実際に作製された界面マルチフェロイック構造は、その磁気電気結合係数が、スピントロニクス用磁石を用いた原理実証において世界最高クラスとなる1.8×10-5s/mに到達することが判明。これは、これまでの最高値の2倍以上の値だという。さらに、電界印加による不揮発メモリ状態の繰り返しスイッチングも実証することができたとする。

  • 界面マルチフェロイック構造と電界印加による磁化方向制御の模式図

    (a)界面マルチフェロイック構造と電界印加による磁化方向制御の模式図。(b)界面マルチフェロイック構造における性能指標(磁気電気結合係数)の現状 (出所:東工大プレスリリースPDF)

STT-MRAMを含むすべてのスピントロニクスデバイスでは、磁化方向を制御することが情報の書き込みに相当する。現行の電流印加方式では、約0.1pJ/bitの書き込み電力を必要とするが、電界印加方式ではそれよりも3桁低い、約0.1fJ/bitという低消費電力で書き込むことができることが期待されている。

  • 電界印加による磁化方向(状態)の制御の様子

    電界印加による磁化方向(状態)の制御の様子。電界Eの符号を反転させると磁化方向が変化する。また、ゼロ電界(E=0)状態では、高磁化状態と低磁化状態の2つの状態を保持することができる (出所:東工大プレスリリースPDF)

なお研究チームでは、今回開発された技術について、スピントロニクスデバイスの「新たな電圧情報書き込み技術」の可能性を提示するものであるとするほか、界面マルチフェロイック材料を用いた新しいタイプのMRAMや、不揮発ロジックデバイスへの可能性を期待させるものだとしており、今後は、次世代の高集積・低消費電力半導体デバイスとの融合などを視野に研究を進めていく予定としている。