台TrendForceの半導体メモリ市場調査部門であるDRAMeXchangeは、2018年第4四半期のDRAM市場について、価格下落と販売数量の減少というダブルパンチの結果、前四半期比18.3%減の229億ドル規模と落ち込んだとの調査結果を公表した。顧客各社がDRAMの在庫をかなり抱えた状況にあり、購買意欲が弱かったことが背景にある模様だ。

2019年第1四半期も下落は継続

DRAMeXchangeによると、DRAM大口契約価格は2019年1月に入っても下落し続けており、 PC-OEMによる購買価格設定は、主流の8GBモジュールの平均価格が1月には50ドルまで下落、2月、3月も下落が続く見通しで、2019年第1四半期全体で前四半期比20〜25%の下落が見込まれるという。

2018年第4四半期のDRAMサプライヤ各社の生産ビット数量は売上ビット数量を上回っており、2019年第1四半期にかけて、在庫圧力が高まり、DRAMサプライヤ各社ともに在庫一掃を図ることを目的に、競って販売価格を下げていることが背景にあると見られる。

  • 2018年第4四半期のDRAMサプライヤ各社の売上高

    2018年第4四半期のDRAMサプライヤ各社の売上高 (出所:TrendForce/DRAMeXchange)

売り上げが減少しても粗利益率8割確保のSamsung

DRAMサプライヤ各社の第4四半期の状況を見ると、DRAM業界トップのSamsung Electronicsは、サーバ向けDRAMの出荷個数が減少したことを受けて、売上高は前四半期比25.7%減の94億5000万ドルとなり、市場シェアも前四半期比4.2ポイント減の41.3%に後退させている。

DRAMeXchangeは、急速に下落する市場シェアと高い在庫水準という二重の圧力に直面しているSamsungについて、継続的なシェア低下を回避するために今後は価格戦略においてより積極的になるだろうとの見かたをしている。実はSamsung、これまで売り上げの拡大よりも利益の確保を優先する戦略で、無理に価格を下げて販売を促進しようとはせず、製造プロセスを1Ynmへ着実に移行させてきたこともあるため、同四半期の営業利益率は前四半期の70%から66%へとわずかに下げるに留まっており、売上総利益率(粗利)に至っては、約80%を維持している。そのため、まだ同社には柔軟な価格戦略を実行するだけの余力が十分に残されているとDRAMeXchangeでは見ている。

これに対して、第2位のSK Hynixの売上高は同12%減の71億4000万ドル。売上高を減少させたにもかかわらず、Samsungの売上高の減少率のほうが高かったため、市場シェア自体は前四半期の21.9%から10ポイント近い上昇となる31.1%となり、ついに30%を超えるに至った。

同社は出荷数量でSamsungに対抗することを目的に、利益を犠牲にしてでも数を出す戦略を採用。その結果、営業利益率は前四半期の66%から8ポイント減の58%まで低下することとなった。

また業界第3位のMicron Technologyは、競合2社に比べて柔軟な出荷戦略を採用した結果、売上高は同9.2%減の53億7000万ドルとダメージを低く抑えることに成功。市場シェアもSamsungが下げた恩恵を受け、前四半期の21.1%から2.4ポイント増の23.5%へ上昇させている。

Micronの営業利益率だが、決算期が9~11月期となっているため、韓国勢の10~12月期に業績報告に比べれば、年末の価格の影響を受けていないこともあり、前四半期の62%から58%へとわずかに下げるに留まった。ただし、2019年に入って以降もDRAM価格は下がっていることから、大手サプライヤ各社の利益は今後、さらに低下していくことが見込まれる。

価格下落もプロセスの微細化は継続

製造技術面を見てみると、2018年にSamsungは韓国・華城(ファソン)にあるDRAM専用の第17ラインのウェハ生産能力を拡大とともに、平澤(ピョンテク)工場2階のDRAM生産能力を拡大させたことで、2018年末までに全DRAM生産量に占める1X+1Ynmの割合は、目標だった70%を達成した模様だ。

2019年2月時点で、平澤工場のウェハ生産能力のさらなる増加は公になっていないが、華城の第17ラインと平澤工場2階のDRAMラインについては生産ペースを落とすにしても、1Ynmプロセスへの移行が継続される見通しだ。また、SK Hynixは、1Xnmの歩留まり向上が順調に進んでおり、中国の無錫に新たに建設された2番目の300mウェハファブが2019年上半期の生産に寄与し始めているようだが、米中貿易戦争の余波により、無錫工場でのウェハ生産量の増加には積極的に取り組むことができなくなってきているようだという。そしてMicronについてだが、子会社のMicron Memory Taiwan(旧Rexchip)はすでに1Xnm生産への移行を完了、1Ynmをスキップして1Znm生産への直接移行を計画しているが、それが実際に売り上げに貢献してくるのは2020年以降となる見込みである。もう一方の台湾子会社Micron Technology Taiwan(旧Inotera)についても2018年第2四半期に20nmから1Xnmへの切り替えを完了、2019年上半期にも1Ynmへの移行を開始させ、徐々にその割合を増やしていく計画だという。

なお、3大DRAMサプライヤ以外の台湾を拠点とする中堅DRAMサプライヤの第4四半期の状況だが、NanyaはPC DRAM市場の低迷により売上高を同30.8%減とした。売上総利益率の大きなDDR4の出荷数が減少したうえに、世界的なDRAM価格の低下に伴い、営業利益率も前四半期の51.0%から41.8%へと減少。今後も販売価格の下落や減価償却費の増加、20nmプロセスの製造コスト増加などによる収益性の悪化がが懸念されている。

また、PowerchipのDRAM売上高は、同社が展開しているDRAMファウンドリ事業を除外すると、前四半期比10.3%増と、DRAMサプライヤの中で唯一プラス成長を果たした、しかし、DRAMファウンドリ事業は赤字で、これを加えると前四半期比で2桁近い減収となる。このほか、Winbondだが、価格の下落率そのものは前四半期比で平均5%未満と小幅であったものの、市場全体の需要の低さの影響を受ける形でDRAM売上高は前四半期比で16.8%減という結果となった。