前回の連載では、Excelで「ヒートマップ」を作成する方法を紹介した。これを応用して、数値データを「色」で示した図面を作成することも可能だ。Excelは製図ツールではないため正式な図面は作成できないが、簡易的なものであれば十分に対応できる。その作成方法を紹介していこう。

ヒートマップ図面の例

見取り図などの図面を使って数値データを示したい場合にも「ヒートマップ」は効果的な手法となる。

最初に紹介する図は、ある倉庫において各地点の温度を測定し、それをもとにヒートマップ図面を作成したものだ。色が赤い部分ほど温度が高い地点になると考えればよい。

  • 「倉庫内の温度」を示すヒートマップ図面

このように簡易的な図面に数値データを記載して、それを「ヒートマップによりビジュアル化する」という手法もある。

もうひとつ例を紹介しておこう。以下の図は、あるオフィスにおける無線LAN(Wi-Fi)の電波状況を調べたものだ。

  • 「無線LANの強度」を示すヒートマップ図面

緑色の部分は電波が良好で問題なく通信できる場所。一方、オレンジ色になっている部分は電波が弱く、通信が途切れてしまう可能性がある場所となる。このように、一般的なグラフでは表現しにくいデータであっても、状況を一目で伝えられるのがヒートマップ図面の利点といえる。

方眼紙のようにセルを配置するには?

それでは、Excelでヒートマップ図面を作成する方法を紹介していこう。

Excelで図面を作成するときは、通常の「横長のセル」ではなく、方眼紙のように配置した「正方形のセル」にしておくと効率よく作業を進められる。「列の幅」や「行の高さ」はマウスのドラッグにより自由に変更できるが、この方法で方眼紙のようなセル配置を実現しようとすると、途方もない手間がかかってしまう。

  • 「列の幅」の変更

よって、「列の幅」や「行の高さ」は数値で指定するのが基本だ。このとき、「列の幅」と「行の高さ」で数値の単位が異なることに注意しなければならない。それぞれを数値で指定するときの単位は、以下のようになっている。

 列の幅 ・・・・・ 文字数(標準サイズの文字を基準に)
 行の高さ ・・・・ ポイント(pt)

このため、「列の幅」と「行の高さ」に同じ数値を指定しても「正方形のセル」にはならない。すべてのセルを正方形にするには、以下のように操作する必要がある。

まずは、ウィンドウ右下にあるアイコンをクリックして「ページ レイアウト」の画面表示に切り替える。

  • 「ページ レイアウト」の画面に切り替え

続いて、ワークシートの左上をクリックし、「すべてのセル」を選択する。

  • すべてのセルを選択

この状態で、いずれかの列番号を右クリックし、「列の幅」を選択する。

  • 「列の幅」を数値で指定する操作

画面表示を「ページ レイアウト」に切り替えているときは、「列の幅」を単位付きの数値で指定できるようになる。たとえば「1cm」と入力すると、すべての「列の幅」を1cmに変更できる。

  • 「列の幅」を単位付きの数値で指定

同様に、いずれかの行番号を右クリックして「行の高さ」を選択し、先ほどと同じ数値(1cm)を指定する。これで、すべての「行の高さ」も1cmに変更できる。

  • 「行の高さ」を単位付きの数値で指定

「列の幅」と「行の高さ」を指定できたら、ウィンドウ右下にあるアイコンをクリックして「標準」の画面表示に戻す。

  • 「標準」の画面に切り替え

このように操作を進めていくと、縦と横のサイズが等しい「正方形のセル」でワークシートを構成することができる。

  • 方眼紙のように配置されたセル

もちろん、「列の幅」と「行の高さ」に指定する数値は1cmでなくても構わない。0.5cmや0.75cmなど、状況に合わせて適当なサイズを指定すればよい。

ヒートマップ図面の作成

セルを方眼紙のように配置できたら、セルの罫線を使って「建物の壁」などを描画していく。ここで作成するのは簡易的な図面なので、縮尺を厳密に合わせなくてもよい。1マスはおおよそ1m(もしくは50cm)にする、などの大雑把な感覚で図面を作成していけばよいだろう。

  • 罫線を使って図面を描画

続いて、各地点の数値データをセルに入力していく。これらは数値データになるが、図面内に入力するときは「中央揃え」で配置したほうが見やすくなるだろう。

  • 数値データの入力

あとは、これらのセルに「カラースケール」の「条件付き書式」を指定するだけ。この手順は前回の連載で紹介した通りだ。このとき、「空白セル」や「文字が入力されているセル」を含む形でセル範囲を選択しても構わない。

  • セル範囲の選択

  • 「カラースケール」の指定

さらに、色が見やすくなるように「カラースケール」をカスタマイズすると、ヒートマップ図面が完成する。今回の例では、最大値の色を「赤色」に変更するカスタマイズを行った。

  • 「カラースケール」のカスタマイズ

  • 「倉庫内の温度」を示すヒートマップ図面

この記事の冒頭で紹介した「無線LANの強度」を示すヒートマップ図面も同様の手順で作成できる。こちらは各セルを0.5cm四方の正方形に設定した。椅子やテーブル、扉といったパーツを「四角形」、「円」、「部分円」などの図形で描画した。

  • 図面の作成と数値データの入力

続いて「カラースケール」を指定する。今回は「3色スケール」を採用し、最大値を「緑色」、中間値を「薄い緑色」、最小値を「オレンジ色」に設定した。

  • 「カラースケール」のカスタマイズ

今回の連載で紹介したように、簡易的なヒートマップ図面であれば、Excelでも十分に作成することが可能だ。図面の作成に少し手間がかかるが、「棒グラフ」や「折れ線グラフ」では表現できないデータを示す手法として覚えておくと、いずれ役に立つだろう。