NECは、同社の半導体設計高位合成ツール「CyberWorkBench」のFPGA専用版を販売開始したことを発表した。

CyberWorkBenchは、C言語ベースLSI統合設計環境であり、ANSI-C/SystemCから回路を自動生成するツール(高位合成ツール)と、その周辺に統合された独自の検証・デバッグ環境で構成され、すべての回路をC言語で設計し、そのC言語記述上で検証できる"All-in-C"というコンセプトを取り入れており、機能設計からの自動化を実現するもの。

合成系は、制御回路、データ系回路などすべての回路を高品質に合成することが可能なほか、検証系は、ソフトウェアとの協調検証環境、ソースコードデバッガ、形式的プロパティ検証などからなり、C言語上で、効率的に回路の検証、デバッグを支援することが可能で、記述量は平均で従来比1/7程度に削減できるほか、シミュレーション速度も同数百倍と高速化でき、かつ設計工数や設計期間を数分の一に削減することが可能だと同社では説明している。

従来からFPGAの設計にも対応していたが、主にLSIの試作機検証用として利用されていたこともあり、今回、FPGAの最終セット製品への適用件数が増えていることを踏まえ、AlteraおよびXilinxと協力してFPGAに特化した最適化機能を盛り込んで、価格を抑えたFPGA版を用意したという。

製品ラインアップとしては用途に合わせて、すべてのFPGAでCyberWorkBenchを利用できるProfessional版、設計対象FPGAのシリーズを限定し、設計する回路規模に制限を設けているStandard版、Basic版の3種類の中から選択可能であり、価格はBasic版が200万円(税抜き)からとなっている。

また、LSI設計に馴染みのないソフトウェア設計者およびLSI設計初心者も簡単にCyberWorkBenchを利用できるよう、従来のLSI向けのGUIを簡素化し、直感的で容易な操作を実現したほか、合成オプションなどを設定することなく、「プッシュボタン合成機能」を搭載している。加えて、LSIの知識の少ないユーザーでも利用可能なように、マニュアルおよびトレーニング教材も用意されているという。

FPGAの設計は、現在、Verilog HDL、VHDLなどのHDL入力が主流であるが、同ツールを利用することでC言語で設計することができるようになるため、顔照合や高度な暗号等、ハードウェア化が困難だった機能がハードウェアで実現可能となるため、FPGAの応用範囲が広がると同社では期待を寄せており、国内外で年間300社以上の販売を目指すとしている。

CyberWorkBench(CWB)の製品構成。FPGAシリーズ限定は、全世代のFPGAに対応しており、もし新しい世代のFPGAが販売された場合は、無償でCyberWorkBenchを更新するとしている