ベルギーimecは、2月2~7日にかけて米国サンフランシスコで開催されている世界最大級の光学技術の学会・展示会「SPIE Photonics West 2019」において、半導体技術を応用したオンチップ・ラマン分光分析装置を開発したことを発表した。手頃な価格で持ち運びできる高性能なラマン分光装置を実用化できるようになるため、さまざまな用途での活用が期待できるようになるとしている。
ラマン分光分析法は、物質の組成を同定するために用いられる技術で、ラマン散乱光を検出することで、対象となる物質のさまざまな情報を知ることができることから、現在、医療や食品、半導体、宇宙産業など、多くの分野で活用されている。
しかし、既存のラマン分光装置は、ラマン分光測定に適した光源や分光器、検出器などを選択し、組み合わせる必要があるため、サイズはかなり大きくなり、かつ高価という課題があった。可搬可能な小型機も存在するが、高いスペクトル分解能を維持しながら、光学系を小型化することが困難で、ハイエンド用途には向かなかった。
今回、imecは、このような性能低下の障壁を克服することを目的に、 CMOSイメージセンサ上にモノリシックに多数の干渉光導波路を並列配置したほか、小型光学系においても高い光学スループットと高いスペクトル分解能の双方を実現できるように工夫を施すことで、小型ながら高性能なラマン分光分析が可能なデバイスの開発に成功したという。
なお、imecの主任技術スタッフあるPol Van Dorpe氏は、今回の成果について、「今回の開発成果により、ラマン散乱分光分析の適用範囲が広がることが期待される。スマートフォンとの統合も可能である。研究パートナーと共に、食品分析や悪性黒色腫(メラノーマ)の検出、皮膚の水分補給などの分野で活用を進めていく計画のほか、医療分野では、手術中または内視鏡検査中にインラインでの測定も実現できるようになると期待される。また、宇宙探査の分野では、探査機に搭載できる機器の性能が向上するため、大きな価値を発揮できることが期待される」と述べている。