ネットアップは8月4日、都内で昨年度の振り返りと2027年度の事業戦略に関する説明会を開催した。ネットアップは2026年度の事業実績と2027年度戦略を説明した。日本法人は前年比40%成長を遂げ、AI時代の価値創出を支えるデータ基盤の重要性を強調した。説明会には同社 代表執行役員社長の斉藤千春氏、ゲストスピーカーにソフトバンク 執行役員 技術統括 共通プラットフォーム開発本部 本部長のアシック・カーン氏らが登壇した。

NetApp日本法人が前年比40%成長、AI時代のデータ基盤戦略を強化

米国本社であるNetAppの2026年度におけるグローバルの業績は、年間成長率5%の69億ドル(日本円換算で約1兆1000億円)と過去最高記録を達成し、日本法人では前年比40%の成長を遂げたという。まず、斉藤氏は昨年度の事業戦略で掲げた「カスタマーサクセス」「伴走型アプローチ」「データインフラベンダー」の3つのキーポイントについて取り組みの状況を説明した。

  • ネットアップ 代表執行役員社長の斉藤千春氏

    ネットアップ 代表執行役員社長の斉藤千春氏

  • NetAppの2026年度におけるグローバルの業績

    NetAppの2026年度におけるグローバルの業績

カスタマーサクセスでは、保守サポートサービスにおける顧客満足が前年比0.3ポイント増の4.84(5点満点)となり、伴走型アプローチとして進めたCustomer Briefing Center(CBC)とVIP Meetingの実施回数は同2.5倍、自社のブランドアンケート調査では「データ基盤のパートナー」として、ネットアップを挙げる回答者は同63%増になったという。

  • 日本法人における昨年度の成果・実績

    日本法人における昨年度の成果・実績

斉藤氏は「データ基盤の分野においてお客さまとともに構想を描き、成果の創出まで伴走するアプローチを本格的に実施している企業は限られている。AI時代のデータ基盤は複雑な環境の中で、お客さまのビジネス成果に合わせて設計し、進化させなければならないからだ。そのため、容易ではない挑戦だったからこそ、多くの実践による知見を蓄積することができた。これらの知見をデザインプリンシプル(設計原則)として体系化し、水平展開していく」と昨年度を振り返る。

また、AI需要の拡大に伴いメモリやSSDの供給制約が続く中、サブスクリプション型ストレージサービス「Keystone」への注目が高まっているという。

Keystoneに関して、同氏は「当社のストレージOSのONTAPをそのまま利用することができ、ソフトウェアスタックや利用方法を変更することなく、既存環境のプライベートクラウドとしてサブスクリプションで利用できるため、予算管理や将来の容量需要、構成変更に伴うリスクを軽減することが可能だ。日本のパートナー企業による高品質な運用サービスと組み合わせることで、安心して利用できる」と、そのメリットを語る。

同社が国内顧客を対象にした実施した調査によると、回答企業の80%がAIを本格的に業務に活用しており、AIを実行する段階からAIによる“実効性”を得る段階を迎えているという。経営陣には、AIにいくら投資するのではなく、AIでどれだけ利益を生み出すかが問われている。斉藤氏は「Return On AI(AIでどれだけの利益を生むか)の段階を迎えた」との認識を示す。

  • Return On AI(AIでどれだけの利益を生むか)の段階を迎えたという

    Return On AI(AIでどれだけの利益を生むか)の段階を迎えたという

また、顧客とのAIプロジェクトを通じて見えてきたものとして、AIそのものよりもAIが活用できるデータ環境をいかに整えるかが成果を左右するとのことだ。斉藤氏は必要なデータを見つけ、その意味を理解し、品質を担保して安全に利用できるか、ということがAIによる価値創出の前提となるため、AI競争の本質は「データ競争」との見解だ。

同氏は「当社はAIそのものを売りたいのではなく、お客さまがAIで利益を創出できるように支援する。そのために必要なものがAIの活用を支えるデータの環境となる。データを安全に保全し、必要な時に利用できる状態にし、AIが活用できる形で提供する。その基盤を実現するものが従来から当社が掲げる“Intelligent Data Infrastructure”となる」と力を込める。

ネットアップではAI時代に向けたポートフォリオを強化しており、なかでもRed Hat OpenShift Virtualizationと、Google Distributed Cloudへの対応を斉藤氏は挙げている。前者は仮想化基盤の見直し需要に対応し、既存データを活用しやすい環境へ移行するための選択肢となる。後者は、データ主権や国内運用への要件が高まる中で、ソブリン・クラウドへの対応策の1つとなる。

