アナログ・デバイセズ(ADI)は7月26日(米国時間)、同社が保有するオレゴン州ビーバートンの半導体ウェハ工場の拡張に向け、10億ドル以上の投資を行うことを発表した。

  • ビーバートン工場にてテープカットを行うADIのヴィンセント・ロウチCEO兼会長とADI グローバル・オペレーション&テクノロジー担当エグゼクティブ・バイス・プレジデントのヴィヴェック・ジェイン氏

    ビーバートン工場にてテープカットを行うADIのヴィンセント・ロウチCEO兼会長(左)とADI グローバル・オペレーション&テクノロジー担当エグゼクティブ・バイス・プレジデントのヴィヴェック・ジェイン氏(右)(出所:ADI)

1978年に建設されたビーバートン工場は、ADIのウェハ製造施設として最大の生産量を誇り、産業・オートモーティブ・通信・コンシューマ・ヘルスケアなどさまざまな業界の顧客向け製品の基盤を提供している。

  • ADIのビーバートン工場

    ADIのビーバートン工場(出所:ADI)

ADIによると、今回の設備投資によって同工場におけるクリーンルームのスペースは約1万960m2に拡張されるといい、180nm以下のテクノロジー・ノードで動作する製品の社内製造量はほぼ倍増することになるという。また今回の拡張により、数百人規模での新たな雇用機会が創出され、オレゴン州におけるADIの従業員数は現在の約950人から大幅に増加するとしている。

  • 今回の投資によってクリーンルームの面積は約1万960平米まで拡張される。

    今回の投資によってクリーンルームの面積は約1万960m2まで拡張される。(出所:ADI)

なお10億ドルを超える投資総額のうち10%以上は、全体的な生産効率を高め、より環境にやさしい化学物質を利用することを目的とした、最先端の製造装置に対するものだとする。それらの導入により、ビーバートン工場での生産量をほぼ倍増させると同時に、同施設における温室効果ガスの絶対排出量の約75%削減、水使用量原単位の約50%削減という目標を掲げているという。

さらにADIは、ビーバートン工場において、約25人の学生グループを対象として半導体装置のメンテナンスに関する約8週間のトレーニングコースを提供する技術開発トレーニングセンター「Semiconductor Advanced Manufacturing University(SAMU)」を主催する予定とのこと。同センターにおいては、米国の退役軍人や再就職者、ADI工場の現職オペレータといった地域コミュニティ内のさまざまなグループに技能習得の機会を提供し、半導体製造の基礎やその他のカリキュラムを実施することで、専門能力の開発を推進するとしている。

今回の発表に際し、ADIのCEO兼会長であるヴィンセント・ロウチ(Vincent Roche)氏は「ADIのビーバートン工場を拡張することで、重要な業界向けの生産能力を増強し、CHIPS法の構想に沿って国内製造を強化し、ADIのハイブリッド製造モデルのグローバルなレジリエンスを強化する」とコメントを残している。

また工場が位置するオレゴン州のロン・ワイデン(Ron Wyden)上院議員は、「この発表は、半導体がシリコンフォレスト内外で確固たる地位を築き、ビーバートンに新規の高給職を創出して州全体に影響を与え、州経済全体に利益を波及させることで、オレゴン州の代表的な産業を強化するものだ」としている。