再生可能エネルギーを中心としたエネルギーサービスを展開するLooop。「エネルギーフリー社会の実現」を目標に掲げる同社では、情熱やチャレンジを全方位に向け、新たな価値を創り出していくことを大切にしている。
今回は、全く異なった経歴から「地域新電力会社の社長」に就任した二人にインタビュー。先輩社長から、この10月に就任したばかりの新米社長へのアドバイスなども伺いつつ、地域の課題解決に取り組む地域新電力の可能性、そして今後の挑戦について話を伺った。

―― 今回お話を伺ったのは…… ――

伊東孝之氏
銚子電力株式会社 代表取締役社長。東京都出身。Looopではマーケティングや、経営企画の中で自治体との連携などを担当。2020年11月より現職。
中山光博氏
新潟県民電力株式会社 代表取締役。静岡県出身。SEとしてLooopに入社。「Looopでんき」をはじめ、社内で様々な事業立ち上げに参加した後、2021年10月より現職。

地域新電力とは

――まずは、お二人が地方で働くことを決めたきっかけを教えて下さい。

もともとLooopは銚子電力の立ち上げに携わっていて、私もその担当だったんです。設立当初はLooopに籍がある社外取締役だったんですが、昨年10月に代表が退任するタイミングで代表取締役社長になりました。以前から「現場に入って銚子電力をもっと盛り上げていきたい」という想いがあったんです。会社のトップというあたらしい機会の中で頑張りたいと思いました。

SEとしてLooopに入社した時から、より経営や事業に近いところで働きたいという想いがありました。システムはあくまでツールなので、いかにそれを活用して事業の立ち上げに役立てるか、ということを考えながらサポートしてきました。なので、新潟県民電力の代表取締役という経営者の立場に就任できるチャンスに、すぐに飛び込みました。

中山さんは職種から見ると大幅な転向ですよね。私も人のこと言えないですけど(笑) どうですか、代表取締役としての日々は。

そうですね、新潟の方々はみんな優しくて、快く受け入れていただけています。仕事についてはまだまだ始まったばかりで何とも言えませんが、「会社の最終決定者である」という責任は強く感じています。一つひとつの業務に真摯に向き合い、情報の精査や決断をしっかりと行って社員や地域の人々の信頼を勝ち得ていきたいですね。

――銚子市はエネルギーの面から見て、どのような場所なのでしょうか。

風力発電のイメージが強いですが、冬は暖かく夏は涼しいという住みやすい環境で、日照量も多いので太陽光発電にとっても適している土地です。再生可能エネルギー(再エネ)には適した地域だと思います。実際、大型の風力発電所が立っていたり、太陽光パネルがある住宅が全国平均よりも多かったりしますね。

  • 左:銚子市役所から見える風力発電所 右:銚子市役所内にあるオフィス

――新潟県のエネルギー面での地域特性はいかがですか?

新潟県民電力は、地域に根差した会社として新潟県をより活性化していきたいという想いがあり、そこに強く共感しています。ただ、東京と比較すると保守的なところがあるので、スピードはゆっくりかも知れません。
太陽光の設置については、雪の季節の対策がネックになっていますね。太陽光パネルの設置によって屋根の雪かきが不要になるメリットもありますが、融雪によって落ちた雪の処理など、対策が必要な点も多くあります。また、佐渡や粟島は観光地なので、太陽光パネルと景観の兼ね合いも考えないといけない。自然との共生を考えながら、いかに再エネを普及させていくかが重要だと考えています。

――各地域でどのような取り組みや検討が行われているのでしょうか。

自治体によってはゼロカーボンシティ宣言などをしていますが、具体的な動きにまで至っていないことが多いです。新潟市と環境政策パートナーとして協力し合い、各地の取り組み状況や今後の可能性を検討しています。
公共施設だけでなく民間へ再エネ化を広げていくためには、コストを下げることが必須です。そこに、Looopという親会社があるメリットが出てくると思っています。Looopは再エネを作るところから、届けてコントロールするまで一気通貫ですべてを請け負っているので、費用をかなり下げられますから。

