日立Astemoは12月22日、山梨工場で製造するブレーキ構成部品および福島工場で製造するサスペンション構成部品に関して、クライアントとの間で試験項目を定め製品の工程検査や出荷検査とは別で実施する“定期試験”の未実施などの不適切行為が行われていたことを公表した。

なお、現時点までに判明した当該不適切行為については、是正措置を行い、現在は適切に試験・検査を実施しており、不適切行為の対象となる過去の生産品については、社内検証を実施し、同社で安全性および性能に問題はないと判断し、現時点では当該生産品に関して安全性および性能に問題が生じた事案は確認されていないことも併せて発表した。

山梨工場では2003年10月から2021年3月にかけてブレーキ構成部品5製品、9顧客、約57,000件に関して定期試験を実施せずに顧客向け報告書にデータを記載していたという。

発覚の経緯としては、2020年12月に親会社である日立製作所の品質保証部門による品質コンプライアンス監査が実施された際に、日立Astemoの社員から同部門に不適切行為に関する情報提供があったことで同部門が調査を実施し、発覚したとのことだ。

その後、2021年1月より定期試験を実施し、人員の増強などの対策を進めて、2021年3月までに当該不適切行為は是正しているとしている。

  • 概要

    山梨工場での不適切検査の概要(提供:日立Astemo)

福島工場では、サスペンション構成部品4製品、14顧客の対象製品に関して減衰力測定時の判定温度設定を不適切な値に変更したり、減衰力規格要求値に対する適合出力の許容範囲について指定を超えた範囲での設定、要求値である減衰力規格値から外れた製品の出荷が行われていたとしている。

また、サスペンション構成部品2製品、5顧客向けの製品において定期試験における減衰力数値の書き換えが行われていたという。

発覚の経緯としては、日立Astemoの品質保証部門の社員が、サスペンションの減衰力の測定に関して出荷検査における不適切行為を認識し、2021年7月に日立製作所の品質保証部門と同社のコンプライアンス部門に当該情報を提供。日立Astemo品質保証部門が調査を行った結果、出荷検査における不適切行為が判明し、その後の調査により、定期試験における不適切行為も2021年10月に確認されたとしている。

  • 概要

    福島工場での不適切検査の概要。2000年ころから不適切行為が行われていたと思われるが、記録に残っているのが2018年~2019年のため、その時期からの製品数を記載しているという。調査委員会による調査後に再度報告するとしている(提供:日立Astemo)

  • 概要

    山梨・福島工場における不適切行為発覚後の経緯(提供:日立Astemo)

両工場では、再発防止策として人材の流動性を確保するための人事ローテーションや、人手を介さないデータ処理システムの導入を行っていくという。

  • 再発防止策

    山梨・福島工場における再発防止策(提供:日立Astemo)

今回の不適切行為の発覚を受けて、同様のことが他工場で発生していないかを確認するため、グローバルに全工場で自己監査を実施。さらに、客観性を保つべく異なる部門間で行う相互監査もグローバルに実施しているが、現時点で今回報告されたもの以外の不適切行為は報告されていないとのことだ。

同社では再発防止策として独立の立場から客観的な視点で事実関係・発生原因を調査する社外弁護士による特別調査委員会を設置。この委員会を通じて、事実関係や発生原因を徹底的に究明するとともに、品質保証体制の抜本的な見直しとコンプライアンスの一層の強化を図っていくとしている。

  • 調査

    日立Astemoが発表した全社の再発防止策(提供:日立Astemo)