大別すると5つの変更点があるとされるが(Photo04)、まず最初に説明されたのが基本構造の改良である(Photo05)。

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    Photo04:ただこの4番目とかは製品そのものとは無関係の話である

これまでのCoolSiCでは、ディスクリート/モジュールともに、スイッチングスピードを上げてゆくとMaximum Transientが制限される方向にあったのが、今回のCoolSiC M1Hでは1MHzあたりまでまったく制限がなくなったという(Photo05)。

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    Photo05:なぜディスクリートとモジュールでカーブが異なっているのか質問したが、明快な答えは返ってこなかった。ただモジュールでは複数のSiC MOSFETを組み合わせて動作させるので、多少なりとも傾向を改善させる細工は可能なのだろう

これに伴い特性そのものも改善されているとされる(Photo06)。この結果として、例えば同じ電圧/電流/温度であればオン抵抗を12%程削減する事が可能になったとされる。

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    Photo06:これまでよりも動作電圧範囲が広がったそうだ

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    Photo07:オン抵抗が低いということは、それだけ発熱が少ないという事でもある

次はパッケージの話。同社はこれまでEasy 1B/Easy 2Bと呼ばれるモジュールを提供してきたが、今回新たにEasy 3Bと呼ばれるモジュールを新たに追加した。このモジュールでは、3種類のチップが提供されており、これを組み合わせてより柔軟な構成が可能としている(Photo09)。

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    Photo08:Easy 3BはEasy 2Bよりもさらに大型で、それだけさまざまな構成が可能とされる

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    Photo09:例えば55mΩのモジュールを2つ並べれば27.5Ωのモジュールができる事になる

またジャンクション温度を最大175℃まで引き上げた(従来は150℃)ことで、より出力を引き上げる事も可能になった。こちら(Photo10)が現在のラインナップおよび今後提供を予定するモジュールの一覧である。

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    Photo10:黒が出荷中、オレンジが開発中、ブルーが今後投入を計画している製品である

もちろんモジュールだけではなくディスクリート製品も提供される(Photo11)。

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    Photo11:というか、当然ディスクリートが先で、これを組み合わせたモジュールが後で提供される

今回はここに関して、新しい低オン抵抗製品が追加されることになったとする(Photo12)。

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    Photo12:特徴の4以外は、元々の素子の構成の改良による

ここの4に出てくる.XT接合の詳細がこちら(Photo13)。従来型のハンダに替えて拡散ハンダを利用する事で、大幅に効率を引き上げたとする。

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    Photo13:この新しい.XT接合用のはんだの組成などは非公開との事。まぁここか勘所なのであろう

この熱伝導率改善とか熱抵抗削減により、放熱効率が大幅に改善したことによるメリットがこちら(Photo14)とされる。

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    Photo14:放熱効率が上がれば、従来と同じ条件ならより大電力を流せるし、同じ電力なら部品温度が下がる訳で、こうした細かい改善が今回のM1Hの最大のメリットである

今回は性能的に大きな改善という訳では無いが、従来よりもSiC MOSFETをより使いやすくするとともに、長期的には実装面積削減やコスト削減につながる進化を果たした、という事であった。