岐阜県と富山県にまたがる跡津川断層系で、東北大学などのグループが潤滑物質「酸化グラフェン」を発見した。酸化グラフェンの摩擦係数は、普通の岩石より一桁小さく滑りやすい。活断層である跡津川断層系の浅い部分で地震が少ないのは、酸化グラフェンの働きで断層がゆっくり滑っているためとも考えられる。プレート境界などでエネルギーが段階的に解放される「スロー地震」と関連しているかもしれないという。
跡津川断層系の地下7~8キロより浅い部分では地震が少なく、断層がゆっくり滑る「断層クリープ」という現象が報告されている。東北大学大学院理学研究科地学専攻の長濱裕幸教授(断層力学)によると、炭素原子がシート状に重なった結晶構造を持つグラファイトや地下深部の流体が潤滑剤のように働き、断層の摩擦が少なくなって断層クリープが起きていると考えられてきた。
長濱教授の研究室のメンバーである大学院博士課程2年の島田知弥さん(構造地質学)は、グラファイトから取り出すことができる炭素原子1層の二次元結晶「グラフェン」に注目。レーザー照射の散乱光を分析して物質の構造解析をするラマン分光法や、光電子のエネルギーを測定することにより物質表面の元素組成や化学結合状態を分析するX線光電子分光法に加え、原子レベルで物質を観察できる透過型電子顕微鏡(TEM)を駆使して酸化グラフェンを断層の滑り面から発見した。
酸化グラフェンの摩擦係数は0.01以下で、通常の岩石の約0.6やグラファイトの約0.1と比べて一桁小さく滑りやすい。今回、跡津川断層系の地下の温度を調べた結果、酸化グラフェンが安定して存在できる温度(セ氏200度以下)の領域と、地震が少ない領域が一致していたことから、超低摩擦な酸化グラフェンが効果的に断層を滑りやすくすることで低地震活動領域に影響している可能性があるという。

石英やグラファイトと酸化グラフェンの摩擦係数を比較したグラフ。滑る速度に応じて摩擦係数が変化する(東北大学の島田知弥さん提供)
酸化グラフェンが見つかった跡津川断層系は内陸地震断層だが、プレート境界にも炭素があると報告されており、プレートの沈み込みに伴ってグラファイト化すると考えられている。酸化グラフェンが生成されている可能性もあり、今後、沈み込み帯の炭素を詳細に分析していくことで、断層面がゆっくり滑ることで揺れを感じないスロー地震などとの関連性が明らかになるかもしれないという。
研究は東北学院大学と共同で進め、5月12日に科学誌ネイチャーコミュニケーションズに掲載された。
|
関連記事 |


