東京工科大学(工科大)と明治は8月2日、カカオ種子に含まれる成分「脂肪酸トリプタミド」が、生命維持に重要な酵素「サーチュイン」を特異的に活性化することを発見したと発表した。

同成果は、東京工科大 応用生物学部の菅野貴女 大学院生(研究当時)、同・今井伸二郎 教授、山梨学院短期大学 食物栄養科の萱嶋泰成 教授、明治の共同研究チームによるもの。詳細は、英オンライン総合学術誌「Scientific Reports」に掲載された。

日本人の2021年の平均寿命は厚生労働省の発表によれば、男性が81.47年、女性が87.57年で、男性は僅差でスイスに抜かれて2位となったものの、女性は長年にわたって1位をキープし続けており、依然として世界トップクラスとなっている。

しかし、日本人の健康に関して近年の問題となっているのが、平均寿命と健康寿命の差が大きい、と点である。厚生労働省によれば、2019年のデータで、健康寿命は男性が72.68年、女性が75.38年とされており、同年の平均寿命に対し、男性で8.73年、女性で12.06年の差がある状態となっている。

この健康寿命を延ばすことは、現代社会の喫緊の課題であり、高齢者の健康維持・疾病予防などを実現する技術の開発が期待されている。

こうした背景に対し、研究チームではこれまでも老化を抑制し、肥満を代表とするメタボリックシンドロームに有効な機能性食品の開発に取り組んできたという。

老化や肥満抑制に関与する酵素として、「サーチュイン」が注目されている。サーチュインは、細胞の維持や増殖に関与するアセチル化タンパク質のアセチル基を取り除く働きをしており、この酵素を活性化することで、寿命の延長や肥満抑制につながるとされている。そうした理由から、サーチュインの遺伝子は、“長寿遺伝子”という通称で呼ばれているという。

研究チームはこれまでの研究において、穀物外皮に存在する成分が、サーチュインを活性化する知見を得ていた。今回の研究では、そうした知見から、伝統的に長寿食とされているカカオ(Theobroma cacao)に着目し、研究を開始することにしたという。

その結果、カカオ種子に多く含まれるサーチュインを活性化する長寿成分が「脂肪酸トリプタミド」であることが確認されたとする。