米国の国防総省ならびに商務省は9月16日(米国時間)、、CHIPSおよび科学法(CHIPS法)に基づき、Intelに「セキュア・エンクレーブ(Secure Enclave)」と呼ばれる機密性の高い軍事・情報分野向けの先端半導体生産の確立に向けた国防総省向け半導体製造受託プログラムとして、最大30億ドルの直接資金を提供することを発表した。

この資金はCHIPS法に基づく米国内の半導体製造強靭化に向けた補助金としてIntelに支給される予定の85億ドルとは別枠として支給されるもので、同社のアリゾナ州をはじめとする工場の拡充に充てられる見通しである。

国防総省と商務省は共同で「この資金はマイクロエレクトロニクスの製造を支援し、国家安全保障のための先端半導体の国内サプライチェーンへのアクセスを確保するものであり、両省の合意に基づき、国防総省によって執行される。この契約は、Intelと国防総省の協力に基づくものであり、米国の国家安全保障を強化するものである」と述べている。

一方のIntelも今回の補助金支給を公式に認めており、業界関係者の中には、Intelは最近、経営上の問題を抱えてはいるものの、国防総省の計画を実行するだけの能力があると米国政府が信頼していることを示すものとなるとの見方を示す向きもある。

そのIntelによると、Secure Enclaveプログラムは、Rapid Assured Microelectronics Prototypes - Commercial(RAMP-C)や State-of-the-Art Heterogeneous Integration Prototype(SHIP)など、Intelと国防総省の間でこれまでに実施されてきたプロジェクトを基盤としており、最先端のロジックチップの設計と製造の両方を行っている唯一の米国企業として、国内のチップサプライチェーンのセキュリティ確保に努めるとともに、国防総省と連携して、安全な最先端ソリューションを推進することで米国の技術システムの回復力強化に貢献するとしている。

また、最先端チップを設計、製造するために顧客が必要とするすべてのコンポーネントを統合するIntel Foundryの継続的な進歩を反映しているともIntelは主張しており、その最新世代が2025年の量産開始予定のIntel 18Aであるとしている。

Intelと国防総省との連携としては、例えば2020年のSHIPプログラムの第2フェーズでは、国防総省はアリゾナ州とオレゴン州にあるIntelの先端半導体パッケージング能力にアクセスできるようになり、Intelの研究成果や設備投資を活用できるようになったほか、2023年にIntelは、同プログラムに基づくマルチチップパッケージのプロトタイプを納品している。こうした取り組みは、最先端のマイクロエレクトロニクスパッケージへのアクセスを確保し、国防総省の近代化への道を開く成果だったとIntelは述べている。

また、2021年には国防総省のRAMP-Cプログラムの複数のフェーズで商用ファウンドリサービスを提供し、国防総省の重要なシステム向け半導体を製造する契約を獲得。この契約以降、IntelはBoeing、Northrop Grumman、Microsoft、IBM、NVIDIAなどを含むいくつかの防衛産業基盤(DIB)顧客を顧客とし、初期のDIB製品プロトタイプの開発を進めてきており、現在もIntel 18Aプロセスのほか、知的財産およびエコシステムソリューションを含め、量産対応に向けた準備を進めているという。