宇宙航空研究開発機構(JAXA)は12月6日、小惑星探査機「はやぶさ2」に関する記者会見を開催し、同探査機の地球帰還について報告した。既報のように、はやぶさ2はカプセル分離、地球離脱の軌道制御「TCM-5」、カプセル回収など、すべてのタスクを予定通り完了。プロジェクト関係者は安堵の表情を見せた。

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    はやぶさ2の津田雄一プロジェクトマネージャ(左)とJAXA宇宙科学研究所の國中均所長(右)

参考:小惑星探査機「はやぶさ2」のこれまでのニュース一覧

理事長と所長のコメント

記者会見にはまず、JAXAの山川宏理事長が登壇。はやぶさ2の前日からの運用の結果を報告し、帰還場所となったオーストラリア政府の協力に感謝を述べた。

山川理事長は、はやぶさ2ミッションが社会に与えた影響について、「若い世代が、宇宙に取り組もう、宇宙を仕事にしよう、と思ってもらえる方向に、少しでも貢献できたのでは」とコメント。「新型コロナウイルス感染症と戦っている人、苦しんでいる人に、少しでも元気が届けられたら幸い」と述べた。

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    JAXAの山川宏理事長

続いて登壇したJAXA宇宙科学研究所の國中均所長は、「はやぶさ2は2011年より開発をスタートして、ようやく念願の夢が叶い、無事オーストラリアに帰還することができた」とコメント。

ご存じの通り、國中所長は、はやぶさ初号機においては、イオンエンジン担当として開発と運用に関わり、はやぶさ2においても、一時プロジェクトマネージャを務めた。その視点から、「はやぶさ2は初号機と違い、完全にコントロールされた状態でミッションを達成できた。エンジニア冥利に尽きるだろう」と、感想を述べた。

完璧と言える成功を果たしたことで、「JAXA宇宙科学研究所も、惑星探査の分野において、次のステージに上がることができた」と強調。この勢いのまま、火星衛星探査計画「MMX」、深宇宙探査技術実証機「DESTINY+」、水星磁気圏探査機「みお」、「JUICE」や「Dragonfly」など、「困難なミッションに引き続き挑戦したい」と意気込んだ。

所長という立場として、これまで、はやぶさ2の運用チームに対しては、「かなり厳しい指導をしてきた」と語る。だが、運用チームは、それに最高の結果で応え、國中所長も「良くやってくれた」と労った。

ミッションの最新状況は?

最新の運用状況については、津田雄一プロジェクトマネージャより説明があった。津田プロマネはまず、「ただいま。はやぶさ2は帰ってきました」と、無事の帰還を報告。「6年間の宇宙飛行を終えて、今朝、オーストラリア・ウーメラの地へ、“玉手箱”を降ろすことができた」と、笑顔を見せた。

大切に持ち帰ったリュウグウからの玉手箱(再突入カプセル)は、完全な状態で回収に成功。カプセルを分離した後の探査機も、状態は健全だ。今回の帰還運用は、地上側・宇宙側ともにパーフェクトな結果となり、津田プロマネは「惑星間往復飛行の扉は初号機が開け、はやぶさ2はその扉を完全にくぐり抜けた」と評価した。

探査機本体はまだ飛行を続けているものの、はやぶさ2ミッションとしての総飛行距離は、52億4000万km。打ち上げからカプセル着地までの総飛行時間は、2194日と13時間32分ほどとなった。

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    はやぶさ2の総飛行時間と総飛行距離 (C)JAXA

はやぶさ2は今回、大気圏に再突入して火球となったカプセルを、宇宙から撮影することにも挑んでいた。この結果が気になるところだが、「まだ処理中」とのことで、カプセルが写っているかどうかについては分かっていない。

公開された撮影画像は、事前にシミュレートした画像とよく一致しており、カメラは狙った場所を正しく撮影した模様だが、放射線帯を飛行中のためノイズが多く、その除去に時間を要しているという。こちらについては続報を待つことにしたい。

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    左が撮影画像で、右がシミュレート画像。どこかにカプセルがある? (C)JAXA

その後、地球から離れていくときには、地球全体を撮影。植生が浮き上がるような画像処理を施すと、ギリギリのところに日本が写っており、「探査機は日本を見つめながら手を振って行った」と、探査機の気持ちを代弁した。

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    はやぶさ2の撮影画像。地球の左上に、日本列島の形が見える (C)JAXA

はやぶさ2の再突入カプセルは、カプセル本体のほか、前面/背面のヒートシールド、パラシュートなど、すでにすべての回収が完了。翌日の7日に、現地にて、サンプルコンテナからのガスの採取作業を行う予定だ。その後、日本へ空輸することになるが、現時点で、詳細な日時はまた決まっていない。

なお、再突入カプセルの着地点だが、高高度の偏西風が強かった影響で、予想エリアの中心より、やや東側に流されていたという。ただ、事前に偏西風の影響などを考慮して解析を行っており、津田プロマネによれば、「精度良く一致していた。数字はまだ見ていないが、絵で見た感じはドンピシャに近い」とのこと。

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  • カプセルの発見にはやや時間がかかったが、このように植生が多く、見つけにくい状態だった (C)JAXA

自己採点はさらに10倍に!

まだ再突入カプセルの日本への輸送が残っているものの、回収まで完了していれば、あとは大体普通の物流レベルの話なので、もう成功は間違いない。カプセルの内部には、確実にリュウグウのサンプルが入っているはずで、今後の科学的成果が非常に楽しみなところだ。

総括として点数を問われた津田プロマネは、なんと「100点満点の1万点」と即答。これについては補足が必要だろうが、津田プロマネは第2回タッチダウン後の会見において、やはり採点を聞かれた時に、「100点満点で1000点」と答えていた。今回、さらに10倍になったのは、最高な形でミッションを終えることができた満足感の現れだろう。

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    ミッションが完了したことで、ダルマに両目が入った

今後、はやぶさ2は拡張ミッションとして、新たな、そして11年という長い旅に出る。しかし、最大の目的であるリュウグウのサンプルを持ち帰った後は、現在の規模でチームを維持することは無いだろうし、おそらく、どこかの段階で、プロマネも若手に交代することになるだろう。

今後、やりたいことを問われた津田プロマネは、「はやぶさ2には、最初から最後まで関わってきて、どう開発したからどういう探査ができたという一連の流れが、私なりに確固としたものができた。この経験を活かして、JAXAの中で、別のミッションを考えていきたい」と回答。

「やはり深宇宙ミッションに関わりたい。次に小惑星探査ミッションをやるならこうだろう、という考えもあるし、大きな惑星や遠くの惑星にも行ってみたい」と、新たな冒険の旅に思いをはせた。いつか、「100点満点の10万点」という答えを聞く日が来ることを期待したい。

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