日本での工場建設は地政学リスク対策になるのか?

ただ、地政学リスクを低減するという側面では、まだ新棟建設の余地がある米アリゾナ州を選ぶはずであり、中国に近い日本も台湾有事に際して必ずしも安全だとは考えてにくい。実際、ハリス副大統領が先日、来日した際に、日本の半導体関連企業トップを招いて国家安全保障の見地から米国誘致話を熱心に持ち掛けたという話がでている。

このように地政学リスクという点でTSMCが日本に10nm未満のプロセスで製造可能な先端ファブを建設するモチベーショはほとんどないが、熊本工場の誘致が巨額補助金を提示したことで進展したように、1兆円を超える補助金や画期的な税制優遇策を示せれば話は別になると思われる。ただし、そこまでして日本に誘致できたとしても、肝心の何を作って、誰がそれをどこに使い、どのように国益にかなうかは未知数である。