2月に銚子市と銚子電力、Looopの三者で「ゼロカーボンシティ銚子」を表明しました。2050年までに二酸化炭素の排出を実質ゼロにできるよう、取り組みを行っています。まずは公共施設を再エネ100%にすることを目標にし、手始めに銚子西中学校では再エネ100%の電気を供給しています。銚子西中の生徒を対象に発電教室を実施し、再エネや銚子市の状況について講演も実施しました。
上の世代は、再エネは「頑張ってやらないといけないこと」という認識ですが、若い世代は当然のものとして自然に受け入れている印象です。

  • 左:銚子西中学校で行われた「銚子発電教室」の様子 右:「ゼロカーボンシティ銚子」記者会見の様子

電力もそれぞれの街に寄り添う時代に

――銚子電力には、「子育て応援プラン」など地域に密着したプランがあるそうですね。

電気料金の一部を支援に回すというもので、その支援先を選べます。「銚子電鉄でんき」というプランでは銚子電鉄に支援ができたり、「銚子アスリートプラン」では、銚子出身のアスリートへ活動費を支援できたり。「子育て応援プラン」ではお子さま1人につき1%の割引を実施しています。
「ふるさとプラン」というふるさと納税のようなプランもあって、定期的に銚子の特産品をお送りしています。このプランでは地元企業に我々が発注するので、地元企業支援という面もあるんです。
電力会社として埋もれてしまわないよう、地域貢献や地域を盛り上げる活動を行っていきたいと思っています。

やはり、地域に根ざしたサービスやプランを作っていくのは大切ですよね。新潟県民電力でも、ふるさと納電という取り組みは実施しています。まだ数は多くないので、さまざまな団体と連携をとりながら進めていきたいです。
新潟県を元気にする取り組みを行うためには、人が集まってくることを考えなければいけない。新潟県は産業誘致が活発なので、何か一緒にできるプランがあればいいですね。

あとは小さいことかもしれないですけど、大手電気会社が面倒くさがってやりたがらないことをやると意外と申し込みが増えたりしますよ(笑)。例えば、電気明細を無料で紙で出すとか。大手はほとんど電子化していますけど、少し上の年代の方だとそこにハードルを感じる方も少なくないんです。

なるほど! 時代の流れとは少し違うかもしれないけど、地域のニーズに寄り添うことは大切にしていきたいですね。

――これから先のビジョンはどのように描いていますか?

我々は現在「銚子をチョウシよく」というモットーを掲げていますが、最終的には「銚子”から”チョウシよく」、つまり銚子市発信で何か取り組んでいけたらと思います。銚子市は2027年から洋上風力発電が稼働する予定なので、まずはその電気を地産地消して収益を上げていく。そこからエネルギーだけにとらわれず、商社のようなイメージでいろいろなことに広げていき、”銚子モデル”のようなものを作りたいです。

電力というのは、あくまで入り口。そこで繋がった人達と共に、どうやって新潟県を元気にしていくのかを考えていければと思います。電力での売り上げを産業に投資するなど、課題を解決しながらどんどん循環させていけるようになりたいですね。

 

――ゼロカーボンシティやカーボンニュートラルが叫ばれる中で、地域新電力の役割とはどのようなものでしょうか?

いろいろな地域新電力で地産地消をうたっていますが、その地域、その会社だけでは解決できないことも多いと思います。地域新電力同士、一緒に日本をよくしていく仲間として協力できたら良いのではないでしょうか。

地域新電力が、外からの力との橋渡しのような存在になれたらいいですね。ある意味で実験的というか、新しいことや技術を取り込むきっかけを作る役割があると思います。理想としては「銚子電力でできたから、アレができるようになったんだよね」みたいなものが生まれてくることです。

ただ「電気を売る」ことだけを考えてしまうと、太陽光パネルをたくさん設置して景観が壊れる、といったことを繰り返しかねない。いかに共生していくのかも考えなければいけません。自分たちの売り上げだけではなく、電気を届ける先まで目線を合わせて、どういうものを展開していくのかをしっかり考える必要があると思います。

個人的には、ゼロカーボンシティなどが目的化しすぎている印象ですね。本来は手段であって、目的は「持続可能な豊かな地域社会をつくること」のはず。それぞれの地域で事情は違いますので、各々に作っていく必要があります。ゼロカーボンシティを達成しても、地域に元気がなかったら意味がありませんから。 。

――人々に選ばれる地域新電力とはどのようなものでしょうか?

