ベルギーimecは、5月14~15日に開催した「Imec Technology Forum 2019」において、小型かつ高感度な140GHz MIMO(多入力多出力)レーダーシステムの展示デモを行った。自動車内や日常生活で ジェスチャー認識したり、バイタルサインに関連する微小な皮膚の動きを検出して、非接触で運転手や患者の状態のモニタリングを可能にするという。

開発された140GHzオンチップレーダーの特徴は、そのサイズの小ささと性能の高さにある。具体的には10mまでの範囲で解像度15mm/10GHzのRF帯域幅で作動する。

また、トランシーバーチップはオンチップアンテナの機能を備え、28nmバルク CMOSテクノロジーを採用しているため、低予算で製造できるとしているほか、コンパクトであるため、ノートPCやスマートフォンなどの小型機器にも目立つことなく搭載することができるようになるという。さらに、これらの機能により、特に高度な正確性や、微細な動作の感知が求められるアプリケーションにとって、魅力的なレーダーシステムとなるとimecでは説明しているほか、機械学習機能を追加することにより、レーダーがドップラー情報に基づいた微細な動作を感知することも可能になることもすでに実証済みとしている。

  • レーダーチップ

    中央の3チップが28nm CMOSプロセスで製作されたレーダーチップ (出所:imec)

具体的には、機械学習アルゴリズムを活用することで、25名以上の被験者による7種類のジェスチャーを94%の精度で認識できることを確認としており、ジェスチャー以外でも、高周波を活用することによる高い精度でのバイタルサインの計測も可能だとしている。

こうした技術は、非接触で状態を追跡することを可能にするものであるため、imecでは、車内におけるバイタルサインモニタリングシステムの候補技術となるとしているほか、子供の動作やバイタルサインを検知することによる、乳児の睡眠時におけるうつぶせ寝事故防止や、車内への取り残しといった際に警報を鳴らすといったことも容易になるとしている。

  • レーダーシステム

    ジェスチャのデモのために準備されたレーダーシステム。レーダーチップは中央部に配置されており、その上で手を動かす (出所:imec)

ちなみにimecではさらなる高性能化に向け、開発中のトランシーバチップとレシーバチップを組み込んだ4×4 MIMOレーダーシステムを開発中であるという。これにより、柔軟性が高まるほか、スタンドアロンのレーダーチップの性能向上に伴う、より巨大なチップアレイを有するMIMOシステムの実現に向けた検討を行っていくとしている。

  • レーダーチップ

    Imec Technology Forum 2019におけるジェスチャ認識用140GHzレーダーのデモの様子(レーダーからの出力信号) (著者撮影)

なお、同技術については、現在日本からはパナソニックとソニーが開発に参加しているという。