タクシー会社に入社すると、すぐに新人ドライバーの研修が始まります。研修内容は、タクシードライバーとして必要な資格の取得から始まって、知っておくべき知識や接客マナー、タクシー搭載機器の操作方法など多岐にわたります。タクシードライバーの仕事は机の上で覚えるものではなく、実際に乗務して覚えなければならないこと多いため、いわゆる「実地研修」が中心となります。

タクシードライバーとして入社する人は、新卒で社会経験のない人、社会経験はあるけどタクシー乗務は初めての人、タクシー乗務経験のある人などさまざまです。タクシー会社では、それぞれの人に合った研修もしてくれますが、あらかじめ決められた大まかな研修の流れもあります。

では、その研修の内容とはどんなものかを見ていくことにしましょう。

タクシードライバーになるために必要なこと

新人タクシードライバーの研修は、一般的に次のようなカリキュラムになっています。

1. 普通自動車二種免許の取得

2. 地理試験の受験(東京都、神奈川県、大阪府の該当地区の場合)

3. 適性診断

4. タクシーの営業・接客・法令・事故防止・機器操作・無線操作等の研修

5. 教習車での実地研修(同乗研修)

6. 営業所での配属後研修(同乗研修)

ここでは、研修の主な項目を説明していくことにします。

最初に必要なのは、1にあたる普通自動車二種免許の取得です。すでに免許を取得している人もいますが、入社後に試験を受ける場合もあります。研修の一環として費用を会社で負担してくれる場合もありますので、1回で合格できるように免許試験に臨みたいものです。

普通自動車二種免許を取得すると、今度は2の地理試験を受けます。研修の中で一番難易度が高いのは、この地理試験ではないでしょうか。地理試験対策の勉強をしないと合格は難しいので、専任のスタッフがついてサポートしてくれる会社もあります。(ただし、地理試験は東京の中心部、神奈川の中心部、大阪の中心部に限られています)

4で紹介した「法令」の研修は、円滑かつ適切にタクシーを運転するうえで欠かせない「タクシー業務適正化特別措置法」などの法律内容を学び、「機器操作」は、料金メーターの操作方法や、クレジットカードやタクシーチケットの取扱方法などを教えてもらいます。最近では、スイカやパスモといった交通ICカードも普及しているので、対応車両であれば、それらの扱い方も習います。

このほか、事故防止に関する研修などを受けてから、教習車を使った実地研修に移ります。最後に配属後研修がありますが、会社によっては行わないところもあるようです。

大和自動車交通独自のサポート体制

大和自動車交通では独自の研修体制をとっており、東京タクシーセンターにて、法規、地理、接遇、交通バリアフリーなどの新規講習を受講します。3日目に実施される地理試験が講習の要。合格を目指して会社が合格をサポートします。(最短4日間)

二種免許取得は、大和指定の自動車教習所に通っていただきます。教習所終了後、運転免許試験場にて学科試験に合格すれば、晴れて二種免許取得となります。(約10日間)

また、大和自動車交通では実務研修も行います。事故防止、法令、同乗指導、適性診断、メーター操作等、実務で必要となる知識をしっかりと身に着けます。(約11日間)

そして、研修全日程を修了し、運転者証の交付を受けたら、いよいよ配属となります。大和自動車交通では、研修スタートからここまで最短で25日としています。

タクシー接客研修の具体的な内容

接客研修の内容は、会社によってさまざまです。中には身だしなみから徹底して教育する会社もありますが、一般的には、お客様の乗車から降車までのプロセスを追いながら、ポイントごとに研修していくものです。

お客様との標準的な会話から、突発的なアクシデントが発生したときの対応方法などを、ロールプレイング方式で研修します。たとえば、お客様にお叱りを受けた場合の対応や、お客様自身が目的地をよく知らないケース、酔っていて行先をうまく説明できないケースなども取り入れることがあります。

また、中にはタクシードライバーが行先を間違えないための研修もあります。タクシードライバーが行先を間違えるなどあってはならないことですから、間違えやすい地名をリストアップして、間違えないためにどう確認するかなどの研修が行われます。

一例として、東京でよく間違えられるのが「千川」と「仙川」。千川は「せんかわ」と読みますが、「仙川」は正式には「せんかわ」なのに、「せんがわ」と読む人もいます。また、京王線の仙川駅は「せんがわ」と読むなど、非常にまぎらわしい地名のひとつです。そこで、お客様が「せんかわ」または「せんがわ」と行先を告げたら、「豊島区の千川ですか、調布市の仙川ですか」と聞きなおすよう指導します。

このようなまぎらわしい地名は各地にあるので、その地域ごとに必要となる研修です。接客研修は机上でも行われますが、乗務員が二人一組のペアになって、乗務員役とお客様役に分かれて研修を行うことも多いようです。

最近では、接客研修に力を入れるタクシー会社が増えてきました。お客様が乗車したら「毎度ありがとうございます、乗務員の〇〇です。目的地まで安全運転でまいります」と、丁寧に挨拶することを義務づけている会社もあります。また、接客研修は入社時だけでなく、その後も定期的に行う会社もあるようです。

タクシー運転手の研修期間はどれくらい? 合格ラインは?

タクシードライバーの研修期間は会社によって違いますが、20日間から30日間程度の場合が多いようです。もっとも、普通自動車二種免許に一度で受からなかったり、地理試験に落ちたりすると、もっと日数がかかることになります。タクシー会社はこれらの受験費用を負担しているわけですから、何度も不合格になるようだとそれなりのペナルティを課せられることもあります。

では、タクシー会社の研修の合格ラインは、どのように考えればいいのでしょうか。ここまで見ていただいておわかりのように、タクシー会社の研修には大きく分けて二種類あります。ひとつは、公的機関で定められた基準にパスしなければならない研修です。たとえば、普通自動車二種免許や地理試験、適性診断、法令などがこれにあたります。これらの研修は、それぞれの公的機関で合格点に達しなければなりません。

もうひとつは、接客研修や機器操作、同乗研修など、指導官が見て一定のレベルにあると判断すれば合格となるものです。この二種類の研修すべての項目で合格とならないと、研修終了とはなりません。

このように、タクシードライバーの研修内容は多岐にわたり、難易度の高い試験も含まれるため、これに合格するのは簡単ではありません。しかし、研修内容はどれひとつとっても、一人前のタクシードライバーになるために必要不可欠なものばかりです。研修には会社も費用をかけ、新人ドライバーの育成に力を注いでいます。タクシー会社に入社し研修を受けるからには、その期待に応えられるようにしたいものです。

[PR]提供:大和自動車交通