三菱電機のファクトリーオートメーション(FA)向け機器の主要生産拠点である名古屋製作所が2024年9月1日付で設立100周年を迎えた。同社はこの100周年という節目を踏まえ、報道陣向けに視察会を開催。同社のこれまでの取り組みを交えて、その模様をお届けする。
三菱電機の歴史とこれまでの取り組み
三菱電機は、1921年に三菱造船(現 三菱重工業)の電機製作所(神戸)を母体に設立された。そして、その3年後の1924年9月1日に総員214名で三相モータなどの生産を中心とした名古屋製作所の第一工場の操業が開始。当時、M字型の両脚の水平部が長く伸びた屋根は珍しく、「モダンファクトリー」として見学者の目を楽しませたという。この歴史ある当時の第一工場の建屋は改修を続けながら、現在でもE7工場と名前を変えて稼働し続けており、放電加工機の量産が行われているとのこと。
現在の名古屋製作所は2021年に同敷地内に設立された産業メカトロニクス製作所と併せて従業員数は約3500人、敷地面積は30万6000m2まで拡張されており、レーザー加工機や放電加工機、シーケンサ、インバータ、ロボットなどさまざまなFA関連機器を製造している。
また、名古屋製作所の分工場として1974年に設立された名古屋製作所 新城工場は三相モータの量産を担当。特殊品の多いモータシャフト加工ラインには同社が開発した、生産現場(FA)統合ソリューション「e-F@ctory」が導入され、ラインの生産性向上、多品種・小ロット・短納期を実現しているとする。
e-F@ctoryは、「生産現場」と「ITシステム」、そしてそれらをつなぐ「エッジコンピューティング」という3つのセクションで構成されているソリューションで、FA技術とIT技術を活用することで開発・生産・保守の全般にわたるトータルコストを削減し、生産現場の改善に貢献すると共に、一歩先のものづくりを目指していこうというもの。この取り組みはデジタル化を推進しようという考えで始まったものではなく、純粋に名古屋製作所の生産現場体制をよりよくしていこうという思いから始まったものだという。
同社はこうした、ものづくりデータの利活用による新たなサービスやソリューションの創出、FA事業領域で培ったコア技術とオープンイノベーションとの連携による新事業創出を積極的に行うことで、顧客課題の解決に挑んでいる。
そのほか、グローバルでの生産体制の強靭化を図るべく、2025年度には尾張旭地区にて整備を進めている新生産拠点にて約130億円を投じ第一生産棟を稼働させることを計画していることに加え、新たに約425億円の追加投資を行う形で2027年度から第二生産棟を稼働させることも予定している。さらに2023年12月にはインドのマハラシュトラ州プネ近郊にインバータを中心とするFA制御システム製品の生産を担当する新工場を稼働させたほか、2025年秋には中国・大連市に三菱電機大連機器の第4生工場を稼働させる計画も進行しており、海外の5つの関係会社を含め、グローバルで生産を支えている。
データの利活用を推進する工場の現場
実際に工場内を視察されてもらうと、製造業とゲームを掛け合わせることで「人にやさしいFUNな工場」を目指す取り組み「人にやさしいFUNな工場」を目指す取り組み「Fun Factory(FFA、ファンファクトリー)」が導入されている現場を見ることが出来た。
FFAとは、製造業とゲームを掛け合わせ、自身のアバターを成長させることで各々のスキルを可視化し、工場で働く作業者のモチベーションを向上させるシステム。実際に導入されている現場を見てみると、自分からはもちろん、ほかの作業者からも、作業レベルやアバターのほか、「総作業台数」「今日の作業台数」「総作業時間」「今日の作業時間」などが一目で分かる画面が見ることができるようになっていた。他の作業者のスコアも見えることから、自身のスキルを向上させ、アバターを成長させていきたい意欲が強化され、モチベーションにつながるだろうと感じた。
製品開発だけではなく、デジタル技術の組み合わせによるさまざまなサービスを展開し、トータルソリューションで提案を行う三菱電機。
現状多くの製造現場ではデジタル化を進めていく必要性は感じているものの、何から始めたらいいか分からない顧客も多く、データの利活用ができていない現場も多いという。三菱電機では製品から取得したデータを簡単に収集、格納し、活用していくe-F@ctoryや、デジタル基盤「Serendie」で、それぞれのアプリケーションにまでデータが活かされる仕組みを開発。今後はさらにデジタル技術をうまく使いながら、これからの100年を切り開いていきたいとしている。