宇宙航空研究開発機構(JAXA)は、2024年7月1日に打ち上げに成功し、現在は初期機能確認運用を実施中の先進レーダ衛星「だいち4号」(ALOS-4)が、Lバンド合成開口レーダ「PALSAR-3」を用いて、2024年7月15日から17日(日本時間)にかけて初の観測を実施し、無事画像が取得されたことを発表するとともに、その画像を公開した。
だいち4号が搭載するLバンド合成開口レーダのPALSAR-3は、電波を地表面に照射し、地表面から反射される電波を受信することで情報を得るセンサだ。これまで、2006年打ち上げの「だいち」(運用終了)に「PALSAR」が、2014年打ち上げの「だいち2号」(運用中)に「PALSAR-2」が搭載されており、今回はその最新版ということになる。
PALSAR-3は、人工衛星搭載の合成開口レーダとしては初の実証となる「デジタルビームフォーミング技術」が用いられており、だいち2号の高い空間分解能を維持しつつ、観測範囲を最大で4倍にまで拡大することに成功している。デジタルビームフォーミング技術とは、アンテナで受信した電波をオンボードで高速にデジタル処理し、位相の調整と信号の合成を行うことにより、アンテナのビーム指向方向を任意に生成する技術のことで、この技術によりだいち4号では、同時に最大4方向へのビーム形成が可能となっている。
まただいち4号は地球観測衛星として、2024年7月時点で世界最高レベルの性能となる3.6Gbps(1.8Gbps×2系統)の高速データ伝送速度を実現している点も大きな特徴だ。これにより、発生データ量がとても大きくなる3mという高分解能の観測においても、HH偏波(水平偏波送信・水平偏波受信)およびHV偏波(水平偏波送信・垂直偏波受信)による2偏波観測が常時可能になっている。今回公開されただいち4号による画像は、その2偏波のデータから合成された疑似的なカラー画像で、緑色が植生、明るい紫色や黄緑色が市街地、暗い紫や黒は裸地や水面などを表す。こうした偏波情報により地表の状況の判別が容易になることで、災害状況の把握や森林伐採の監視などへの活用が期待されるという。
なお今回の撮影は2024年7月15日~17日(日本時間)に行われ、PALSAR-3の試験電波発射が実施されたことにより、画像が取得された。その結果、初期機能確認運用では、だいち4号の持つさまざまな観測モードが正常に機能することが順次確認されたという。ちなみに今回公開された画像の一部にはノイズが見てとれるが、軌道上での機器の性能に応じた地上処理のチューニングの実施前であることが理由であり、現在実施中の初期機能確認運用(計3か月間)および今後の初期校正検証運用において最適化を行う予定となっている。なお、正規の標準プロダクトは初期校正検証運用終了後に提供を開始する予定としている。