突然ですが、あなたは今日のランチに出てきた食材がどんなもので、どこで採れたものかご存じですか?忙しい毎日を過ごしていると、食事への意識が薄くなりがち。食材への感謝や生産者に思いをはせる余裕がないかもしれません。そんな中、農業や食料に関する社会課題を広く知ってもらうための取り組みとして、ホクレン農業協同組合連合会がWEBドラマを制作。ストーリーを通して、食材の大切さや農業への感謝を伝えるという取り組みが話題となっています。
今回は、そんなドラマの魅力をマイナビニュースがレポート! さらに、制作したホクレン農業協同組合連合会へ、ドラマに込めたメッセージや、北海道農業の現在の課題について伺いました。
2月4日に公開され、 第1話が77万回再生を突破(3月4日現在)している話題のWEBドラマ『恋するキッチンカー』。ホクレン農業協同組合連合会によって、農業や食料をめぐる社会課題の認知を高める取り組みを目的に制作されました。 朝食を抜く、偏食、仕事やスマホを見ながらの食事など、若年層を中心として食への関心が低下していることが問題視されている昨今。さらに食材のルーツや産地など、自分の食べているものがどんなもので、どこから来たのかを知ろうとする意識や機会も薄れつつあり、より興味関心が薄くなることが懸念されています。
今回制作されたWEBドラマ『恋するキッチンカー』には、登場人物の描写や音楽、リアルな仕事でのエピソードから食の課題に気づき、そしてその背景に欠かせない農業の存在や取り組みについてもメッセージが込められています。
『恋するキッチンカー』の主人公は、東京都内のWEB制作会社に勤める28歳の女性、田畑みのり。仕事に真面目に向き合うあまり、余裕のない日々を送っています。
ある朝、上司にかけられた言葉に気持ちが沈んで落ち込んでいると、ふと目の前に小さなキッチンカー「北乃蓮の台所」が。一旦は通り過ぎてしまいますが、昼に栄養補助食品だけでランチを済ませようとした時、ふと再びキッチンカーへと足を運びます。そしてキッチンカーの店主・北乃蓮と出会い、北海道の食材を使った料理をいただくことに。第2話ではほんのり生まれたみのりの恋心に影が差し始めて……? この続きはぜひ動画で確認してみてください。
2月4日に全2話が配信され、すでに第1話の再生数は77万回以上。コメントには「何回見ても、心がほっこり幸せな気持ちになります」「北海道の食材が全部美味しそうで、どれも食べてみたい!」など、ストーリーはもちろん、北海道の食材について注目している方も。SNSでも「北海道の食や農業のこともっと知りたくなった」といったコメントや、すでに「続編が観たい!」という声もあり、多くの方に注目されているのがわかります。
撮影を終えて、主人公の田畑みのりを演じた菅井友香さんは「撮影しながらもお料理とか食材から元気をいただきながら、楽しく撮影することができて嬉しい気持ちでいっぱいです」と話し、劇中のみのりのように、食事からパワーをたっぷりいただけたよう。菅井さんはホクレンサステナブルパートナーにも就任。「北海道の食・農業の魅力をたくさんの人にお届けできるように頑張りたい」と意欲を見せていました。
そして、主題歌を担当した竹内アンナさんも「デコレーション」という楽曲について、「北海道の美味しい食材の再発見をきっかけに日々が彩られてゆく姿が、"日常をデコる"という楽曲のテーマと通じ合い、素敵なご縁に繋がり感謝しています」とコメント。竹内さんの思いがポップなエネルギーとなり、ドラマをより鮮やかに彩っています。
そんな人々の心をほっこり温かくしてくれる『恋するキッチンカー』には、どんな意図が込められているのか――マイナビニュースは、企画立案したホクレン農業協同組合連合会の担当者・管理本部 経営企画部 広報総合課 千田英一さんに話を聞くことに。
ホクレンの主な役割は、北海道の農業生産者が安心して農業を続けていくために、北海道の農畜産物の評価をいただきながら全国(場合によっては海外も)に販売することと、と、北海道で暮らす生産者へ物資を供給すること、そして農業経営が効率的になるよう支援することの3つ。そのため、ドラマに登場する北海道の食材を使ったメニューは、大きな見どころだといいます。北海道の食のイメージと聞くと、ジャガイモや牛乳といった印象を持たれる方は多いはず。ですが、それ以外にもさまざまな食材があります。例えば、あまり知られていませんが実は、北海道は肉牛の生産量が日本一。ドラマの中でハンバーグやお肉中心のメニューが登場する背景には、そんなメッセージが込められています。
また、北海道の食材やそれを支える農業、生産者に関するセリフは細部にもこだわったのだとか。「やはり北海道の農畜産物について知っていただきたい、ということが最大のミッションだったので、表現やセリフについては、何度もやり取りしましたね。説明のようになってしまうと、視聴者の方に勉強を教えるような感じになってしまい、企業広告として他人事になってしまうので、上手にドラマの中に入れ込むよう意識しました」と千田さんは語ります。ドラマの核となるストーリーで注目したいのは、つい「わかるわかる!」と言ってしまう仕事パートのリアルさ。仕事をしていたら誰もが経験するようなつらいことやうれしいことなど、農畜産業とは直接関係のないところの部分も、しっかり作りこまれています。
第1話のラストシーンで、主人公がおにぎりを食べるシーンは最大の見どころ。あえて何も入れない塩むすびにした北海道産の米「ゆめぴりか」でお米本来の美味しさを伝えながら、主人公とキッチンカーの男性とのつながりができるきっかけを上手にかけあわせています。思わず心を動かされる展開は、主人公に共感すること間違いなしです。
日本の食糧自給率は先進国の中で最下位レベル。そんな状況の中で、広大な土地を持ちながらも1年の3割近くが雪に覆われる北海道が、さまざまな工夫や努力、そして先進技術によって、毎日の食卓を彩る野菜や肉牛などの食材を生産しているのです。
ホクレンの目的は、『恋するキッチンカー』を通じて視聴者に毎日の食事への意識を高めてもらい、北海道の農業や生産者に対する思いを持つきっかけにしてもらうこと。「食べ物の大切さって毎日意識していないと思うんですが、うれしいときも悲しい時も、食べることで元気になったりするので、食べ物の持つパワーは大きいと思っています。その食べ物の生産は、実は北海道が大きく支えているということを皆さんに知っていただきたい。そして、そのためには生産者の方々が安定して農業を続けられなければならないので、これからも北海道の農業を応援していただけたらうれしいですね」。
特に気候変動や円安、物価の高騰など、世界情勢が意外と身近な話になりつつある昨今。日本の食べ物を自国で確保することが、より重要な課題になっており、日本の食材を支えている北海道の役割に大きな期待が寄せられているといいます。今後もホクレン農業協同組合連合会として持続可能な北海道農業を目指していく、とのこと。「北海道が食料供給基地として高い期待に応えられるよう、生産者の方々がより安定的に農業が続けられ、そうしてできた農畜産物がより多くの人たちに喜んでいただけることを目指したいです。北海道ブランドがもっと世界で評価され、生産者が誇りをもてるようになったらうれしいです」。
私たちの身体は、毎日何気なく食べている食事によって作られるもの。今日食べたものにも、実は北海道の食材が含まれていたかもしれません。そんな北海道の食の魅力と想いを胸に『恋するキッチンカー』を見れば、より深く感じるものがありそう。ぜひドラマとともに、生産者への感謝と「食べること」の大切さを意識してみてはいかがでしょうか。