この半導体ニュースのまとめ
・EIS内蔵の26セル対応バッテリモニタICでセル内部状態をリアルタイム解析
・従来18セルから拡張し部品点数削減と設計簡素化を実現
・EVとESS向けに安全性と診断精度を向上
Texas Instruments(TI)は6月9日(米国時間)、電気化学インピーダンス分光法(EIS)エンジンを内蔵した26セル直列接続チャネルバッテリモニタIC「BQ79826Z-Q1」を発表。同月24日に日本法人である日本テキサス・インスツルメンツ(日本TI)が、詳細な機能説明などを行った。
AI/HPC時代のバッテリニーズに対応
近年、電気自動車(EV)の普及やAIデータセンター(AIDC)の拡大により、バッテリーには高精度な状態監視と安全性確保が求められている。そうした中、従来のBMS(バッテリマネジメントシステム)では電圧や温度などの外部パラメータからバッテリ容量や状態を推定する手法が主流だったが、より直接的にセル内部状態を把握する技術としてEIS(電気化学インピーダンス分光法)が注目されるようになってきた。
EISは、セルに微弱な電流を流してその応答電圧を観測し、周波数ごとのインピーダンス特性を解析することで、充電状態(SOC)、劣化状態(SOH)、温度依存特性などを推定する手法。体組成計と同様の原理でセル内部状態を可視化でき、リアルタイム性に優れる点が特徴となる。
26セル対応でIC削減と設計簡素化
BQ79826Z-Q1は、同社の第6世代バッテリモニタICに位置付けられ、同社として初めてEISエンジンを統合した製品となる。
1デバイスで最大26セルを直列監視でき、従来の18セル品から約44%チャネル数を拡張。これにより、同一バッテリーパック構成時のIC数を削減でき、部品点数の抑制と基板面積の縮小を実現することができるようになり、結果としてBOMコスト低減と設計の簡素化が可能になると同社では説明している。
また、-40℃~+125℃、0~5.5Vレンジで2mV未満の電圧測定精度を実現しており、高精度な充電状態推定が可能となる点もバッテリ寿命の延長や安全性向上といった観点からのメリットになるとする。
EISで熱暴走を早期検知
さらにEISがICに統合されたことにより、セル内部の微小な変化を捉えられるようになったため、従来よりも早期に異常兆候を検出することが可能となる。これにより熱暴走につながる内部ストレスの検知・抑制が可能となり、安全性向上に直結するという。
加えて、セル固有データを活用したコア温度推定機能により、外付け温度センサ削減と精度向上を両立。ISO 26262に準拠し、ASIL-Dにも対応する。
ターゲットはEVやデータセンターのエネルギー貯蔵
同社では、同製品を車載用途に加え、データセンターのエナジーストレージシステム(ESS)にも適用可能であるとする。AIデータセンターの電力需要拡大に伴い、グリッドレベルの蓄電システムでは全セルの状態監視精度が重要になっており、そうしたニーズにEISベース診断を適用することで、セル単位での予防保全を提供し、システム全体の信頼性・寿命管理の強化をアピールしたいとする。
拡張可能なプラットフォームを構築
なお、同製品は車載バッテリ ジャンクション ボックス (BJB) パック モニタ「BQ79881-Q1」およびオプションの通信ブリッジと組み合わせた設計を前提しており、これらを組み合わせることで内蔵EISとともに高機能かつ柔軟なBMSチップセットプラットフォームとすることで、小型EVから大規模蓄電システムまで対応する拡張性の高いBMS構成を提供するとしており、高い柔軟性を背景とした設計の再利用性向上と開発期間短縮を狙っていくという。
BQ79826Z-Q1はすでにサンプル提供が開始されており、量産開始前の数量を同社Webサイトより入手可能。量産開始は2026年末を予定しているとするが、評価ボードやリファレンス設計はすでに利用可能となっているという。
自動車の電動化とAIインフラの拡大が進む中、バッテリの内部状態の可視化は、よりバッテリを高効率で使いたいというニーズに対する競争軸となると考えられることから、EISをICに統合した今回のアプローチは、BMSの高度化を加速するステップになる可能性がある。

