地上から発せられた超低周波音が、“宇宙の境界”とされる高度100km級まで伝わっていることを世界で初めて直接観測したと、高知工科大学が4月30日に発表。2019年に打ち上げられたインターステラテクノロジズの小型ロケット 「MOMO3号機」の搭載センサで取得したデータを解析した結果、判明したという。
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民間ロケット「MOMO3号機」(中央)に搭載した、検出帯域が非常に広いセンサ(INF03D、右上図)。同機は2019年5月、北海道大樹町から打ち上げられ、世界で初めて高度100km級でインフラサウンドを直接観測した(左上図) 出所:高知工科大学ニュースリリース
高知工科大学と千歳科学技術大学でつくる研究グループによる研究成果。詳細は、米国地球物理学連合の学術誌「Journal of Geophysical Research: Atmospheres」(Volume 131, Issue 8)に現地時間4月10日付で掲載されている。
研究成果のポイント
- 世界で初めて、地上から発せられた音源(打ち上げ花火)に由来するインフラサウンドを高度100km以上で直接検出
- 民間小型ロケット「MOMO3号機」に搭載した圧力センサのデータ解析で判明
- 空気がきわめて薄い中間圏や熱圏下部でも前出の信号を観測
- 音波伝播シミュレーションなどの理論値とも一致した
- 超低周波音は火山噴火や津波、隕石爆発などで生じ、防災や環境監視の重要な観測対象
- 将来の災害監視や高高度大気観測に向けた新たな観測基盤となる可能性を示す成果
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地上で打ち上げた花火の超低周波音が、大気中を伝わってロケットの飛行経路と交わる様子を計算した図。黒線がMOMO3の軌道、色線が音の伝わる経路、赤点がロケットで信号を捉えうる位置を示している 出所:高知工科大学ニュースリリース
防災や環境監視で重要な観測対象「超低周波音」を、“宇宙の境界”で初観測
人の耳では聞こえにくい、20Hz未満の超低周波音のことを「インフラサウンド」と呼ぶ。火山噴火や爆発現象、津波に伴う大気の揺れ、ロケットの打ち上げなどで発生し、遠くまで伝わるこの音は、防災や環境監視の重要な観測対象とされる。
インターステラテクノロジズが2019年5月、北海道大樹町から打ち上げた小型ロケット 「MOMO3号機」には、きわめて低い周波数のインフラサウンドから可聴域に近い信号まで検知できる「広帯域差圧センサ」(INF03D)を搭載していた。
今回の研究では、高知工科大の山本真行教授らがMOMO3号機で行った実験によって取得したデータを、千歳科学技術大の齊藤大晶専任講師(高知工科大学客員講師兼務)が中心となって解析。地上で打ち上げられた花火を、雷など他の自然現象と区別できる“時刻既知のインフラサウンド音源”として利用したという。
解析の結果、センサが上昇中の高度約50〜76km(中間圏)で4つの明瞭な圧力変動を確認し、下降中の約106〜109km(熱圏下部)でも弱い整合信号を検出したという。この信号は3次元レイトレーシング(ray tracing、大気中の温度や風の分布から、音波がどの経路を通ってどこへ届くかを計算する手法)による到達予測と整合。また振幅も、幾何学的広がりと周波数依存吸収を考慮した減衰モデルと矛盾しなかったとのこと。
中間圏から熱圏下部までの高高度大気は、地表から約50〜100km前後の上空に存在するが、高度55km以上へは気球では届きにくく、直接観測が難しい領域とされる。
高知工科大の山本教授は「実験は綿密な計画の元で行ったが、わずかな音圧しか発生しない小さな花火音源での検証には難点も多く、実験直後に確証を得るには不明瞭だった」とコメントしている。その後、千歳科学技術大の齊藤講師(実験当時、高知工科大学助教)による緻密な音波伝搬過程の計算結果を交えて、花火の音が中間圏~熱圏下部まで届いた証拠を掴めたとのこと。
今回の研究成果は、災害起源の超低周波音が高高度大気をどう伝わるかを直接確かめる観測基盤を示すもので、将来の災害監視や高高度大気診断の高度化につながることが期待されている。