千葉大学は12月13日、オウトウショウジョウバエを対象に、都市化に伴った環境変化が昆虫に与える影響を評価した結果、都市で見られるような夜間の人工光(光害)がショウジョウバエの一日の活動パターンを変化させることを解明。併せて、夜間照明の影響を受けにくく、なおかつ高温に強くなるように、都市の個体が進化していたと示唆されたことを発表した。

同成果は、千葉大大学院 理学研究院の高橋佑磨准教授、千葉大大学院 融合理工学府の佐藤あやめ大学院生(研究当時)らの研究チームによるもの。詳細は、生態学と進化に関する全般を扱う学術誌「Ecology and Evolution」に掲載された。

世界的に都市の面積の拡大、いわゆる都市化が進行しており、生物の減少や絶滅の原因の1つになっていると考えられている。都市化は、森林や草原といった生物の生息地を奪うだけではなく、街灯や住宅の照明に由来する夜間の光害や、気温の上昇など、残された生息地の環境を変化させることが知られている。

しかし、このような環境変化(都市ストレス)が生物に与える影響や、都市ストレスに対して都市の生物がどのような進化を遂げているのかは、十分にわかっていなかった。そこで研究チームは今回、オウトウショウジョウバエ(以下、ハエ)を対象に、都市化に伴った環境変化が昆虫に与える影響を評価することにしたという。

研究チームはまず、関東地方の都市部と郊外でハエを採集し、それらを実験室で繁殖させた後、それぞれのグループ(郊外群と都市群)に分けて実験を開始した。

ショウジョウバエの仲間は、一般に、日の出後と日没前後に活動量が高まる二峰性の活動パターンを示すことが知られている。今回の研究で用いられたハエも、夜間に完全に暗くなる環境で飼育した場合には、二峰性の活動パターンが示された。

一方で、夜間に弱い人工光(10ルクス)のもとで飼育すると、郊外群の個体と都市群の個体のどちらにおいても、日没前後(点灯後12時間後)での活動ピークが消滅したという。その一方で、都市群の個体に限っては、夜間照明のもとでは夜明け前に活動量が高まることも確認された。このことから、都市群の個体は、夜間照明がある環境で「夜行性」のような生活をしている可能性があるという。

なお、都市群の個体では、一日を通じた夜間照明による活動量の減少幅も少ない傾向が見られた。研究チームは、都市群の個体が夜間照明によるストレスの影響を最小化するように進化している可能性も考えられるとする。これほどの活動パターンの変化は、種内の雌雄の出会いや、種間の相互作用に大きな影響を与える可能性があるという。

  • 夜間照明によって都市由来の個体も郊外由来の個体も夕方の活動ピークが消滅した。ただし、都市由来の個体では、夜中に新たな活動ピークが現れていることが確認された

    夜間照明によって都市由来の個体も郊外由来の個体も夕方の活動ピークが消滅した。ただし、都市由来の個体では、夜中に新たな活動ピークが現れていることが確認された(出所:千葉大プレスリリースPDF)

次に、各個体を低温から高温までのさまざまな温度に暴露し、限界の活動温度を測定する実験が行われた。その結果、都市群の個体は、郊外群の個体に比べて低温への耐性が劣ることがわかった。

一方で、通常の飼育条件下で都市群の個体と郊外群の個体の高温耐性を比べると、明確な差は認められなかった。ただし、短時間だけ高温下にさらすと、都市群の個体だけ高い高温耐性を獲得することが明らかにされた。このことから、都市群の個体は高温耐性に高い柔軟性(可塑性)を有しており、結果として高温に耐えられることが示唆された。

これらの結果は、都市における環境変化が生物の活動に影響を及ぼしている一方で、都市に住む生き物は、そのようなストレスの影響を軽減するような進化を遂げていることが示唆されるとする。

研究チームは、都市化によって生じたさまざまな環境ストレスが生物に与える影響や、それに対抗して生じる生物の進化を理解することは、都市における各生物種の栄枯盛衰を理解するだけではなく、都市化に伴った生物の減少を最小化するための方策を考える上で重要な知見となることが期待されるとした。