次世代を育て、未来の音楽を紡ぐ
「世界から浜松へ、浜松から世界へ」をテーマに世界の一流奏者たちが指導に当たる「浜松国際管楽器アカデミー&フェスティヴァル」。管楽器の修理技術者育成のための職業訓練校「管楽器テクニカルアカデミー」。生徒と真剣に向き合い、世界への扉を開きながら、未来の音楽文化を担う次世代を育む。ヤマハが運営する二つの教育プログラムに共通して流れる「Key」をどうぞ。
世界の一流奏者たちが指導に当たる「浜松国際管楽器アカデミー&フェスティヴァル」と、管楽器修理のプロがプロを育てる「管楽器テクニカルアカデミー」。ヤマハが行う二つの教育プログラムはいずれも、生徒と真剣に向き合い、世界への扉を開きながら、未来の音楽文化を担う次世代を育む活動だ。
技術継承は「相互理解」から始まる
技術継承は、単に知識やスキルを一方的に教えるだけでは成り立たない。演奏においても修理においても、ほんとうに技術が継承されるためには、教える側と教わる側の相互理解が不可欠だ。
「浜松国際管楽器アカデミー」のレッスンはたった5日間だが、教授も生徒も全力で向き合うからこそ、短い時間でも両者の間に絆が生まれる。その絆の深さを物語るように、毎年プログラム終了時に涙をこらえられない生徒がいると、イベントの企画・運営を担当する堀場信明は言う。
「教授が生徒に寄り添いながら、一切手を抜くことなく、真正面から向き合っていることがわかるから、生徒が感極まって泣いてしまうのだと思います。『なんとかこの子たちを上達させたい』と願う教授たちと、その想いに必死に応えようとする生徒たち。先生と生徒、双方の気持ちが共鳴するのだと思います」(堀場)
「管楽器テクニカルアカデミー」の専任講師を務める信木隆輝も、技術を伝えるためにはまず、相手をよく知ることが大切だと語る。教え子の持つ経験や価値観を理解しながら、「伝える」のではなく、「伝わる」ようにする。このように相手に寄り添いながら、生徒たちの技術への興味を膨らませることが、技術継承を確かなものにするのだ。
学びは国境を超える
「浜松国際管楽器アカデミー&フェスティヴァル」と「管楽器テクニカルアカデミー」のもうひとつの共通点は、回を重ねる中で世界とつながる場に成長していったことだ。
世界中の一流奏者を浜松に招く「浜松国際管楽器アカデミー」では、受講生がこのプログラムをきっかけに海外留学を決断することも珍しくない。アカデミーは教授との相性を見極める貴重な機会であり、トップレベルの指導環境を体験できる場でもある。この教育プログラムが、世界へ羽ばたこうとする「生徒の背中を押してあげる存在」になれば——。堀場はそう願っている。
一方の「管楽器テクニカルアカデミー」は、これまで海外に告知をしてこなかったにもかかわらず、2024年には台湾からの入学が実現した。その生徒は自ら情報を調べて直接ヤマハへ問い合わせ、修理技術を学ぶ強い覚悟を胸に日本へとやってきた。信木の言葉を借りれば、世界への扉を向こうから「開けられた」格好だ。
ヤマハというグローバル企業には、海外人材を育成する使命もある。コース創設50年目を間近に控え、信木はそんなうれしい覚悟を決めた。
プロからプロへ
二つのプロジェクトがともに大切にしているのが、プロフェッショナルがプロフェッショナルを育むというコンセプトである。プロが演奏する姿、プロが修理する姿をじかに見せることで、初めて伝わるもの、感じさせるものがある。
「浜松国際管楽器アカデミー」では、一流奏者によるレッスンの様子を、プロのオーケストラ奏者や音楽大学の先生たちが聴講する。トップアーティストも、かつてはトップアーティストに習って勉強した。その指導方法を見せることで、プロからプロへ、音楽文化が脈々と受け継がれていく。このように、「トップの演奏や指導方法を開かれたものにしていくことも、音楽文化の普及・発展の一翼を担うヤマハに求められる大事な役目なのだと思います」(堀場)。
「管楽器テクニカルアカデミー」の信木も、自分がかつて先生から教わった体験をもとに、いま、「教える側」に立っている。修理技術を教える時、信木はなるべく自身のリアルな経験談を織り交ぜるようにしているが、それは彼自身がチューバを習っている時に同じように教えてくれる先生がいたからだ。
「私がそうであったように、プロの現場のリアリティーを聞くことで、生徒は『自分事』として受けとめるんです。『ああしなさい、こうしなさい』という指導だけでなく、『実際に起きた出来事にどう対処したか』を織り交ぜることが大切。このリアリティーを入れ込むことはプロにしかできない。そして、リアリティーが含まれて初めて、技術は継承されていく。だからこそ、プロがプロを育てることに大きな意味があるのです」(信木)
職人の手によって生み出された楽器は、作り手の「エネルギーの結晶」だ。リペア技術者は、その尊い結晶を自らの修理技術によって最高の水準に維持する。そして、その最高品質の楽器を奏でるアーティストと共に、音楽文化そのものを発展させていく。この一連の流れをすべて行えることが、ヤマハの最大の強みなのかもしれない。
世界に羽ばたく一流奏者を育む「浜松国際管楽器アカデミー&フェスティヴァル」。トップアーティストの演奏を陰で支えるリペア技術者を育む「管楽器テクニカルアカデミー」。どちらも妥協なき指導を通じてプロフェッショナルを育成している。先人たちの教えを基に、時代に合わせた変革を行い、“世界中の人々のこころ豊かな暮らし”を紡ぐまで、ヤマハのバトンを未来へとつないでいくのである。
(取材:2024年12月)
次世代を育て、未来の音楽を紡ぐ
#1 音楽家を育む「本気の学び」のつくり方
次世代を育て、未来の音楽を紡ぐ
#2 修理技術の「プロがプロを育てる」訓練校
共奏しあえる世界へ
人の想いが誰かに伝わり
誰かからまた誰かへとひろがっていく。
人と人、人と社会、そして技術と感性が
まるで音や音楽のように
共に奏でられる世界に向かって。
一人ひとりの大切なキーに、いま、
耳をすませてみませんか。
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