MediaTekは11月25日、日本のメディアに向けた事業説明会を開催。スマートフォン(スマホ)向けSoCを中心に、幅広い製品群がさまざまな機器に自社の半導体デバイスが搭載されていることなどの説明を行った。

近年、TSMCとの関係性を強化し、その先端プロセスを活用した製品展開を武器に急速に事業規模を拡大させている同社。2021年の売上高は前年比61%増の176億ドル。2022年も好調を維持し、OMDIAの調査による2022年第3四半期の半導体企業売上高ランキングでも上位10社の中に名を連ねている

  • MediaTekの売上高推移

    MediaTekの売上高推移 (出所:MediaTek配布資料)

MediaTekコーポレートシニアバイスプレジデントのJerry Yu氏は「MediaTekは現在、大きく『モバイルフォン』『スマートエッジプラットフォーム』『パワーIC(PMIC)』の3つの事業セグメントがある。いずれも大きく成長を続けており、2022年の業績見通しとしては、モバイルフォンで4倍、スマートエッジで1.5倍、パワーICで2倍ほどの成長を見込んでいる」と、好調さを強調。現在、同社のビジネスをけん引している分野としては、5G、Wi-Fi 6/6E、GPON、4K/8Kなどがあるが、今後は5G、AI、メタバース、オートモーティブなどもけん引役になることが期待されるとしている。

  • 3つの事業領域でビジネスを展開

    3つの事業領域でビジネスを展開。それぞれの分野で強みを持っている (出所:MediaTek配布資料)

同社は2021年に初のスマホ向けフラッグシップSoC「Dimensity 9000」を発売したが、2022年11月には第2世代品となるフラッグシップスマホ向けSoC「Dimensity 9200」を発表。TSMCの第2世代4nmプロセスを採用しており、5G向けに最適なソリューションを提供するとしており、スマホのみならず、新たなモデム技術により将来的な技術としてV2XやIndustry 4.0、IoTデバイスとしての活用にも期待を示している。

  • 「Dimensity 9200」の概要とブロック図

    「Dimensity 9200」の概要とブロック図 (出所:MediaTek配布資料)

  • 「Dimensity 9200」のCPU部、GPU部の概要

    「Dimensity 9200」のCPU部、GPU部の概要 (出所:MediaTek配布資料)

これまで半導体市場をけん引してきたのはPCであったり、スマホであったりと、特定の製品分野であり、同社もそうした分野に注力してきたが、将来を見据えると、2027年のSAM(Service Addressable Market)としては、スマホ/モデムが350億ドル、モバイルコンピュータが400億ドル、産業機器/IoTが340億ドル、ブロードバンドアクセスが170億ドルなどとさまざまな分野がそれぞれ成長していくことが期待されており、同社としても、そうした各市場に向けた良いコンピューティングやコネクティビティなどの技術開発を進めていく必要があるという認識を示す。そのため、「MediaTekは、グローバルで見ても、最先端プロセスを活用できる数少ない企業であり、グローバルのカスタマに向けたイノベーションパートナーである。幅広い製品ポートフォリオを提供することで、安定した成長を目指している。最先端を背景とした強い技術を搭載した製品群と、それを活用してくれるカスタマの増加が、さらに新しい製品群の提供を実現してくれている」(同)と、今後も先端プロセスを活用した強い製品群を積極的に展開していきつつ、カスタマの増加を図ることで事業の成長を加速させていくとした。

そうした将来の強い製品の1つとして期待されるのがWi-Fi 7(IEEE 802.11be)だという。同社コーポレートバイスプレジデントのMike Chang氏は「すでに2022年1月にはデモを披露し、5月には製品提供を開始するなど、世界クラスのWi-Fiソリューションベンダ」であると説明。同社のWi-Fi 7技術を搭載したアクセスポイントの場合、競合比でカバレッジを30%拡大できるほか、4×4のトライバンドルーターのプリント基板面積も4層基板を使用しつつ、20%削減でき、コストメリットを発揮できるとしている。

  • Wi-Fi 7ソリューションの特長
  • Wi-Fi 7ソリューションの特長
  • 同社のWi-Fi 7ソリューションの特長 (出所:MediaTek配布資料)

また将来的には小型・低消費電力技術が重要視されるメタバースや車載半導体領域にも注力していくとする。特に電動化、自動運転の実用化が進む自動車分野は、より高性能な半導体が必要とされていくことが予想され、「最先端プロセスに対するノウハウ、CPU、GPU、APU技術も有しており、かつ5GやWi-Fiの技術やマルチメディアに対するソフトウェア最適化技術なども有するMediaTekに優位に働くことが期待される」(同)とのことで、製品開発の強化を進めていくとしている。

  • 自動車分野におけるMediaTekの強み

    自動車分野におけるMediaTekの強み (出所:MediaTek配布資料)

なお、同社の日本市場でのビジネスは決して小さくないという。顧客としてはスマホやテレビといった家電系、産業機器、自動車というように多岐にわたっており、今後の同社にとって重要な顧客が多くいる市場との認識を示すほか、消費者側の目線も高いため、日本で認められる製品を作っているメーカーに半導体を提供することが、世界での成長につながるとの認識を示している。

  • 会見の登壇者たち

    左から、MediaTekのスマートフォンビジネス部門 副ジェネラルマネージャーのYenchi Lee氏、Mike Chang氏、Jerry Yu氏、メディアテックジャパン社長の栫啓介氏