このカーエレクトロニクス関連ニュースのまとめ
・ボッシュの2025年日本売上高は前年比7%増の4600億円となり、4年連続で過去最高を更新
・日立空調買収を含むHVAC事業統合で事業ポートフォリオを拡大し、日本をアジア・グローバル成長の重要拠点に位置付けた
・AI搭載コックピット、ビークルモーションマネジメント、Point-to-pointナビなどを通じ、日本発のグローカル開発を強化している
ボッシュは6月17日、横浜市の本社で2026年の日本年次記者会見を開催し、2025年の日本国内における第三者連結売上高が前年比7%増の約4600億円となり、4年連続で過去最高を更新したことを明らかにした。グローバル売上高は910億ユーロと微増にとどまったが、日本では基盤事業であるモビリティの安定成長に加え、前年に完了したHVAC事業の買収・統合による事業ポートフォリオ拡大が売上成長を押し上げた。日本のボッシュ・グループ従業員数は2025年12月31日時点で約7100人としている。
ボッシュ 代表取締役社長のクリスチャン・メッカー氏は、日本での売上拡大の背景について、ハードウェアとソフトウェアの両輪がモビリティ事業を支えていることに加え、HVAC事業の統合により、日本での安定成長を支える強固な基盤が整ったと説明した。同社は2026年のグローバル事業見通しとして、売上成長率2~5%、事業からの支払金利税金控除前利益率4~6%を見込んでおり、日本でも引き続き売上拡大を目指す構えを示した。
売上成長を支えたモビリティ事業では、2025年にソフトウェアや先進運転支援システム(ADAS)領域で多くの新規案件を獲得したことが寄与した。加えて、日本国内の製造力も業績を下支えしている。むさし工場では60年以上にわたりブレーキブースターを生産し、累計生産台数は2億台を超えるほか、2022年に立ち上げた電動パワーステアリングの最終組み立てラインでは累計100万台超を生産した。栃木工場ではiBoosterを累計300万台、日本向け二輪車用ABSを1000万台以上生産しており、2026年4月からは第10世代ESCの製造ラインも稼働を開始している。
HVAC買収で空調事業の存在感を一段と拡大
今回の会見で、もう1つの大きな柱となったのがHVAC事業の統合である。ボッシュは2025年7月、ジョンソンコントロールズの住宅用および小規模商業施設向け暖房・換気・空調(HVAC)事業、ならびにジョンソンコントロールズ日立空調の買収を完了した。これはボッシュ史上最大の買収案件であり、米国とアジアでのプレゼンス拡大と、事業ポートフォリオの最適化を狙ったものだ。
統合後のボッシュホームコンフォート・グループは、従業員数約2万4000人、50拠点超の生産・開発ネットワークを抱える規模となった。ブランド面でも欧州の「Bosch」「Buderus」、米国の「York」、アジアの「日立」などを擁する体制となり、家庭用から業務用までをカバーする空調ソリューションをグローバルに提供できるようになった。ボッシュはこれにより、HVAC業界のリーディングカンパニーとしての位置付けを強めたとしている。
同社は世界のエアコン販売台数について、2030年までに年間2億台を超え、2024年比で約20%成長すると予測している。温暖化などを背景に需要は拡大が続く見通しだが、空調のニーズは地域によって大きく異なる。アジアでは高温多湿環境に適したダクトレスソリューション、米国ではダクト式、北欧・西欧ではヒートポンプを軸とした水ベース暖房、中東・アフリカでは費用対効果の高い給湯器や空調など、必要とされる製品は多様だ。そのため同社は、地域ごとの事情に合った幅広いポートフォリオを展開する重要性を強調した。
その中で日本は、ボッシュホームコンフォート・グループにとって特に重要な拠点だとする。理由としては、日立および「白くまくん」ブランドの存在、高機能製品を生み出す設計開発力、高品質な空調製品を実現する製造技術の3点を挙げた。アジア太平洋地域本社機能も日本に置いており、日本は国内市場だけでなく、アジアおよびグローバル市場に向けた成長をけん引する拠点として位置付けられている。現在はグループ内でR&Dチームの情報交換や工場視察なども進んでおり、日本拠点を軸にしたシナジー創出が本格化しつつあるという。
AI搭載コックピットからオフロード制御まで、日本発のグローカル開発を強化
モビリティ分野では、グローバルネットワークとローカル知見を組み合わせる「グローカル」戦略の具体例として、4つの開発領域が示された。1つ目は、日本のエンドユーザー向けに最適化したAI搭載コックピットだ。これはインフォテインメント、ADAS、車両の各ドメインと連携して動作し、車両全体の体験を調和させるソリューションとして設計されている。ウェイクワードを必要とせず、利用者の好みや行動を学習し、「暑くなってきた」といった何気ない会話に反応してエアコンを調整するなど、自己学習型のパートナーのように機能するという。
