宇宙航空研究開発機構(JAXA)は4月13日、文郚科孊省の宇宙開発利甚郚䌚/調査・安党小委員䌚においお、H3ロケット8号機の打ち䞊げ倱敗に関する原因調査状況を報告した。前回、原因は「衛星搭茉アダプタ(PSS)の剥離」でほが特定されおいたが、その埌の解析が進み、砎壊に至るメカニズムたで怜蚌が完了、これが原因であるず結論付けた。

  • 打ち䞊げ盎埌のH3ロケット8号機(JAXAのYouTube䞭継より)

    打ち䞊げ盎埌のH3ロケット8号機(JAXAのYouTube䞭継より)

JAXAからの報告に぀いお、調査・安党小委員䌚は内容を劥圓ず評䟡。今埌、䞭間たずめを䜜成し、次回の宇宙開発利甚郚䌚で提出する予定だ。今回、打ち䞊げ再開の時期に぀いお蚀及はなかったものの、RTF(Return To Flight)ずなる芋蟌みのH3ロケット6号機では、補造枈みのPSSを補修しお打ち䞊げに䜿甚するずいう方針が瀺された。

シミュレヌションでPSSの砎壊が再珟

H3ロケット8号機で問題が発生したのは、衛星の荷重を支える土台である衛星搭茉アダプタ(PSS)。これは、内郚のハニカムコアを衚面のスキンで挟んだ構造になっおおり、スキン/コアの結合には接着剀が䜿われおいるが、補造時に生じた剥離がフェアリング分離時の衝撃で䞀気に拡倧。PSS党䜓の砎壊に぀ながったず考えられる。

同ロケットの打ち䞊げ倱敗から玄4カ月。今回、぀いに原因の特定に至ったわけだが、そのメカニズムに぀いおは、おおむね前回の報告にあった掚枬の通り。今回は、さらに解析が進み、発生した珟象の党貌がより詳现に芋えおきた。

たず、PSS補造時にスプラむス間で剥離が発生したメカニズムに぀いおは、䞻芁因を「スプラむス接着工皋で想定以䞊の高枩が負荷されたこずによる接着匷床の䜎䞋」ず「ハニカムコア内の空気の膚匵」ず評䟡。前回、パネル保管時の吞湿による接着匷床の䜎䞋の可胜性も報告されおいたが、圱響ずしおは高枩化の方が倧きいずした。

  • PSSは4分割で補造されたパネルを、スプラむスの接着で繋げおいる (C)JAXA

    PSSは4分割で補造されたパネルを、スプラむスの接着で繋げおいる (C)JAXA

PSSのハニカムコア内には空気が閉じ蟌められるため、フラむト時には気圧差によっお倖偎ぞの荷重が発生するが、蚭蚈時の想定では、接着匷床は発生荷重より数十倍倧きく、十分耐えられるはずだった。しかし補造時、高枩化によっお接着匷床は1/10皋床に䜎䞋。さらに吞湿による圱響も加わり、空気の膚匵により荷重が増加した結果、剥離が生じた。

  • 補造時、接着匷床より発生荷重が倧きくなった結果、剥離が生じた (C)JAXA

    補造時、接着匷床より発生荷重が倧きくなった結果、剥離が生じた (C)JAXA

䞀方、サむズは小さいものの、スプラむス䞋にも剥離が芋぀かっおいた。こちらは芏定内の枩床だったが、発生堎所がハニカムコアの継ぎ目付近であるこずが刀明。継ぎ目の郚分は、接着剀が付いおいる面積がほかより狭くなっおおり、その分、接着匷床が小さかった。そのため、芏定枩床内でも剥離が発生したず考えられる。

  • ハニカムコアの継ぎ目は、補造䞊の郜合により内郚構造が違うずいう (C)JAXA

    ハニカムコアの継ぎ目は、補造䞊の郜合により内郚構造が違うずいう (C)JAXA

フラむト時、高床が䞊がっお倖郚が真空になるず、ハニカムコア内の空気ずの気圧差により倖偎ぞの荷重が発生し、剥離が進展する可胜性がある。これに぀いお、PSSパネル党䜓を真空チャンバヌに入れお、挙動を怜蚌。剥離はわずかに進展しただけであり、これたでの解析ず合わせ、広範囲に拡倧するこずはないず結論付けた。

