この半導体ニュースのまとめ
・Rapidusが伊Fondazione Chips-ITと将来の半導体製造に向けた基本合意を締結し、日伊の技術協力を具体化
・Chips-ITはイタリアの半導体回路設計の中核財団で、欧州の戦略的自律性を支える存在として位置付けられる
・Rapidusは英国機関との合意に続き、2027年の2nm量産を見据えた欧州連携を広げた
Rapidus(ラピダス)は6月16日、イタリアで半導体回路設計を担う「Fondazione Chips-IT」と、将来の半導体製造に向けた基本合意を締結したと発表した。今回の合意は、日伊両政府が進める先端技術分野での協力の一環として位置付けられており、RapidusとChips-ITが今後、情報共有や協業に向けた協議を進めるための枠組みとなる。
Rapidusによると、Fondazione Chips-ITはイタリアの半導体エコシステムで中核的な役割を担う組織で、世界有数の研究機関や産業界と連携しているという。パヴィアを拠点とする同財団は、半導体集積回路設計におけるイタリアおよび欧州の戦略的自律性の強化を担う存在として位置付けられており、欧州の半導体政策との親和性も高い。
今回の合意の背景には、2026年1月に日本とイタリアの首脳がAIロボティクス、半導体、バイオものづくりといった先端分野で、科学技術協力を促進する方針を確認したことがある。さらに6月15日には高市早苗首相がイタリアを訪問し、ジョルジャ・メローニ首相と会談して日伊の技術協力を前進させており、その流れの中でRapidusとChips-ITの基本合意が締結された。
半導体の国際協力という観点では、今回の合意は日伊の二国間関係にとどまるものではない。Rapidusは6月15日に英国のUK Semiconductor Centreとも将来の半導体製造に向けた基本合意を締結したばかりで、欧州側との連携を連日の形で広げている。先端ロジックの製造基盤を日本国内で立ち上げつつ、欧州の設計・研究機関との接点を増やしていくことは、将来的な顧客開拓や技術連携の裾野拡大という観点でも意味を持つ。
2027年の2nmプロセス量産を見据えた国際連携の拡張へ
Rapidusは現在、2027年の2nm世代ロジック半導体量産を目標に、日本国内でパイロット生産を進めている。2026年4月には北海道千歳市で解析センターとRCS(Rapidus Chiplet Solutions)を開所し、開発環境を強化したほか、NEDOからは2nm世代半導体の前工程およびチップレットパッケージ設計・製造技術開発に関する2026年度計画・予算の承認も受けている。6月には政府から1500億円の追加出資も受けており、量産移行に向けた資金基盤の強化も並行して進めている。
こうした一連の動きは、Rapidusが単に日本で先端プロセス対応の半導体量産工場を立ち上げるという取り組みでなく、半導体設計、前工程、後工程、さらには国際連携までを組み合わせた形で次世代半導体の供給網を構築しようとしていることを示しているといえる。とりわけ欧州は、imecやCEA-Letiを例に挙げるまでもなく、設計力や研究力を持つ機関が多数存在し、先端半導体の戦略的自律性や供給網多元化の文脈と併せて共同歩調を取るパートナーとしての結びつきを得やすい土壌がある。すでにRapidusはimecとは協力関係を構築しており、欧州の半導体産業との結びつきの下地はできていたといえる。そうした流れを踏まえた今回のChips-ITとの合意は、Rapidusが英国に続いてイタリアとも関係を築くことで、日本発の先端ロジック製造基盤を国際的な連携網の1部として位置付けようとする動きと見ることができる。
現時点で今回のMoUが具体的にどの開発案件や商用案件に発展するかは明らかではないが、半導体回路設計を担うイタリア側組織との接点ができたことは、Rapidusにとって将来の設計連携や顧客接点の拡大につながる可能性がある。2027年の量産開始という挑戦的な目標に向けて、資金、技術、人材、顧客基盤を同時並行で積み上げる必要がある中、今回の発表はそのうちの国際連携の層を厚くする取り組みとして位置付けられそうだ。