KDDIは5月12日、2026年3月期(2025年4月-2026年3月)の決算について説明会を開いた。中期経営戦略の最終年度にあたる今期は、外部流出額相当や契約コスト減損を除く実力ベースで、売上高が前年比4.1%増の6兆719億円、営業利益が同6.0%増の1兆1643億円、親会社の所有者に帰属する当期利益が同13.6%増の7567億円となり、増収増益となった。

なお、これらの業績については、連結子会社であるビッグローブおよび同社子会社であるジー・プランの架空循環取引に伴う外部流出額相当と契約コスト減損を考慮した数値である。

  • KDDI 2026年3月期の連結業績

    KDDI 2026年3月期の連結業績

代表取締役社長 CEOの松田浩路氏は「中期経営戦略では2019年3月期対比でEPS(Earnings per Share:1株当たり純利益)1.5倍を目標としていたが、この目標達成に必要な当期利益水準を上回った」と説明した。

  • KDDI 代表取締役社長 CEO 松田浩路氏

    KDDI 代表取締役社長 CEO 松田浩路氏

価格競争から価値提供へ舵を切ったモバイル事業が好調

値下げ競争からの脱却を図るKDDIは、通信品質や付加価値による差別化を推進している。

営業利益の増減要因を事業セグメント別に見ると、パーソナルセグメントベースのモバイル事業は、アクセスチャージ(接続料)の影響を除くと約450億円(アクセスチャージの影響を含めると317億円)の増益だった。

金融・エネルギー・ローソン持分法利益を合わせると174億円、ビジネスセグメントのDX事業は286億円、それぞれ増益。技術構造改革や過年度の販促費影響を含めると、全体で664億円の増益だ。

松田氏が「この1年間で特に注力してきた」と語るのが、モバイル事業の構造変革。LTV(Life Time Value:顧客生涯価値)を重視した価値創出への構造変革が功を奏し、モバイル収入の増加につながった。単純な値下げ競争ではなく、付加価値サービスによる顧客単価向上を重視した。

2026年3月期のモバイル収入はアクセスチャージの影響を除くと対前年500億円(アクセスチャージの影響を含めると326億円)増の2兆54億円で、期初予想を上回る増収となった。

特に、圏外エリアでも空が見えれば通信が可能なau Starlink Directや、5G回線を優先的に割り当てるau 5G Fast Laneなど、他社に先駆けた価値創出が結果につながった。これにより、ARPU(Average Revenue Per User:ユーザー当たりの平均売上高)は対前年100円増の4440円、スマートフォン契約数は同36万契約増の3323万契約となった。

  • モバイル事業の構造改革が奏功した

    モバイル事業の構造改革が奏功した

KDDIが注力領域に定める金融事業は、営業利益が432億円。2023年3月期から2026年3月期までのCAGR(Compound Annual Growth Rate:年平均成長率)は30.4%。同様に、法人向けのDX事業の営業利益は2639億円、CAGRは11.3%だった。どちらも2桁成長を達成。

  • 金融事業とDX事業はともに2桁成長を達成

    金融事業とDX事業はともに2桁成長を達成

松田氏は「通信料金の値下げトレンド、燃料費の高騰、ミャンマーの政変などの大きな事業環境の変化がある中でも、持続的成長を実現し、次なる飛躍への礎を築くことができた。2022年に発生した通信障害や今般の不適切取引については、再発防止を全社で徹底し、風化させることなく継承していく」と述べた。

不適切取引受け「ガバナンス推進本部」を新設

松田氏は続いて、先般のグループ会社における不適切取引を受け、グループガバナンス体制の強化に向けた取り組みを説明した。グループ全体での仕組みの整備と、グループ会社との信頼性強化の両面から取り組みを強化する。

まず、KDDIは全子会社を対象にルール運用の点検や見直しなどガバナンスの総点検を実施した。点検はすでに完了しており、ここで抽出された課題は6月末までに改善予定だ。

さらに、グループ会社とのコミュニケーションの量と質を向上させ、年内をめどに対等な関係性構築を実施する。すでに経営トップとの対話セッションを開始しているという。

「私自身もビッグローブとジー・プランを訪問した。約260名の社員が会場で参加し、QAセッションでは10を超える意見交換が行われた。企業への期待や通信事業の将来像、気持ちの切り替えに関する前向きな意見が多く出され、対話の大切さを認識した」(松田氏)

  • グループ会社との対話を通じて信頼性を構築するという

    グループ会社との対話を通じて信頼性を構築するという

同社はガバナンス実行をさらに確実なものとするため、これまで分散していたガバナンス関連の機能と部門を集約し、ガバナンス推進本部を新設する。

約10年前のKDDIグループ会社のDMXにおける不適切会計事案を受け、同社はグループ横断で統一した視点で子会社を管理するための体制を整備した。しかしその後、環境変化や組織再編に伴い、コーポレート部門内での子会社管理機能が分散されていたという。

そこで今回、ガバナンス推進本部を新設し、グループ横断で財務・ガバナンス・リスクマネジメントを一元管理することで、効率的かつ確実な管理を実現する。本部長にはCFOの最勝寺奈苗氏が兼務で就任する。

  • グループ全体のリスクやガバナンスを一元管理する組織を設立

    グループ全体のリスクやガバナンスを一元管理する組織を設立