COMPUTEX TAIPEI 2023の2日目にあたる5月31日、NXPは“Shaping Ecosystems to Master Complexity”と題した基調講演を行ったので、その内容をご紹介したい(Photo01)。
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Photo01:講演を行ったRafael Sotomayor氏(EVP&GM, Secure Connected Edge)。そういえばSotomayor氏、以前単独インタビューを行わせていただいたのだが、まだその記事を書いてない。申し訳ない限り
昨今のSmart XXXはどんどん進化しているが、その代償として複雑性が大幅に増しているのは言うまでもない(Photo02)。
その「複雑性」をもう少し分解したのがこちら(Photo03)。
まず要求事項(Photo04)については、ある意味この業界で普通に言われている機能や要求という話で、これはそう珍しくはない。
次が差別化要因(Photo05)で、ただここに挙がっているのはどちらかというとRequirementsの延長という気もしなくはないが、まぁRequirementsよりももう少し必要性は落ちる(無くても使うのに困るわけではない)という意味では差別化要因なのだろう。そして予見不能な事柄というのがこちら(Photo06)。まぁ昨今の状況を考えればこれも納得できる。
こうした複雑性を乗り越えて提供されたサービスの例としてSotomayor氏が取り上げたのが台湾のEasyCardやiPASS(Photo07)、それとSmart Factory(Photo08)の事例である。ちなみにSmart Factoryは2021年度の数字でいえば世界全体のGDPの18%にあたる17兆ドルのマーケットがある、としている。
さてここからはNXPの製品の紹介になるわけだが、まず示されたのはおなじみのこちら(Photo09)だが、この前日の5月30日にNXPはi.MX9ファミリーのローエンドとしてi.MX91シリーズを発表した。
なのでてっきりここでi.MX 91の紹介をするのかと思ったのだが、それはあっさりパスして昨年5月に発表されたi.MX RT 1180を紹介した(Photo10)。
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Photo10:確かに現状これを超える性能の製品はラインナップされていないし、Cortex-M85もまだ搭載製品はないから、i.MX RT 1180を前面に出してくるのは妥当ではある
またローエンドのコントローラ向けにはMCXシリーズを紹介した。特にMCXシリーズに関しては、今後立ち上がるであろうEndpoint AI向けにeIQを利用することで迅速に対応が出来ることを強くアピールしていた(Photo12)。
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Photo12:eIQはNXPの独自のフレームワークだが、i.MX9ファミリー全部で利用可能(Ethosを搭載したi.MX 93だけでなく、NPUを搭載しないi.MX 91でもそのまま利用できる)ということで、これを強く推してゆきたいという意気込みを感じた
またSmart Factory向けにはN-AFEを利用することでより柔軟かつ高精度を実現できるとしており(Photo13)、i.MX RT 1180との組み合わせをアピールしていた(Photo14)。
Smart Home向けには、昨年から同社が力を入れているmatterを前面に押し出し、matter向けのソリューションを改めて説明した(Photo16)。
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Photo16:この情報もこちらの時から特に違いはない
ということで、案外に新しい話がなかったのがちょっと残念ではあった。ただNXPに限らず今回のCOMPUTEXでは組み込み系に元気がないというか新しい話がほとんど無かったことを考えると、基調講演に新しい話題が乏しかったのも致し方ない事なのかもしれない。