島津製作所は、2024年の春以降に健康増進プラットフォーム「SUPOFULL(サポフル)」の製品化を含む新事業を開始する予定であることと、新事業開始に先立ち2023年10月より「SUPOFULL」構成ツールの1つである指先に載せるだけで最終糖化産物(AGE)の蓄積レベルを計測できる装置「AGEsセンサ」を発売することを発表した。

  • 「AGEsセンサ」の外観

    「AGEsセンサ」の外観(出所:島津製作所)

「SUPOFULL」は2019年より同社が開発してきた、利用者の健康増進を目的としたクラウド型パッケージサービス。日常の健康データ計測ツール、健康データの統合管理ソフトウェア、医療機関における検査、健康アドバイスなどで構成され、利用集団の属性や導入の目的、対象疾患に応じて検査機器やソフトウェアを柔軟に入れ替えることができ、利用者はそれらを元にした健康アドバイスに沿って健康増進に努めることができるというものとなっている。

  • 「SUPOFULL」の仕組みをまとめた図

    「SUPOFULL」の仕組みをまとめたイメージ図(出所:島津製作所)

その構成ツールの1つである「AGEsセンサ」は、装置に指先を載せるだけで、加齢現象や健康に関わるといわれているAGEの蓄積レベルを計測できるセンサ。こうしたツール群で計測した日常の健康データを収集し、見える化していくのだという。

ターゲットは自治体・企業・介護事業者などで、「自治体や介護施設による住民や利用者などの健康増進策の立案・進捗管理」「企業での従業員の健康管理」「個人による健康増進」などの用途で活用されることを想定しているとする。

実際に2021年10月から山口県防府市にあるデイサービス施設「ひとつの会 たまのや」において、高齢者の健康増進をテーマに「SUPOFULL」の事業実証が行われており、利用者から「データを見ることで、生活習慣改善や運動を意識した」との声や、施設スタッフから「利用者の状態を詳細に把握でき、指導が容易になった」といった声があがったという。2023年7月までの実証実験の成果は、8月29日から30日に開催された岡山県中国地区老人福祉施設研修大会にて発表され、実証実験は2023年12月まで実施する予定だという。

また、2021年11月から2022年3月の期間には島津製作所の従業員65人を対象として、生活習慣病予防をテーマに「SUPOFULL」の実証実験を実施。

食事・運動・睡眠などのデータを基に、一人ひとりの生活習慣に応じた伴走型助言サービスの有用性を確認するなどの実験が行われ、参加者からは「自分では気づかなかった食習慣が見える化できた」「無酸素運動から有酸素運動へと運動の種類を変えることで、健康診断の結果が改善した」といった声があがったとした。

さらに2022年10月からは特定保健指導対象者である従業員38人にも、食事や運動などの行動変容を促すことをテーマに実証実験が行われ、どの実証実験でも利用者の健康増進につながる結果が得られているとする。

同社は2023年度からの中期経営計画において、分析計測装置や医用機器を用いた臨床検査によってトータルソリューションを提供する「メドテック事業」に注力していきたい方針を示しており、今後、社外の研究機関とも連携しながら装置やソフトウェアのさらなる改良を図り、「SUPOFULL」の開発に取り組んでいきたいとしている。