スペースワンは8月30日に記者会見を開き、カイロスロケット3号機の打ち上げ失敗原因について報告した。同機は3月5日に打ち上げを実施したものの、第1段の飛行中にロケット自身が異常を検知。ミッションの達成が困難と判断され、打ち上げの68.8秒後、自律破壊により飛行を中断していた。カイロスの打ち上げ失敗は、初号機から3機連続となる。

  • 飛行中断直後と思われるカイロスロケット3号機の映像

    飛行中断直後と思われるカイロスロケット3号機の映像

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自律飛行安全システムに問題が発生

カイロスの大きな特徴は、日本のロケットとしては初めて、自律飛行安全システムを採用したことだ。ロケットは飛行中に、機体の位置や速度、各部の健全性などを常に監視している。もし予定の経路から外れるなど、安全上の問題が発生した場合は、直ちに飛行を中断し、地上への被害を避ける必要があるからだ(飛行安全)。

  • カイロスロケットの概要。大きな特徴は、飛行中断方式が自律であること (C)スペースワン

    カイロスロケットの概要。大きな特徴は、飛行中断方式が自律であること (C)スペースワン

従来の国のロケットなどは、これを地上の人間が判断していた。ただそのためには、ロケットと常に通信ができるよう、飛行経路上の各所に、地上局を配備する必要がある。一方カイロスはそれを自分自身で判断できるため、そういった地上局は不要。建設費や維持費を抑えられるのは、民間企業にとって大きな魅力だ。

しかし今回、問題が発生したのは、その自律飛行安全システムだった。このシステムは、冗長として2系統が搭載されている。片方に異常が発生した場合、冗長性が失われ、仮にもう片方にも異常が発生したら、飛行を中断できない状態になってしまう。それを防ぐため、片方に異常が発生した時点で飛行を中断する、というのが基本的なロジックだ。

カイロスでは、第3段に指示役となる飛行安全管制機器を搭載。そして、実行役となる飛行中断機器を、第1段〜第3段の各段に配置している。しかし3号機では飛行中、片方の系統において、飛行安全管制機器と第1段の飛行中断機器の間で通信異常が発生。これにより、システムが飛行の中断を決断した。

  • 自律飛行安全システムの構成図(スペースワンの説明を元に筆者が作成)

    自律飛行安全システムの構成図(スペースワンの説明を元に筆者が作成)

この通信異常はなぜ起きたのか。同社が原因究明を進めたところ、機体に蓄積した静電気による電気ノイズが通信線に混入したことで、通信ソフトウェアのリセットが発生、一時的に通信途絶となった可能性が高い、ということが分かった。静電気を通信経路に印加する試験を行った結果、実際に通信が途絶する場合があることも確認されたという。

静電気はいつどこに蓄積したのか

静電気による現象としては、たとえば雷がある。飛行中の機体に雷が落ちることを避けるため、ロケットは上空の雲の状況なども確認した上で打ち上げを行うのだが、今回は快晴だったので、これは考えにくい。

  • カイロスロケット3号機の打ち上げ時は、このような快晴だった (C)スペースワン

    カイロスロケット3号機の打ち上げ時は、このような快晴だった (C)スペースワン

電気回路は静電気によりダメージを受ける恐れがあるため、一般的に静電気対策は取られるものだが、同社の関野展弘副社長・開発本部長によれば、「見過ごしていた部分があった」という。「地上とやり取りしている部分は飛び上がった後は使わなくなるため、あまり気にしていなかった。その部分に配慮が足らなかった」と、不備を認める。

同日、記者説明会の前に開催された「宇宙シンポジウムin串本」では、登壇した同社の豊田正和社長もこの件について言及。「もともと静電気がロケットに帯電していて、ロケットが上がるにつれて全体に広がってしまった」と述べており、地上とのインタフェースを介し、打ち上げ前に蓄積された静電気が問題を引き起こしたと見られる。

4号機に向けた対策としては、まずは静電気をしっかり除去できるよう改良する。そして、もし静電気があったとしても耐えられるよう、機器のノイズ耐性を強化。さらに、ノイズによってリセットがかかったとしても飛行中断を避けられるよう、リセット機能のソフトウェアも改修する。以上、3段構えの対策である。

  • 4号機に向けた対策。自律飛行安全システム以外にも水平展開を行う (C)スペースワン

    4号機に向けた対策。自律飛行安全システム以外にも水平展開を行う (C)スペースワン

最後のリセット機能については補足が必要だろう。今回、このリセット自体は想定していた動作だったが、再起動して通信が復旧する前に、システムが飛行中断を決めてコマンドを送っていた。これについて、関野氏は「復帰と判断のタイミングに若干の齟齬(そご)があった。実証し切れていなかった」と悔やんだ。

自律飛行安全システムの採用は大きなチャレンジであり、それだけに難しい。今回、飛行自体は正常だっただけに、なんとも惜しい。初号機のときも、人間の判断であれば飛行を継続させた可能性があり、もしかしたら成功していたかもしれない。産みの苦しみが続くカイロスだが、4号機で初成功となるか。次回も自律飛行安全システムに注目したい。