今後、電力市場は合従連衡が起こって、すごく大きな資本のものと小さな地域密着のものとの二極化していくと思っています。地域新電力には、地元密着でニーズを反映しやすく、地産地消もしやすいといった小回りのよさが求められると思います。

応援したいと思われる会社になることですよね。電気は色も形もないですし、差別化できるものではありません。そうなると”この会社だから応援したい”、”この会社から買いたい”という気持ちで選んでいただくことになる。
太陽光パネルが普及して自家消費が増えてくると、電力会社の役割と言うのはどんどん小さくなっていきます。その時に「役に立つ」だけでなく「意味がある」会社でなければならない。地域に対してどういう関わりを持っているのか、というのが重要になると思います。

個人的な質問になってしまうのですが、伊東さんから何かアドバイスっていただけますか? 地域電力の社長としての心がけというか、振る舞いというか(笑)。

中山さんの方がLooopの社歴も社会人歴も先輩じゃないですか……(笑) しいていえば、「知ったかぶりをしない」ことですかね。下手に出る、というと聞こえが悪いですが、分からないことは素直に聞いたりアドバイスに耳を傾けたり。「社長だから」と気負わないことが大切だと思います。

Looopの一員としてのビジョンとエール

――Looopの一員として、今後どのように取り組んでいきたいですか?

食わず嫌いにならずに、どんなことにも取り組んで成長していきたいです。そういう挑戦が評価される、尊重される社風なので、そこはありがたい部分ですね。エネルギーの会社ですが、それ以外の取り組みでも認めてもらえる可能性がある会社だと思います。

Looopの大きなビジョンとして「エネルギーフリー社会」があります。それは電気代を0にするというよりは、電気代に関わる費用と同じ価値の別のものを提供して、電気以外の価値を提供していくことだと思っています。例えば、電気で作った野菜を提供したり、サービスを充実させたり……そういうことを通して、エネルギーフリーを実感できるようにしていきたいです。

――最後に、成功を夢見る若いビジネスパーソンに向けてアドバイスをお願いします。

チャンスがない、なんてことを聞きますが、チャンスはどこにでもある。チャンスをいかに認識して、自分から飛び込んでいくかが大切で、それによって成長できると思います。それは転職かも知れないし、資格の取得や、会社の中での役割を転換させることかもしれません。
あとは、本を読んだり、交流会に参加したり、しっかりとインプットして視野をひろげることですね。

私も、インプットは大切だと思います。インプットとアウトプットは比例すると思うので、自分の専門外のことも興味をもってみるのが必要かなと。
あとは自分をあまり信じないこと。人が変わるには、時間配分か、住む場所か、付き合う人を変えるしかない、という話もあります。”決意”などのあやふやなものに頼らず、とりあえず”行動”してみるといいと思います。

最後に、二人の上長に当たるLooopの電力事業本部長・小嶋祐輔氏よりコメントをいただいた。

伊東さんにはマーケティングから経営企画まで幅広に活躍いただき、2020年に満を持して社長に就任してもらいました。中山さんは発電所オーナーのための情報共有システムや電力小売事業のためのシステムなど事業に欠かせないシステムまわりを支えてきた立役者。2人とも担当業務や性格は大きく異なりますが、Looopで力強いリーダーシップを発揮して活躍してくれました。
私自身、社員のチャレンジ精神を大切にしたいと思っているので、若手社員であっても社長という大役を任せることで一段と大きく成長してもらいたいと考えています。もちろん最初は沢山苦労すると思いますが、それらを乗り越え、後輩たちに背中を見せてほしいですね。

* * *

今回、二人の話に共通していたのは「チャンスやきっかけは自分で行動し掴むもの」ということだった。チャレンジや挑戦を後押しする社風や体制が整っているLooopだからこそ、彼らも思い切って羽ばたけるのかもしれない。

SDGsへの取り組みなどが進められる中、再生可能エネルギーの普及促進は日本のみならず世界で大きな動きとなっている。地域新電力による取り組みは、自分の暮らす地域から再生エネルギーについて考えるきっかけになるだろう。あなたの街はどんな電気を使っているか、調べてみると意外な発見があるかもしれない。

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