微分は、グラフでいえば傾斜角ですからね。そんなのがいろいろあるのが三角関数です。

ちなみに、最初の2乗の足し算は、直角三角形の三平方の定理というやつで、A2+B2=C2と同じ意味でございます。Cが1のときの、Aがsinθで、Bがcosθということなんですね。斜面Cの高さがAで、奥行きがBなんですなー。

  • 三角関数

さて、こうした三角関数は、かつては、時刻表ならぬ関数表というのとセットで使っていました。つまり、θが1度ならsinθはいくら、2度ならいくら……というのを表にしておいて、いちいち見て使うのですねー。めんどくさー。

いまは、関数電卓で一発で出せます。Windows PCなら、アクセサリーの電卓で「表示」メニューで関数電卓にすればよいし、スマホならアプリをインストールですね。

あとお手軽なのは、エクセルでございますねー。=sin(A1)とかすれば、たちどころにサインの計算ができてしまいます。ただ、エクセルは角度をあらわすのに、直角が90度の「度」ではなく、直角をπ/2で表す「ラジアン(弧度)」を使うので注意が必要です。A1セルが90度なら「=sin(A1/180*pi())」とかして角度を度→ラジアンに変換しないといけません。ま、それだけ気を付ければいろいろ遊べます。

たとえば、エクセルで15度ごとのサインとコサインを調べると図のようになり、それを「散布図」グラフでプロットすると。あーら、不思議。○が出現します。これは、サインとコサインが、半径Cの高さと奥行き、つまり(Y、X)の座標になるとわかると「そりゃそだよねー」となります。

  • 三角関数

三角形の性質…と思いきや、半径が1の円を数式で表せるのが、三角関数のおもしろいところなんですねー。

さらに、cosθを、ちょっとずつずらす。つまり、○を転がすように移動させたときの軌跡が計算できて、そのままグラフになってしまいます。これは、タイヤを転がした時の、タイヤの上の点の軌跡ですけれど、どうみても波ですよね。つまりは、波の運動をあらわすのにも、三角関数は使えてしまうのですな。

  • 三角関数

波は、世の中のいろいろなところに登場します。身近なところでは音波ですが、光も波ですし、光の仲間の電波も波。こうした波を扱うのに、三角関数は使えるのでございます。実際、ミュージックシンセサイザーは三角関数を演算することで、さまざまな音色を作れます。そのすごい応用が初音ミクさんなどのボーカロイドでございますな。

ちなみに、初音ミクのデザインモチーフは、1983年に発売されたヤマハのシンセサイザーDX7によっていますが、このDX7はサインコサインを音楽にたくみに応用したデジタルシンセサイザーの元祖というべきものでございます。

ということで、三角関数は何かと楽しいものなんですが、なんで、サインとかいうのかを最後のちっとだけご紹介しておきます。日本では中国の表記にならい弓の弦と表しましたが、これを欧米人は入り江・湾(ラテン語のsinus)と考え、それを英国人がsineとし、eが抜けてsinになったのでございます。ちなみにコサインはco-sineで、サインの相手、共(coをつける)からきております。この辺、ウィキベディアにあるんですが、なぜか日本語訳がないですねー。みんなの楽しみのため、だれか翻訳してくだされー!(他力本願かい)

著者プロフィール

東明六郎(しののめろくろう)
科学系キュレーター。
あっちの話題と、こっちの情報をくっつけて、おもしろくする業界の人。天文、宇宙系を主なフィールドとする。天文ニュースがあると、突然忙しくなり、生き生きする。年齢不詳で、アイドルのコンサートにも行くミーハーだが、まさかのあんな科学者とも知り合い。安く買える新書を愛し、一度本や資料を読むと、どこに何が書いてあったか覚えるのが特技。だが、細かい内容はその場で忘れる。