ソフトバンクのAIデータセンターを支えるNetApp、2027年度は共創戦略を加速

続いて、ゲストスピーカーのソフトバンクのアシック・カーン氏が登壇した。ソフトバンクでは、2030年までに次世代社会インフラを定義し、物理層としてAIデータセンターや計算基盤を構築しており、過去3年間で累計11万のGPUをサービス化している。

  • ソフトバンク 執行役員 技術統括 共通プラットフォーム開発本部 本部長のアシック・カーン氏

    ソフトバンク 執行役員 技術統括 共通プラットフォーム開発本部 本部長のアシック・カーン氏

国内では北海道苫小牧市や大阪府堺市などに大規模データセンターを展開し、国内のAI計算資源を指数的に拡大する計画だ。Blackwellアーキテクチャを採用したNVIDIAの次世代データセンター向けAI・HPC用GPU「NVIDIA B200」のクラスター統合や、水冷式(ダイレクト・ツー・チップ)の「NVIDIA GB200 NVL72」搭載の国内最大級の大規模AI計算基盤を内製で設計し、稼働を開始するなど世界最先端の性能を目指している。

また、AIデータセンター向けのソフトウェアスタック「Infrinia(インフリニア) AI Cloud OS」を搭載したクラウドサービス「AIデータセンター GPUクラウド」を、2026年10月に提供を開始する予定で開発に取り組んでいる。

こうした大規模AI計算基盤では、GPU性能だけでなく、複数テナントにまたがるデータ管理やセキュリティ、ランサムウェア対策も重要になる。その領域を支えるパートナーとして、ソフトバンクはNetAppを位置付けている。ソフトバンクのAIインフラ基盤を支えるパートナーとして、カーン氏はネットアップについて次のように評価した。

「非常に重要なパートナー。特に機能面ではマルチテナントをサポートしていることが大きい。現在、数十PB(ペタバイト)規模でネットアップのストレージシステムを利用している。また、独自のランサムウェア対策も評価している」(カーン氏)

NetApp、2027年度は「Data Impact Acceleration Initiative」でAI成果創出

最後にネットアップの2027年度における展望について、ネットアップ 専務執行役員 コーポレート営業統括本部 統括本部長の齋藤智恵美氏が説明した。2027年度のテーマは「Data Impact Acceleration Initiative」だ。そして、戦略の柱は「面で届ける、業界で効かせる」「描いて導く、実証で支える」「共に創り、共に伸ばす」の3つとなる。

  • ネットアップ 専務執行役員 コーポレート営業統括本部 統括本部長の齋藤智恵美氏

    ネットアップ 専務執行役員 コーポレート営業統括本部 統括本部長の齋藤智恵美氏

  • 2027年度における戦略の柱

    2027年度における戦略の柱

1つ目の面で届ける、業界で効かせるは産業・地域・技術の視点を組み合わせ、業界ごとの課題解決ソリューションを全国のパートナーと展開する。

2つ目の描いて導く、実証で支えるについては、ビジネスの構想からPoC(概念実証)、本番環境での成果創出まで伴走する「AI Factory Journey」を推進していく

  • 「AI Factory Journey」の概要

    「AI Factory Journey」の概要

3つ目の共に創り、共に伸ばすでは顧客とパートナー、ネットアップが一体となる「AI Value Co-Creation Alliance」で共創によるビジネスモデルを構築する。

齋藤氏は「AIの可能性を語る時代から成果を証明する時代となり、当社はお客さまのデータをインテリジェンスへ、そしてインテリジェンスを実際のビジネスの成果に変えることに挑戦していく」と意気込みを示していた。

一方、社長の斉藤氏は「昨年は国内シェアにおいて“ぶっちぎりNo.1”を目指すと宣言したが、今年度も成長を継続し、引き続き“ぶっちぎりNo.1”を変えずにビジネスを展開していく」と述べていた。

AI活用が実証段階から成果創出の段階へ移る中で、企業にはAIモデルそのものだけでなく、データを安全かつ継続的に活用できる基盤の整備が求められている。ネットアップは「Intelligent Data Infrastructure」を軸に、ストレージ、クラウド、セキュリティ、パートナー連携を組み合わせ、AIによるビジネス価値の創出を支援する考えだ。

ソフトバンクのAIデータセンターにおける大規模活用事例も示されたことで、同社のデータ基盤がAIインフラの中核を担う可能性は一段と高まっている。2027年度は、顧客やパートナーとの共創を通じて、AI投資を具体的な成果へと結び付けられるかが問われることになりそうだ。