この半導体ニュースのまとめ
・TrendForceは、NORフラッシュとSLC NANDの2026年上半期契約価格がいずれも100%超上昇したと発表
・HBMや高層3D NANDへの生産シフトで成熟プロセス供給が細り、車載や産機、エッジAI向け需要が逼迫を招いた
・TrendForceは下期も値上がり継続を予想しており、高容量NORや産業/車載向けSLC NANDの上昇圧力は特に強い
TrendForceによると、主要メモリサプライヤはHBMや高層3D NANDといった高付加価値品へ生産能力を優先配分する一方、NORフラッシュメモリとSLC NANDの成熟プロセス品は構造的な供給不足に陥っている。その結果、2026年上半期の契約価格は両製品とも累計で100%を超えて上昇し、サプライヤに大規模な増産計画が見られないことから、下半期も値上がりが続く見通しだ。
今回の逼迫は、単なる需給タイト化ではなく、AI向けメモリへの投資と生産能力の集中によって、成熟ノード製品の供給が細っていることが背景にある。とりわけ車載、産業機器、通信インフラなど、製品寿命が長く信頼性を重視する分野では、代替が難しいメモリの不足が調達リスクとして顕在化している。
車載やエッジAIがNOR需要を押し上げ
NORの強みはExecute in Place(XIP)機能と高信頼性にある。車載分野ではADASやスマートコックピットの高度化に伴ってファームウェア容量が拡大し、高密度NORの重要性が一段と増している。エッジAI機器でも、従来は数十MBで済んでいたファームウェア容量が、AIモデルのローカル実装拡大により256Mビット以上の高容量品へシフトしている。さらに、産業機器、衛星通信、航空宇宙分野では代替が難しく、安定した需要基盤が形成されている。このため2026年上半期の平均契約価格は100~120%上昇したと推定され、下半期も高容量品を中心に60~65%超の上昇余地がある。一方で、中低容量品は中国勢の供給余力が表面化しつつあり、上昇ペースの鈍化や高値横ばいに移行する可能性もある。
高信頼性用途で需要が強いSLC NAND
SLC NANDも、高い書き換え耐性、低エラー率、長期保存性、広い動作温度範囲といった特性から、高信頼性用途で置き換えが難しい半導体メモリとされる。推論AIを搭載するスマートファクトリ、ロボティクス、自律移動機器、ハイエンドネットワーク機器向けで需要が拡大しているほか、サーバやデータセンターではOSブートドライブや高頻度書き込みバッファ用途でも使われる。医療画像機器、防衛、航空宇宙でも代替困難な位置付けにある。
一方で、複数のグローバルサプライヤが低容量・成熟プロセス品から撤退し、産機、車載、ネットワーク機器顧客が2026年第2四半期に戦略在庫を積み増したことで、上半期の平均価格上昇率は130~150%に達した。下半期も供給源減少が続くため、70~75%の値上がり余地があり、特に産業グレードと車載グレードの上昇圧力が強いという。加えて、エンタープライズ用途でも高信頼性ストレージの確保を優先する動きが続いており、需給の緩和には時間がかかる可能性が高い。
TrendForceは、主要サプライヤの競争軸が単純な値上げから、長期供給契約(LTA)や選択的受注による需給管理へ移りつつあると指摘する。AI向け先端メモリへの資源集中が成熟ノード品の不足を招く構図は、短期的なひっ迫ではなく中長期で意識すべき供給不安として受け止める必要がありそうだ。特に車載や産業機器では、単価よりも供給保証の重要性が一段と高まっており、今後は価格交渉力よりも継続調達力が調達戦略の中核になっていく可能性がある。加えて、調達先の多様化や在庫戦略の見直しも、ユーザー側の重要課題として浮上しそうだ。