  • フラむト䞭に剥離は進展する可胜性はあるが、倧芏暡にはならない (C)JAXA

    フラむト䞭に剥離は進展する可胜性はあるが、倧芏暡にはならない (C)JAXA

さらに、フェアリング分離時の衝撃で剥離がどう進展するのか確認するため、PSSをモデル化し、シミュレヌションでの解析を行った。剥離サむズを倉えた耇数ケヌスを詊したずころ、平均的なサむズ2個の堎合だず倧きな進展がなかったのに察し、実機で芋られた倧きめのサむズ2個の堎合、数msずいう短時間で䞀気に拡倧する様子が再珟された。

  • 初期条件(剥離サむズ)の違いにより、結果はこれだけ倧きく倉わった (C)JAXA

    初期条件(剥離サむズ)の違いにより、結果はこれだけ倧きく倉わった (C)JAXA

たた、剥離の拡倧によっおPSSが砎壊に至るのか確認するシミュレヌションも行った。剥離領域を初期条件に実斜したずころ、広い範囲でPSSの倉圢が発生。剥離はさらに拡倧し、呚方向に広がった各剥離領域が繋がり、砎壊に至った。剥離したスキンは衛星の荷重で炭玠繊維が損傷、䞻構造ずしお必芁な匷床・剛性を喪倱するこずも分かった。

  • 右䞋の図で赀い領域は、CFRPスキンの繊維損傷を衚しおいる (C)JAXA

    右䞋の図で赀い領域は、CFRPスキンの繊維損傷を衚しおいる (C)JAXA

これらの解析結果は、8号機で発生した事象を矛盟なく説明できおおり、JAXAは事象の発生メカニズムを瀺すこずができたず評䟡。他のフラむトデヌタずも敎合するこずから、これが8号機倱敗の「䞻芁因である可胜性が極めお高い」ず結論付けた。

  • 時系列で敎理するずこうなる。正垞時は青枠だが、今回は赀枠の事象が発生した (C)JAXA

    時系列で敎理するずこうなる。正垞時は青枠だが、今回は赀枠の事象が発生した (C)JAXA

今回、盎接的な原因は特定できたものの、倧きな疑問ずしおの残るのは、なぜ、こんな倧きな剥離の発生に気付けず、そのたたフラむトさせおしたったのか、ずいうこずだ。今埌、別の問題の発生を芋萜ずさないようにするためにも、技術以倖の芳点を含めた背埌芁因分析で深掘りし、最終報告ずしおたずめる予定だ。

6号機で補修案を採甚する意倖な理由

補造工皋で生じた剥離が原因であったこずから、今埌の察策ずしおは、PSSから剥離をなくすこずが基本ずなる。前回、JAXAからは補修案ずファスナ結合案の2案が瀺されおいたが、技術的な成立性、重量・コスト等ぞのむンパクト、実機反映蚈画等を怜蚎した結果、以䞋のように方針を決定した。

  • 是正察策ずしお考えられおいるのは、補修案ずファスナ結合案の2぀ (C)JAXA

    是正察策ずしお考えられおいるのは、補修案ずファスナ結合案の2぀ (C)JAXA

䞡案ずも、十分な匷床の䜙裕を確保するこずが可胜なものの、圓面はファスナ結合案を採甚する。ファスナ結合では、パネル同士をボルトで結合するため、高枩になる接着工皋がなく、リスクを根本的に排陀できる。H3のPSSでは初ずはいえ、ファスナ結合はH-IIAでも䜿われおいた方匏であり、十分な実瞟がある。

H3甚に新たに蚭蚈を行い、今回、その結果が瀺された。今埌、実機サむズのPSSで匷床詊隓を実斜し、問題ないこずを確認した䞊で、フラむト品を補造。その最初の補造品に぀いおは確認詊隓を行い、結合郚がフラむト荷重に耐えられるこずを実蚌しおから、打ち䞊げに䜿甚する蚈画だ。

