相次ぐ欧米系企業の買収で変貌するルネサス

ルネサスは、2016年にIntersilを約3200億円で買収したのを手始めに、2018年にはIDTを7300億円で買収(手続き完了は2019年)、2021年にDialog Semiconductorを約6200億円で買収するなど、次々と企業買収を進めてきた。このほか、2021年には、ホームネットワーク、スマートビルディング、通信、産業分野向けに先端Wi-Fiチップセット/ソフトウェアなど幅広い無線通信技術を供給するイスラエルのCeleco Communicationsを359億円で買収したほか、2022年もRealty AIを買収するなど、シリコンバレーの半導体企業のように積極的な買収を進め、守備範囲の拡大を図っている。

実は、シリコンバレーにあったIntersilやIDTは、買収当時、業績は芳しくなく、半導体業界のM&Aブームからは取り残された状況であった。また、Dialogも、2018年に、電源管理ICを長年Apple向けに供給していた部門を、約300人の技術者ごとAppleが買収しており、それ以外の部門で事業を進めている状態だった。こうした企業の買収により、要職にそれらの欧米流製品企画力やグローバルマーケティング力を有する人材を据えることができるようになり、そうした企業文化の変化が現在の好調を後押しする1つの要因となっているものと思われる。

海外半導体メーカーのトップたちは、メガトレンドを見極める情報収集力に長けており、時代を先取りする予測能力もある。こうしたこともあり、ルネサスも主軸としてきた車載部門よりも、それ以外の部門(産業・インフラ・IoT向け事業)の方が事業規模が大きくなってきている。ルネサスは海外の知恵を採り入れ、海外企業と渡り合える企業に変身したと言えるだろう。

世界に広がるルネサス研究開発陣

ルネサスは、今回のReality AI買収により、Reality AIが抱えていたAI技術の専門者集団を獲得し、米国メリーランド州にAIoTの研究開発拠点を持つことになる。すでに、ルネサスの研究開発部門は一連の買収もあり、日本人よりも外国人の技術者の方が多い状況ではあるが、さらに外国人の技術者が増員されることになる。ルネサスはウクライナにも開発センタ(元Dialog海外開発部門の1つ)を持っているが、この新たな研究開発拠点により、日本-中国-アジア-中東-欧州-米国にわたるグローバルな研究開発ネットワークがさらに広がることになる。