このものづくり関連ニュースのまとめ
・オムロンがPLCプログラムの検索・解読・流用設計を支援する「CX-One Agent」を開発
・流用候補の特定を2週間から4日、改造箇所の特定を1~2カ月から4日へ短縮
・11月4日からトライアル提供し、2027年2月に正式販売を開始する予定
オムロンは9月29日、生成AIを活用して製造現場における制御機器の設計・保全業務を支援するAIエージェントソリューション「CX-One Agent」に関するメディア向け説明会を開催した。
CX-One Agentは、同社のファクトリーオートメーション(FA)統合ツールパッケージ「CX-One」と連携し、顧客が保有するPLCのプログラム資産や、オムロンが提供するマニュアル、FAQなどの技術情報を自然言語で検索・解析できるようにするもの。2026年10月1日に公式Webサイトを開設、同年11月4日から2027年1月31日までトライアルキャンペーンを実施し、2027年2月に正式販売を開始する予定である。
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オムロンが開発した生成AIによる設計支援ソフトウェア「CX-One Agent」の利用イメージ。CX-Programmerで表示したラダープログラムと連携し、自然言語による質問やプログラムの解析を行える (提供:オムロン)
古い設備の設計資産と熟練者の知見を継承
日本の製造現場では、10年、20年以上前に設計された設備が現在も稼働している場合が多い。設備を更新・改造する際には、過去に作成したPLCプログラムを流用することも多いが、それだけの時間が経っていると当時の設計者や設備に詳しい熟練技術者が現場を離れてしまっていることも多く、必要な知見を得にくくなっているという課題がある。
仕様書が十分に残っていなかったり、プログラムの変更へ仕様書の更新が追い付いていなかったりする場合、現場で動作しているプログラム自体が設備仕様を知るための唯一の手掛かりになることもある。
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製造現場における生成AI活用の課題。設備仕様やPLCプログラムは機密性や暗黙知が多く、一般的な生成AIでは回答の精度や信頼性に不安が残るほか、古い設備の設計者や熟練技術者が現場を離れ、設計資産の解読や流用に必要な知見が失われつつある (提供:オムロン)
一方、一般的な生成AIにPLCプログラムを読み込ませても、制御処理で重要な要素を正確に把握できず、意図した内容と異なる回答やハルシネーションが生じる可能性がある。設備仕様やPLCプログラムは機密性も高く、外部の生成AIへ入力することへの不安も、製造現場でAI活用が進まない理由となっている。
オムロンは、FA現場で蓄積してきた制御技術や、PLCと設計ツールを長年提供してきた知見を活用し、同社のPLC「CJシリーズ」とCX-Oneに最適化したAIエンジンを開発。過去のプログラム資産を検索・解読し、流用設計へつなげるCX-One Agentとして製品化した。
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CX-One Agentの商品概要。オムロンのCJシリーズとCX-Oneに最適化したAIエンジンを搭載し、ラダープログラムファイルの解析やチャットによるCX-Oneの操作・設計支援に対応する。デスクトップソフトウェアと年間ライセンスの組み合わせで提供する (提供:オムロン)
自然言語で過去のプログラムを意味検索
CX-One Agentの第1の機能は、顧客が保有する統合プログラミングソフトウェア「CX-Programmer」のプログラム資産を横断的に検索し、流用候補を絞り込む機能である。
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CX-One Agentが提供する設計支援の全体像。熟練技術者の記憶や経験に頼っていた過去のプログラム資産の検索・絞り込み、仕様書が残されていないプログラムの解読、複数のマニュアルを横断した操作・設定方法の確認をAIで支援する (提供:オムロン)
プログラム、セクション、ファンクションブロック(FB)の単位で、文字列が一致するプログラムを探す文字一致検索と、入力された言葉の意味を解釈して近い処理を探す意味検索に対応する。
このため、プログラム内で使われている正確な変数名やキーワードが分からなくても、「自動モードを停止するプログラム」など、実現したい処理を自然言語で入力することで、関連性の高い候補を順に提示できる。
従来は、どの設備のどのプログラムを流用できるかを熟練技術者の記憶や経験に頼って探す必要があった。オムロンの評価事例では、エンジニア4人で2週間を要していた流用範囲の特定作業を、4日へ短縮できたという。
ラダープログラムを要約・可視化
第2の機能は、指定したラダープログラムの構造や処理内容を解析し、自然言語による要約や図として提示する機能である。
一般的な製造設備のプログラムは、数百から数千行に及ぶ場合がある。仕様書がなければ、技術者がラダー図を上から順に読み、個々の命令や変数の動きを確認しながら、プログラム全体の目的や構造を把握しなければならない。
CX-One Agentは、プログラムをセクション単位で解析し、役割や主要機能を自然言語で説明することが可能。処理の順序をフローチャートとして表すほか、セクション間の入出力関係を相関図として可視化し、選択した変数がどの処理を経由しているかを確認できるようにする。
これにより技術者は、プログラム全体を読み解いてから改造箇所を探すのではなく、AIが示した要約と構造から変更対象を絞り込み、CX-Programmer上の該当箇所へ移動して編集することができるようになる。
解析時には、プログラムの用途や必要な理解の深さに応じて出力の粒度を変更することも可能で、まず概要を把握し、流用候補と判断してから詳細に解析するといった使い分けができるほか、解析時間やAIの利用量も調整できるという。