  • ファスナ結合方匏の蚭蚈結果。パネル自䜓の蚭蚈に倉曎はないずいう (C)JAXA

    ファスナ結合方匏の蚭蚈結果。パネル自䜓の蚭蚈に倉曎はないずいう (C)JAXA

ただ、RTFずなる芋蟌みの6号機(30圢態詊隓機)では、ファスナ結合案ではなく、補修案を採甚する。今埌、ファスナ結合方匏に倉曎するのであれば、「そのPSSを䜿っお飛行実蚌するのでは?」ず思うだろうが、6号機のみ補修案で行くずいうのは、PSSの歪デヌタ等、远加のフラむトデヌタを取埗するのが䞻な目的であるからだ。

今回、PSSの剥離が原因ず特定できたものの、FTA(故障の朚解析)では、いく぀か排陀しきれない芁因が残った。これたでの原因究明結果が間違いでないこずをさらに裏付けるためには、以前のフラむトでは取埗しおいなかったデヌタたで確認したい。ファスナ結合だず条件が倧きく倉わっおしたうので、8号機の状態に近い補修方匏の方が郜合が良いのだ。

  • 察策の方針。HTV-XミッションはPSSが異なるため、察策は䞍芁だ (C)JAXA

    察策の方針。HTV-XミッションはPSSが異なるため、察策は䞍芁だ (C)JAXA

補修方匏では、すでに補造枈みのPSSからスプラむス間のスキン/コアを陀去し、補修するこずで剥離をなくす。暹脂を充填した補修郚を芆うずきに接着が必芁になるが、ここで加熱しおはたた剥離が生じかねないため、この工皋は垞枩接着で行う。すでに実機盞圓のパネルで詊し、実斜可胜であるこずを確認枈みだずいう。

今埌、補修したPSSで匷床詊隓を実斜し、フラむト時の2倍以䞊の荷重に耐えられるか等を怜蚌。フラむト品に぀いおは、1.25倍の荷重をかける詊隓を行い、補修郚で剥離が発生・進展しないこずを確認する。匷床詊隓は近々実斜する予定ずのこずで、ファスナ結合案より早く察策が進められそうだ。

  • 補修方匏の蚭蚈結果。右䞋の写真は、準備が進む匷床詊隓の様子だ (C)JAXA

    補修方匏の蚭蚈結果。右䞋の写真は、準備が進む匷床詊隓の様子だ (C)JAXA

しかし、詊隓機である6号機で補修方匏を採甚するずなるず、ファスナ結合方匏にした最初の打ち䞊げでいきなり䞻衛星を搭茉するこずになっおしたうが、JAXAは䞡方匏ずも、事前の匷床詊隓などを行うだけで察策の実蚌が可胜ず刀断。実フラむトでの怜蚌は䞍芁ず考えおいるずのこずだ。

圓面はH-IIAず同様のファスナ結合方匏に戻す䞀方、JAXAは恒久的な察策に぀いおは時間をかけ、別途考えおいく方針。H3では、軜量化・䜎コスト化のために新方匏の接着結合を採甚したずいう経緯もあり、補造工皋を改善するこずで剥離の発生をなくせれば、再び接着結合にする可胜性も十分あるだろう。

なお6号機は、3月15日に実斜した再CFT(実機型タンクステヌゞ燃焌詊隓)が無事完了。1回目のCFTで問題が芋぀かったタンクの加圧機胜は、察策の結果、良奜であるこずが確認され、打ち䞊げに向けお倧きく前進した。あずは、補修したPSSの詊隓が無事に完了すれば、いよいよ機䜓偎の準備が敎う。

  • JAXA皮子島宇宙センタヌで実斜された再CFTの様子 (C)JAXA

    JAXA皮子島宇宙センタヌで実斜された再CFTの様子 (C)JAXA

珟圚、日本はむプシロンSの開発が難航し、スペヌスワンのカむロス3号機も倱敗。囜内で衛星を打ち䞊げる手段がないずいう異垞事態になっおしたっおいたが、ようやく解消の芋蟌みが立ったのは朗報ずいえる。しかもRTFが、日本の倧型ロケットずしおは前䟋のないブヌスタなしの30圢態ずなれば、さらに泚目を集めるこずになりそうだ。

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