Excelはグラフの作成にも使える便利なアプリである。ただし、必ずしも「最適なグラフ」を自動作成してくれるとは限らない。見やすく、内容が伝わるグラフに仕上げるには、ある程度のカスタマイズが必要だ。そこで本連載では、Excelグラフをブラッシュアップする手法を紹介していこう。第1回目は、アンケート結果をまとめた「円グラフ」の攻略法だ。

アンケートの分析に最適なグラフは?

まずは、「グラフの基となるデータ」から紹介していこう。以下に示した表は、ある企業が自社のサービスについてアンケート調査を実施した結果となる。

  • アンケート結果の集計表

この結果を把握しやすくするために、グラフ化する場合について考えていこう。グラフと聞いて真っ先に思いつくのは「棒グラフ」や「折れ線グラフ」という方も多いかもしれない。ということで、先ほどのデータをもとに「棒グラフ」を作成してみると、以下の図のような結果になる。

  • 「棒グラフ」を作成した場合

確かにグラフは作成できているが、とても「状況を把握しやすい」といえる代物ではない。「折れ線グラフ」の場合はさらに酷い結果となる。むしろ、「なぜ折れ線なのか?」を説明しなければならない羽目に陥るだろう。

  • 「折れ線グラフ」を作成した場合

このように、間違った種類のグラフを作成してしまうと、「グラフの作成」そのものが無意味な作業に終わってしまう。この程度の話は誰でも知っている、当たり前の話といえるだろう。

では、どうするのが正解なのか? アンケート結果のように「それぞれの割合」を示したいときは「円グラフ」を作成するのがベストな選択肢となる。そこで、今度は円グラフを作成してみよう。

Excelで円グラフを作成するときは、表内のセルを1つだけ選択(もしくは表全体を選択)した状態で、「円またはドーナツ グラフの挿入」コマンドから「好きな形式のグラフ」を選択すればよい。

  • 円グラフの作成手順

たとえば、2-D形式の円グラフを選択すると、以下のようなグラフが自動作成される。

  • 自動作成された円グラフ

あとは「グラフ タイトルの文字を入力しなおすだけ・・・」と考えたいところであるが、実際にはそうもいかない。上図を見るとわかるように、このグラフは「一目で状況を把握できる」とは言い難い。

円グラフは「メジャーなグラフ」の一つであるが、Excelにより自動作成されるグラフは「単に円グラフを作成しました」というレベルの、単純な円グラフでしかない。これを訴求力のあるグラフに仕上げていくには、さまざまなカスタマイズが必要となる。

グラフの色に意味を持たせる

続いては、自動作成された円グラフを「どのようにカスタマイズしていくか?」について考えていこう。

まず最初に気になるのは「色に意図がないこと」である。Excelのグラフ作成機能は、あらかじめ決められた配色に従って、データを色分けしていく仕組みになっている。初期設定では、(水色)→(オレンジ)→(灰色)→(ゴールド)→(青)→(緑)・・・という順番で着色されていくのが基本で、それぞれの「データの意味」は全く考慮されていない。

  • 自動作成された円グラフ

一方、今回のアンケート結果から知りたい内容は、「満足しているユーザー」と「不満を抱いているユーザー」の割合となる。これを視覚的に示すには、「満足派」と「不満派」が一目でわかるように色で分類してあげる必要がある。

そのためには、各データのグラフ(扇形)を個別に選択する操作が求められる。この操作は、扇形の部分をゆっくりと2回クリックすると実行できる(ダブルクリックにならないように注意すること)。1回目のクリックで系列全体(円グラフ全体)を選択し、2回目のクリックで個々のデータ(扇形)を選択する、という操作手順だ。

  • データの個別選択

データを個別に選択できたら、その扇形の部分を右クリックし、「塗りつぶし」コマンドから色を指定する。これで各データの色を自由に変更することができる。

  • 「塗りつぶし」の指定

同様の作業を繰り返すと、色で内容を識別できる円グラフにカスタマイズできる。以下の例では、「満足派」を赤系、「不満派」を青系の色で塗り分けている。

  • 「満足派」と「不満派」で色分けしたグラフ

このようにグラフの色を工夫すると、「不満を抱いている人の割合が多く、しかも過半数を超えている」ということが一目でわかるようになる。つまり、内容の伝わりやすいグラフに仕上げることが可能となるのだ。

色の指定は「グラフのカスタマイズの基本」ともいえる重要ポイントなので、普段から意識するように習慣づけておくとよいだろう。

いずれはExcelにAIが搭載されて、「データの内容に応じてベストな色を自動選択してくれる・・・」となれば便利であるが、現時点ではそのような機能はない。グラフの色に意図を持たせるには、各データの色を自分で指定しなおす手間が必要となる。

凡例が不要なグラフに仕上げる

続いては、グラフをもっと読み取りやすくするカスタマイズを施していこう。

まずは「グラフ タイトル」を適切な文字に修正する。この操作は「グラフ タイトル」の部分をクリックして選択し、文字を入力しなおすだけ。グラフを作成した経験がある人なら、初心者でも知っている操作といえるだろう。

  • グラフ タイトルの変更

次に、「凡例」の在り方について考える。現在の円グラフは、凡例を見ないと「各色が何を示しているのか?」を確認できないグラフになっている。これでは内容を把握するまでに時間がかかってしまう。

そこで、円グラフの周囲に文字を配置する方法を探ってみよう。使えそうな機能は「データ ラベル」となる。ただし、普通に「データ ラベル」を指定すると、以下の図のように「各データの数値」が表示されるだけの円グラフになってしまう。

  • 「データ ラベル」の表示

各項目の「分類名」を表示するには、「データ ラベル」のサブメニューを開き、「データの吹き出し」を指定する必要がある。すると、円グラフに周囲に「分類名」と「パーセンテージ」を表示できるようになる。

  • 「データの吹き出し」の表示

これで「凡例」は不要になる。「凡例」のチェックをOFFにして非表示にしておこう。

  • 「凡例」の削除

このように、表示する要素を調整してあげると、いちいち「凡例」を見なくても内容を把握できる、視認性のよいグラフにカスタマイズできる。

  • 表示する要素を調整した円グラフ

当初の「自動作成された円グラフ」に比べると、かなり見やすいグラフになったといえるのではないだろうか。ただし、「吹き出しにすることがデザイン的に優れているか?」と聞かれると、まだまだ改善の余地があるように思われる。

そこで次回は、もっとスマートに、見やすい円グラフに改善していく方法を紹介していこう。これらのカスタマイズを施すことで、以下のような円グラフに仕上げることが可能となる。

  • さらにカスタマイズしたグラフ

アンケート結果ではない、一般的な円グラフにも応用できるテクニックなので、今回の内容とあわせて覚えておくとよいだろう。