オムロンの評価では、仕様書が残されていない旧設備について、ベテラン技術者1人が1~2カ月を要していた改造箇所の特定作業を4日へ短縮したという。
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CX-One Agentの評価結果。旧設備の流用範囲を特定する作業を2週間から4日へ、仕様書などが残されていない旧設備の改造箇所を特定する作業を1~2カ月から4日へ短縮した。数値はいずれもオムロンの評価事例に基づく (提供:オムロン)
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130以上のマニュアルを横断して回答
第3の機能は、PLCやCX-Oneに関する130以上のマニュアルやFAQなどをナレッジベース化し、自然言語による質問へ回答する機能である。
例えば、PLCが表示した異常コードを入力すると、複数のマニュアルを横断して意味や確認箇所、対処方法を提示する。CX-Oneの操作・設定方法についてもチャット形式で確認できる。
熟練技術者であれば把握している内容でも、経験の浅い技術者は対象となるマニュアルを探し、該当する記述を見つけるまでに時間を要する。CX-One Agentをマニュアル検索や操作支援へ利用することで、若手技術者の早期戦力化と、熟練技術者へ問い合わせる時間の削減につなげる。
ただし、現段階でCX-One Agentが中心的に支援するのは、プログラムの検索、要約、構造化、操作方法の確認であり、AIがPLCプログラムを全面的に自動生成する製品ではない。オムロンは、まず既存プログラムを人が理解し、判断して流用できるようにすることへ重点を置いている。
顧客データは一般LLMの学習に使用せず
CX-One Agentはデスクトップソフトウェアとして提供されるが、AIによる解析時にはインターネット接続が必要となる。
オムロンは、グローバルに提供される大規模言語モデル(LLM)を自社向けにカスタマイズし、クラウド上で動作させる。顧客のプログラムを解析する際に外部のAI基盤を利用する一方、入力したプログラムや問い合わせ内容は一般LLMの学習には使用しない設計としている。
解析済みデータを再利用するためのキャッシュについても、顧客が使用するパソコン側へ保存する。通信経路の保護や、プロンプトインジェクションなどの不適切な入力を検知する仕組みも設けるとしている。
AIによる要約や解析結果をそのまま設備へ反映するのではなく、人が内容を確認し、設計や保全へ利用することを前提とし、AIへ作業を丸投げするのではなく、技術者が理解・判断するための材料として提供することで、FA現場に必要な精度と信頼性を確保する考えである。
11月から2カ月間の無償トライアルを開催
CX-One Agentは日本市場を対象に、デスクトップソフトウェアと年間ライセンスを組み合わせて提供する。
2026年11月4日から2027年1月31日までのキャンペーン期間中に申し込むと、Basicライセンスを2カ月間無償で利用できる。正式販売は2027年2月を予定し、BasicとPremiumの2種類のライセンスを用意する。
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CX-One Agentの提供スケジュール。2026年11月4日から2027年1月31日までトライアルキャンペーンを実施し、期間中の申し込みに対してBasicライセンスを2カ月間無償提供する。正式販売は2027年2月を予定する (提供:オムロン)
BasicとPremiumで利用できる機能に違いはなく、利用可能なAI処理量で区分する。オムロンはトークンという単位を前面に出さず、解析できるプログラム数を目安として示す方針だとしている。
顧客がCX-One Agentによって削減できる設計・保全コストの10分の1程度を、価格設定における1つの目安として検討しているとするが、価格は正式販売時に公表する予定だという。
CJ3MとNS-Bで既存設備の更新も支援
なお同社は、CX-One Agentのトライアル提供開始に合わせ、PLC「CJ2M」の後継機種となる「CJ3M」と、プログラマブルターミナル「NS」の後継機種「NS-B」も発売する。
CJ3Mは、CJ2Mで使用してきたプログラム資産を継承しながら、基本性能の向上と最新のセキュリティへの対応を図ったモデル。一方のNS-Bは既存設備への取り付け互換性を確保し、既存の設定や画面資産を引き継いで設備を更新できるようにしたモデルとする。
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オムロンがCX-One Agentのトライアル開始に合わせて発売するPLC「CJ3M」(左)とプログラマブルターミナル「NS-B」(右)。既存のプログラムや設定、画面などの資産を継承しながら設備を更新できるようにする (提供:オムロン)
将来は保全やプログラム生成へ支援範囲を拡大
CX-One Agentは、オムロンの長期ビジョン「Shaping the Future 2030」に基づく「GEMBA DX」への取り組みの1つとなる。
同社は2030年までデバイス事業の競争力強化を優先しながら、デバイスから得られるデータと製造現場の知見を組み合わせ、新たなソリューションやデータサービスへと展開する方針を掲げている。
CX-One Agentでは、製造現場に蓄積されたプログラムや熟練者の知見を構造化し、再利用可能な設計資産へ変換する役割を担うこととなる。まずはCX-OneとCJシリーズを対象に、旧設備の流用設計と更新を支援することを目指していき、将来的には異常コードの解析を含む保全業務や、プログラム生成へ支援範囲を広げる計画だとしている。
オムロンは、CX-One Agentを通じて、過去の設計者や熟練技術者に依存してきたプログラムの検索・解読を効率化し、設備更新に必要な知識を次世代へ引き継ぐ。設計・保全業務の属人化を抑え、経験の浅い技術者でも既存資産を活用できる製造現場の実現を目指すとしている。