このAI搭載コックピットで特徴的なのは、日本の文化に根差した「間」と「場」への対応を打ち出している点だ。音声アシスタントが会話を遮ることなく、車内の空気感や会話の流れを読みながら自然に応答することを狙っており、方言を含む自然な話し言葉への対応も進めているという。ボッシュは、単なる音声UIではなく、ドライバーや乗員の車内体験全体をパーソナライズするシステムとして位置付けている。
2つ目は、車両のさまざまなアクチュエータを統合制御するビークルモーションマネジメントだ。ブレーキ、ステアリング、パワートレイン、サスペンションなどをソフトウェアで包括的に制御するもので、すでに20社以上の自動車メーカーに採用されている。昨年はパーソナライズ機能、コンフォートストップ機能、イージーターンアシスト機能などを公表したが、今回は新たに「クルーズ コントロール オフロード機能」を発表した。山道や岩場、未舗装路などで、ドライバーのペダル操作なしに駆動力と制動力を最適制御し、安定した低速走行を可能にするもので、北米、オーストラリア、ASEAN市場向け車両での採用を想定する。開発には日本、北米、オーストラリアのチームが共同で取り組んでいる。
3つ目は、市街地走行向けADASである「Point-to-point ナビゲーション」の日本での評価の開始だ。中国でWeRideと共同開発したこのシステムは、目的地設定後に車両が計画ルートに沿って車線変更などを行いながら、出発地から目的地までの走行を支援する運転支援機能である。すでに中国市場へ投入されており、日本では2026年5月から横浜周辺で公道実証実験を開始した。日本特有の複雑な交通環境下でデータ収集と走行試験を進め、高度なADASソリューションとしてグローバル展開する日本の自動車メーカーに提案していく考えだ。
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右が都市部向けPointo-to-Point機能実証実験車両。ナビゲーションに基づき、出発地から目的地までの運転をLeve2++で支援することを目的としており、高速道路に限らず、都市環境を含むE2Eの走行シナリオに対応することができるとする。中国では2024年より量産を開始済みで、日本では2026年5月より横浜で実交通環境における検証が開始された。車両は中国の奇瑞汽車(チェリー)の高級EVブランド「Exeed」が展開するフラッグシップ電気自動車セダン「Chery Exceed ES」。左は、レース場でのドライビングアシスト支援車両で、車両重心付近に設置した6軸センサとGPSによる車体位置・姿勢情報とサーキット情報を併せて、スムーズなコーナリングなどの支援を実現することができる。2025年にはBOSCH 女満別テクニカルセンターにあるテストコースで実際に走行試験を行ってきたという
4つ目は、内燃機関および代替燃料対応技術である。ボッシュはディーゼルやガソリン向け燃料噴射、素材技術などで長年蓄積してきた知見を引き続き競争力の源泉と位置付けている。ブラジルではエタノールを含む複数燃料に対応するフレックス燃料車向けシステムやECUの現地適合開発を進め、インドではCNG向けコンポーネントだけでなく、評価やシミュレーション、ソフトウェア開発まで日本と現地のエンジニアリングチームが一体となって対応している。地域ごとに異なる規制や燃料事情に合わせて技術を展開できる点も、同社のグローカルな強みとする。
横浜本社を起点に地域との接点も拡大
ボッシュは技術や事業だけでなく、横浜市都筑区にある本社周辺の地域活性化にも継続的に取り組んでいることを強調している。本社の移転から2年、ボッシュホール開業から1年以上が経過し、Bosch Forum Tsuzuki(公民連携プロジェクトの象徴としてボッシュと横浜市が共同で運営するエリアの総称)一帯はイベントやカフェ利用で多くの来訪者を集めるようになったとしている。例えば、2025年11月にはシュトゥットガルト室内管弦楽団による無料コンサートを開催し、約600人を招待したほか、「Xmas Days at Bosch Forum Tsuzuki」も実施したという。
今後の地域施策としては、横浜市交通局と進めるセンター南駅・センター北駅間高架下の「ひろば整備事業」がある。2026年内の工事完了を目指しており、完成後はBosch Forum Tsuzukiと一体利用できる空間として運営される予定だ。さらに、2027年冬をめどに本社1階のcafé 1886 at Bosch隣接地にブルワリーレストランの開業も計画しているとする。このレストランは、ドイツの文化や歴史を背景としたコンセプトで、店内醸造の自家製ビールを提供する予定としており、地域の回遊性とにぎわい創出への寄与を期待したものとなるという。
ボッシュは1886年の創業から140周年、日本では1911年に横浜で事業を開始してから115周年という節目の年を迎えた。2025年の日本売上高が4年連続で過去最高を更新したことは、単なるモビリティ需要の取り込みだけでなく、HVAC買収による事業領域の拡大、日本発のソフトウェア/ADAS開発、そして地域との接点強化までを含めた多層的な取り組みが成果として表れたものと言えそうだ。









