TSMCが2024年8月の決算速報を発表した。それによると売上高は前年同月比33%増の2508億7000万NTドルとなり、過去2番目の額で8月単月としては過去最高を更新した。
AI半導体の需要好調に加え、Apple iPhone 16 シリーズ向けSoC「A18」などの売り上げが計上された結果と見られる。また、2024年1月~8月までの累積売上高は前年同期比30.8%増の1兆7739億7000万NTドルとなっている。
同社の成長のけん引役である先端プロセス、特に3nmは生産能力がひっ迫していることから、台湾サプライチェーン関係者からは、2024年末までに月産8万枚、近い将来には10万枚まで生産能力を拡大させると見られるほか、台湾域外の日本や米国でも月産1万5000枚ほどが追加され、合計13万枚ほどまで拡大されると見方がでている。
この台湾域内での2万枚の増強については、一刻も早く増強したい場合、新工場を建設するのではなく、一部の5nmプロセスラインを3nmに転用する可能性があるとする業界関係者もいるようである。
また、日本のJASMが担う熊本第1工場は28/22nmと16/12nmプロセス、同第2工場は12/6nmと40nmプロセスでの量産予定であり、3nmでの生産は公式には出ていない。ただし、まだ稼働前の第2工場の生産品目一部変更の可能性のほか、3nm以降を担当する第3工場(熊本以外の可能性も含む)の建設計画を早める検討が進められている可能性もあるという。
このほか、さらなる微細化対応に向けて同社は、ASMLの高NA(NA=0.55)EUV露光装置「EXE:5000」を2024年9月末までに、台湾の新竹科学園区宝山地区にあるTSMC研究開発(R&D)センターに搬入する見込みだとDigiTimesが報じている。
EXE:5000は、高NA EUV露光装置の実験/試作機という位置づけで、すでにIntelならびにimec-ASML High NA EUV R&D Centerが設置済みで、世界で3台目となる。TSMCが高NA EUVを量産に適用するのは、早ければ2028年ころに提供される予定の1.4nmプロセス(A14)の強化版となるA14Pなど以降になると見られるという。
TSMCの張暁強(ケビン・ジャン)副共同営運長(共同最高執行責任者、Co-COO)は2024年8月、2024年内に高NA EUV露光装置の調達は行うが、生産には使用せず、提携パートナーとの研究に使用すると語っていた。また2024年5月時点で、2026年下半期に稼働予定の1.6nmプロセス(A16)には、高NA EUV露光装置を使用しないとも語っており、こうした発言から同社のサプライチェーン関係者からは、早ければ2028年ころの提供予定である1.4nmプロセス(A14)の強化版(A14Pなど)から適用されると見られるが、本格的な活用は1nmプロセス(A10)以降になるとの見方がでている。
ASMLの高NA EUV露光装置は1台3億5000万ユーロ(約550億円)以上とも言われており、張暁強氏は「性能は気に入っているが価格が高すぎる」と評価。情報筋によると、価格交渉の結果、ASMLが値引きに加えて技術者の教育、保守メンテナンス、部品交換などを支援し、共同研究の開発費の分担率の引き上げにも同意した模様だという。ASMLは、大口顧客であるTSMCの高NA EUV露光装置調達計画を早めたいという思惑もあり、当初予定していた2024年末の納入予定が数カ月早まった模様である。